↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰向  作者: 凛光穂
第二巻 機械師の心

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
80/179

魔鉱獣 その一

 ゲームのシナリオは前触れもなく始まることが多い。だが、現実世界では、ほとんどすべての出来事に前兆がある。

 しかも、結果が深刻な事件ほど、その前兆はより顕著に現れる。


 秉核(ヘイカク)は豊富な仕事経験を持つ機械技師だった。機械の稼働に非常に精通し、その状態の変化にも敏感だった。


 秉核(ヘイカク)が最初に自分の観察を述べた、その時。


 秉核(ヘイカク)の周りの若い機械技師たちも、次々と汽笛の音に耳を傾け、列車の速度を観察し始めた。

 一種のバンドワゴン効果だった。

 数百人もの暇を持て余した若い機械技師学生たちは、蚊を空気砲で撃つような注意力を、あっさり列車についての議論へと向けてしまった。


 数分後。


 皆は自分たちの「熟練した」専門経験に基づき、列車には非常に重いものが積まれているに違いないと断定した。


 そして次々と、列車に積まれている重い物は何なのか、あるいは突発的な試練なのかを推測し、自分の意見を述べ始めた。


 この年頃の若者たちは、他人からの承認を欲しがる。

 だからこそ、さまざまな神秘的な推測が、皆の間で活発に生み出されていった。


  ……


 帝国の若き機械技師たちが、興味津々で議論を始めた、その時。


 しかし秉核(ヘイカク)は気づいた。

 プラットフォームで安全維持を担当する教官たちは、最初は困惑していた。

 明らかに、事情を知らない様子だった。


 そしてすぐに馬で確認に向かわせた。その後は駅の監視塔を何度も出入りし始める。

 状況を報告しているのだった。


  ……


 駅のプラットフォームにある運行指令室にて。


 教官と上級将校たちが、この突発事態について議論していた。


 この試練の安全責任者は海軍大佐。中衛職の船長で、波輪(ポーレン)家の出身である。


 この将校は非常に厳しい表情をしていた。

 彼の周りでは、数人の将校が呼び出されて質問を受けていた。

 下級将校たちは一人ずつ敬礼し、大佐への返答はきわめて簡潔。わずか一言二言だった。

 誰も余計なことは言わなかった。


 見張り塔のなかの空気は異常に重かった。誰も、なぜ列車があれほど重いのか、その理由を知らなかった。


  ……


 すぐに、三組の騎兵が派遣された。

「カタカタ」という蹄の音が地面を打ち、次第に遠ざかっていった。


 しかし十数分後、遠く列車の方向から、いくつもの真っ赤な花火が空に打ち上げられた。プラットフォームにいた秉核(ヘイカク)は急に立ち上がった。

 駅の賑やかだった雰囲気は、数秒のうちに静寂に包まれた。


 機械院の生徒たちは貴族の子弟ばかりではない。だが、貴族の子弟も少なくない。

 彼らは、この赤い花火が何を意味するのかよく理解していた。これは敵襲の合図である。

 帝国とヘイラ人の境界衝突線では、ごくありふれたものだった。

 ただ、帝国の京畿地区でこのような敵襲が起きるのは、帝国の皇権に対する挑発にほかならない。


  ……


 視点を列車の方へ移すと、巨大な列車の車両から大量の触手が飛び出していた。馬に乗った職業者たちは手綱を引いて避けようとしていた。

 軍馬の嘶きには恐怖が込められていた。砲火の下でも恐れず突撃できる軍馬が、見たこともない怪物への恐慌を、嘶きでこれほど生々しく表していた。

 そして馬に乗った職業者たちは、素早く大口径銃器を取り出して反撃を始めた。


 弾丸が触手に当たると、砂粒を砕くように瞬時に散らばった。

 よく見れば、それはサイコロほどの大きさの金属粒子だった。規則正しい凹凸があり、歯車のような構造で高度に噛み合っている。


 しかし、これらの微細な金属粒子は再び集まり始めた。触手を形作るためである。

 一頭の軍馬が誤って触手に絡め取られ、馬上の戦士は素早く跳び退いた。

 足裏に付着した粒子は、強靭な蹴りで振り落とされた。


 兵士はこの流砂のような現場から脱出した。しかし軍馬はそこまで幸運ではなかった。

 無数の触手の鎖に縛られ、鎖状の流砂に飲み込まれるように、悲鳴をあげながら車両の上の粒子群に呑み込まれてしまった。


「高階魔鉱獣だ、急いで撤退しろ」

 偵察の兵士が叫び、すぐに仲間の軍馬に飛び乗った。

 懐から信号弾を取り出す。

 これが駅で見られた赤い信号となった。


  ……


 警報が発せられた、その後。


 駅舎のなかでは、若い機械技師たちがすぐにグループ分けされて整列した。

 そして付き添いの将校の指揮のもと、迅速に駅から撤退した。

 海辺の造船所での実習活動は、明らかに中止となった。


 そして撤退の際、数人の将校が人混みのなかに入り、秉核(ヘイカク)、カイス、航從(コウジュウ)ら六人の機械技師を隊伍から呼び出した。

 彼らは若いが、立派な機械技師だった。


 大部分の戦争機械技師は、比較的安全な場所に留まる。機械技師の数は損失に耐えられないからだ。

 しかし、戦闘グループで機械技師が果たす役割が小さいわけではない。

 むしろ機械グループは、現代の戦闘組織に欠かせない配置である。


 六百年以上前、傭兵が発展の全盛期を迎えた時代には、傭兵部隊に百人ごとに四人の機械技師を配置するという驚異的な編成さえ現れた。

 機械技師は蒸気戦車を直接支援し、傭兵たちのために火力陣地を構築した。

 この銃砲の時代において、機械技師が戦場でもたらす支援がこれほど顕著だった。だからこそ、大陸の貴族たちは機械技師や機械製造業を重んじるようになったのである。


 近年、帝国軍はたびたび申請を行い、帝国師団単位の機械班における機械技師の人数を、二名(一名の機械技師が数十名の助手を率いて一つの機械修理隊を構成する)から三名へ拡大することを求めている。

 しかし、帝国軍の要求が帝国に承認されたことは一度もない。


  ……


 ―――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。