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帰向  作者: 凛光穂
第二巻 機械師の心

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輸送機械と権利の配分 その二

 しかし封建時代には、大貴族から小貴族まで、帝国の上下を問わず、利益を生むあらゆる産業の権利が、権利分封の規矩に従って分配されていた。

 すべての商業権利が、大きいところでは鉄鋼から、小さいところでは都市の青物市場の野菜運搬の利益連鎖に至るまで、権利によって分封されていたのだ。

 それらは大小さまざまな家族勢力の手に分けられていた。

 だから貧しい技術者にアイデアがあっても、行動する理由も動機も根本から存在しなかった。


 利益の連鎖が権力によって分割されている場合、利益の刺激がなければ、社会の技術進歩の原動力はほぼゼロになる。

(現代のほとんどの人が働く動機は、金のためか、社会的な承認を得るためだ。技術進歩のために無私に奉仕するなどというのは、心に毒を盛るようなものだ)


 しかし技術が完全に停滞しているわけでもない。戦争が軍需産業の技術進歩を刺激することもある。銃焰(ガンフレイム)家は、爵位の安定と帝都の権力の支持を得るため、数百年にわたって軍需生産ラインを絶えず改良してきた。もちろん、そのような技術進歩は秉核(ヘイカク)の目には亀よりも遅いものに映る。秉核(ヘイカク)は言う。

「千年もの蒸気暦は、まさに罪作りだ」


  ……


 したがって、この世界で秉核(ヘイカク)が現在の封建社会において進めている技術進歩には、三つの条件が必要となる。


 第一、十分な政治力を持ち、規律に縛られず、この世界の技術体系を型にはまらずに観察できる貴族が必要だ。

 心からこの世界の技術進歩を愛する者でなければならない。


 銃焰(ガンフレイム)秉核(ヘイカク)の身分は、すでに十分に高い。今や彼は、ポーレン・カイスら十数人の若い貴族子弟をこの利益連鎖に引き込んでいた。むろんカイスのような貴族は体面を重んじ、自ら市井のことなどに見向きはしない。秉核(ヘイカク)に誘われて初めて、カイスは仲間を連れてこの利益集団に加わったのである。(秉核(ヘイカク)が庶民的すぎる点は、他の貴族子弟には認められていない。だが彼らは今、秉核(ヘイカク)の優れた機械技師としての輝きを見ており、その「貴族の体面を失う」行為には目を向けていない)こうして大勢の権力者の子弟が集まったことで、帝都の多くの地元勢力はひどく警戒していた。


 第二、天才的な人物が標準化生産ライン全体を考え抜き、システム分業によって各工程の複雑さを低減した。銃焰(ガンフレイム)秉核(ヘイカク)が技術総設計師として、工程を大幅に分業した。


 第三、人脈に優れた人物が多くの若い機械技師を説得し、この単純な標準生産に参加させ、定められた基準に従って最も重要な生産工程を担当する必要があった。秉核(ヘイカク)の管理能力と、良好な管理実績。


 秉核(ヘイカク)は、ちょうどこの三つの条件を満たしていた。


 そのため今年の下半期、調整を終えたガス機関車が、次々と皇室機械学院の名義で帝都地域の運行を始めた。


 全部で六路線。各路線は七十キロから百二十キロ。

 沿線には十五から三十の駅が設けられた。


  ……


 むろん、このすべてが帝国の大物たちの目を逃れることはなかった。


 天体塔の三階。簡素でありながら、威厳を帯びた帝国皇帝の執務書斎。


 帝国情報局長が、陛下の執務机の前に静かに立っていた。

 皇帝の耳目の一つとして、彼は日々の情報を陛下に届けていた。


 今日提出されたのは、『銃焰(ガンフレイム)秉核(ヘイカク)の初心者向け機械店』と『ガス車輸送業務』に関する資料だった。


 皇帝は机の上の資料を注意深くめくり、寛大とも取れる言葉を口にした。

「みんな子供だ。子供たちが小遣い稼ぎをしているだけなら、大人たちが大騒ぎする必要はない」


 皇帝がこう評したあと、それ以上の話はなかった。

 だが皇帝の顔に浮かんだ称賛の笑みが、情報局長に陛下の意図を悟らせた。


  ……


 帝国権力の基盤は、軍隊、鉄鋼、機械製造、鉱石、化学工業、食糧、交通である。


 これらの国家権力の基盤に関わる部門は、例外なく大貴族たちの支配下にある。

 大貴族たちは自領内のこうした権益を厳しく統制している。


 帝都は、皇室の中核的な領地である。

 皇帝はこの領地の至高の領主であり、ここでの小貴族たちの行為が合法かどうかは、すべて皇帝の一言で決まる。


 かつて皇帝は、帝都周辺の道路交通を皇室に近い貴族たちに握らせていた。

 皇帝の黙認があったため、彼らの掌握は合法だった。


 そして今、秉核(ヘイカク)の行動が皇帝の耳に届いた。皇帝はガス車両の輸送能力を比較したうえで、秉核(ヘイカク)が作り出したものが自領の交通を効果的に強化すると判断した。皇帝は秉核(ヘイカク)の行動を黙認した。

 そのため現在、機械学院のこれらの行動は合法となっている。


 むろん将来、ガス車路線が整備されたあと、皇室はこの産業を自らの名下に収めるだろう。

 何しろこれは皇室領地の重要産業なのだから。


  ……


 しかし皇帝にとって、今はまだ利益を分配する時ではない。この「ケーキ」を作っているのは、まだ幼い子供たちだからだ。

「子供たちが作ったばかりのケーキを奪って食べる」「機械学院の子供たちが稼いだ小遣いを奪う」――そんな厚かましい真似を、皇室はまだしないだろう。


 たとえこの産業であっても、皇帝はその責任者に一定の権利を与える。たとえば爵位を授けたり、官職を与えたり、婚姻を許したりなどだ。(秉核(ヘイカク)はまだ年が若すぎる)


 嘉龍皇帝(カリュウコウテイ)の統治手腕は、非常に巧みだった。

 常に皇室の威厳を保ち、主要な貴族家系に対する皇室の結束力を維持してきた。

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