↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰向  作者: 凛光穂
第二巻 機械師の心

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/197

弱気な機械師、行き詰まる その三

 秉核(ヘイカク)は当惑しながら、コフィー(コフィー)の隊列について行った。


 あまり緊張はしていなかった。左右の若い学生兵たちに殺気がなかったからだ。銃を構えて護送する仕草のときも、秉核(ヘイカク)にぶつからないよう気を遣っていた。


 秉核(ヘイカク)がぼんやりと後ろについて行くなか、冷たいコフィー(コフィー)の横顔と茶色い鎧の背中を見つめた。『彼女の機嫌を損ねたのだろうか』と秉核(ヘイカク)は自問した。


 注。聖ソーク(セイソーク)の貴族が白い手袋を投げる行為には、複数の意味がある。


 白い手袋を相手の胸元に投げるのは、大貴族が小貴族を叱責する前の行為である。


 地面に投げ捨てるのは、縁を切ることを意味する。


 顔に向かって投げつけるのは、貴族同士の決闘の宣言である。


  ……


 コフィは秉核(ヘイカク)を連れて時計店に入った(上流地区にはカフェも茶館も酒場もなかったのだ)。

 後ろについてきた軍事学院の生徒たちは入口で待機していた。


 コフィが座ると、鎧が「きしきし」と軋んだ。秉核(ヘイカク)は、彼女のスカートアーマーが木の椅子に傷をつけたのではないかと思った。コフィは左足を右足の上に組み、金属の戦靴を跳ね上げた。そして秉核(ヘイカク)へ、向かい側に座れと合図した。


 秉核(ヘイカク)が座ると、


 コフィは尋問のような口調で切り出した。

「二月にあなたはカジェットを訪ねたの?」


 この「自白すれば寛大、抵抗すれば厳罰」といった態度を前に、


 秉核(ヘイカク)は素直にうなずいた。

「はい」


 コフィは問い詰めた。

「なぜ彼を訪ねたの?」


 秉核(ヘイカク)は言い淀んだ。

「いくつか質問があって、彼に聞きたいことがあったんです。それで」


 コフィー(コフィー)は声の調子を上げた。

 冷たさを増して尋ねた。

「どんな問題?詳しく言いなさい」


 秉核(ヘイカク)は言った。

「ええと、定体術について教えてください」


 それを聞いて、もともと険しい表情をしていたコフィー(コフィー)は、何かを見つけたように立ち上がった。近づいて秉核(ヘイカク)をじっくりと眺める。両手を秉核(ヘイカク)の肩に置き、秉核(ヘイカク)の体を左右に回して、もっと詳しく見ようとした。厳しい尋問官の面構えは、いつのまにか先ほどの冷たい表情を保つのを忘れている。好奇心旺盛な少女のようになり、彼女は思わず尋ねた。「あなた、定体術を練習してるの?」


 突然表情を変えたコフィー(コフィー)を見て、秉核(ヘイカク)はどうしてよいか分からず、うなずいた。


 コフィー(コフィー)は手で顎を支え、慎重に考えたすえ、真剣な評価のような口調で秉核(ヘイカク)に言った。

「道理で、道理で君の背が伸びたと思ったよ」


 秉核(ヘイカク)は少し嬉しそうに、追い討ちをかけるように尋ねた。

「他には?」


 コフィー(コフィー)は再び秉核(ヘイカク)を見た。

 突然手を伸ばして彼の頬をつねり、不満そうな声で言った。

「他に?」

「くそっ、なんでお前の肌は俺より良いんだ?」


 雷に打たれたように、秉核(ヘイカク)は呆然として言った。

「あのさ、さっきまでカジェットの話をしてたんじゃなかったっけ?」


 もともと秉核(ヘイカク)を見つめていたコフィー(コフィー)は、彼の呆然とした指摘で話が逸れていたことに気づいた。


 気まずさを隠して、再び冷たい表情に戻った。

 机を叩いて言った。

「定体術の話以外に、あいつと何を話したんだ?」


 秉核(ヘイカク)は眉をひそめた。秉核(ヘイカク)は指を折りながら、当時の雑談を必死に思い出そうとした。

「あのときは、たくさんの話題を話したよ。天体や海のこととか」


「カンカン」とコフィー(コフィー)が机を叩きながら言った。

「君と彼の武器取引について話してくれ」


 秉核(ヘイカク)は怪訝そうにコフィー(コフィー)を見た。秉核(ヘイカク)は何かに気づいた様子だった。

「えっ、君が言ってるのは誘導ロケット弾のこと?あれは」


 表情がますます険しくなるコフィー(コフィー)を慎重にうかがいながら、探りを入れるような、責任を転嫁しようとするような口調で聞いた。

「いや、僕を彼に紹介したのはあなたじゃないですか?偵察用の機械の鳥も、あなたが僕に作らせたんですよ。それなら」


「バタン」と、この公女は恐ろしいほど大胆に、直接机に足を踏み上げた。

 殺気立った笑顔で言った。

「それで、何が言いたいの?」


 秉核(ヘイカク)は金属製の鉄靴の先端の鋭さを見た。

 必死に体を後ろへ引こうとしたが、座席が床に溶接されていて動かせないことに気づいた。


 秉核(ヘイカク)は唾を飲み込みながら言った。

「閣下、あなたとカジェットは友達だったんじゃないですか?まさか今は……その、私は最近機械術で忙しくて、彼とあなたの事情は本当に知らないんです」


 秉核(ヘイカク)の頭には、『カジェットが他の女性と親しくなり、コフィが嫉妬して怒っているところに、自分が間の悪いことに巻き込まれた』という貴族社会のドロドロした筋書きが瞬時に浮かんだ。

 突破口を必死に探していた。


 秉核(ヘイカク)の心細く恐れる様子を見て、コフィの激しい怒りは瞬時に半分ほど和らいだ。

 むしろ今は、彼を抱きしめて揉みしだきたいという衝動さえ覚えた。


 コフィー(コフィー)は手を伸ばして秉核(ヘイカク)の肩に触れ、片手で彼を壁に押し付けた。戦職者の力の優位が、非戦職者を圧倒した。秉核(ヘイカク)は、肩の骨をしっかりと握り締められているのを感じた。――この屈辱的な経験によって、秉核(ヘイカク)は「機械師」という職業の弱さを深く理解する。文人が兵士に出会えば、理屈が通じないのと同じだった。


 しかしその直後、秉核(ヘイカク)の頭は壁に仰向けになり、腰を曲げたコフィー(コフィー)の顔は、秉核(ヘイカク)から三センチも離れていなかった。

 それほど近くて、少女の鼻息まではっきりと感じられた。


 もちろん、それ以上に彼女の迫力ある瞳が見えた。自分に何かできるはずがないと分かっていながらも、秉核(ヘイカク)はその生死を左右するような視線にぞっとした。


 コフィー(コフィー)は海拉寒流よりも冷たい声で、幽かにこう言った。

「今すぐ私の質問に答えなさい。嘘をつこうものなら、この手でお前の顔を切り裂くわよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。