煩わしさ その二
秉核は、璃韻の表情が嵐のあとの曇りからさらに雷雨へと変わりそうな気配を見て、突然胸が騒ぎ始めた。今の秉核は顔で思っていることが分かってしまう。泣きそうな璃韻を見て、秉核の顔には慌てた色が浮かんだ。
そして秉核のこのわずかな動揺が、璃韻の悔しさの爆発するきっかけとなった。
少女の涙はたちまち大粒になった。
足を踏み鳴らした。
「あなたってひどい」
すぐに振り返って走り去った。
そのすすり泣きは、周囲の多くの視線を集めた。
秉核の思考が一瞬空白になる。
内心で愚痴をこぼした。
「私は何年もあなたにいじめられてきたが、泣いたことなんてない。なのに今になって、なぜ私があなたをいじめたみたいになるんだ」
〇・五秒躊躇した後、すぐに追いかける。しかし二秒後、秉核はさらに混乱した。前を走る生意気な娘はますます速く走り、さらに激しく泣き出した。この道中、秉核は周囲の視線を感じ、説明の看板を掲げる必要があると思った。
……
この日、秉核はまたしても姪の前に完敗した。
複数の不平等条約を無理やり結ばされた。
授業後の無条件指導、試験前の補習、機械作業の手伝い、毎月の家族からの小遣いを彼女に管理させることなどが含まれていた。
そしてこの日、璃韻は女の子専用の武器を見つけた。
そう、学校では、秉核には璃韻を悔しがらせる百の方法があった。だがそれは、彼女が泣かないことが前提だった。一度泣き出せば、道理も理屈もすべて消えてしまう。冷や汗をかいた秉核は、学校の廊下のベンチで、天地も震えるほど泣き叫ぶ璃韻をようやく落ち着かせた。
秉核はぎこちない動きで頭を上げると、四十メートル先に密集する好奇の視線を感じた。それらの視線は秉核が頭を上げるとすぐにそらされたが、動体視力を強化していた秉核には、彼らがこっそり覗いていたのがはっきりと見えていた。
秉核はぎこちなく立ち去ろうとしたが、衣の端を引っ張られる感触がした。璃韻の小さな手が秉核の衣の端を掴んでいた。その時、首筋から両頬までが真っ赤に染まっていた。俯いたままの璃韻は、おずおずと、少し悔しそうに、そして少し当然といった口調で秉核に言った。
「もう少し付き合って」
秉核は苦笑した。
「まだ何か用か?」
璃韻はその言葉を聞くと、顔を上げ、涙目で秉核を見つめた。
その視線はまるで捨てられた子犬のようだった。
一秒後、突然口を開いた。
「わあ」
また泣き始めた。
秉核は急いで彼女の口を押さえた。
痙攣し続ける背中を叩きながら、泣きじゃくって呼吸も途切れ途切れになる少女の背中をさすった。
秉核はなだめて言った。「いいよいいよ、泣かないで、泣かないで、泣かないで。じゃあ、人の少ないところへ行こうか」(最後の一言は、秉核自身も少し涙声になっていた。)
極めてわがままな返事が、秉核の最後の望みを打ち砕いた。
「いや!」
ぼんやりとした秉核は、後悔し始めた。
「もしかしたら、最初から軍隊に入ればよかったのかもしれない」
……
四十分後、胸を涙で濡らした秉核はようやく教室にたどり着いた。秉核には本当に、あんな小さな体のどこにそれほど多くの涙や鼻水、よだれが溜まっているのか理解できなかった。
今日の授業は大型船舶用蒸気機関の保守だった。いつものように秉核は駆り出され、スコットの教え方は非常に速く、秉核はスコットの教えるペースを遅らせるために、蒸気タービンについて何度も質問を挟まざるを得なかった。
もちろん、ほとんど減速することもなく、スコットは秉核の質問を一言で片づけ、何の説明もせず、自分勝手に飛ぶような速さで授業を進めた。
技の披露を終えた彼が機械箱を抱えて去った後、次は秉核が細部の反復指導を行う番だった。
秉核は周りのクラスメートにこの動く蒸気機械を辛抱強く説明し、同時に璃韻の教科書に重要点を線引きしていた。ええ、いつの間にか、説明を聞きに璃韻も近寄ってきていた。以前のように秉核とけんかすることはない。
「三脹式往復ピストン蒸気機関は、以前の蒸気機関よりも熱効率が高いです」
秉核は各班のリーダーに任務を割り振りながら言った。
「分かったか?分からなかったら、自分で作ってみろ。問題が見つかったら、また俺のところに来い」
その時、後方から「パチパチ」と拍手の音が聞こえた。
脂ぎった金髪の上級生が、拍手をしながら近づいてきた。
ボーロン家の嫡流、名は航從、四人目の子息。カイスとは同じ家系だが、カイスは傍流である。ボーロン家は侯爵家で、領地は南部の地中海沿岸の港町にあり、帝国の海運を掌握している。帝国における政治的影響力では、この家系は銃焰家を上回り、財力では銃焰家はボーロン家の比ではない。
ボーロン家が支配する港町は、帝国で最も経済的に発達した四大都市の一つだ。
この家系には中位職業の継承が六系統あり、そのうち二系統は機械制御者の継承である。
航從が言った。「さすがは今期の首席、理論も操作経験も、実に見事だ」秉核はすぐに謙遜した。「先輩、過賞です。私は首席なんかじゃありません、ただのスコット先生の臨時助手です」
航從は軽く笑った。「臨時助手、ね?」彼は周りを見回す。——この学年で秉核と競える者はいない。秉核は今や紛れもない首席だった。
秉核は答えた。
「先生がお望みなら、他の人を育てる時間をかけることもできます」
航從は不可解に笑い、別の話題を切り出した。
「後輩さん、少し座らせてもらえないか」
秉核はうなずき、教室の隅へ移った。一方、カイスは教室の反対側の隅を占め、秉核と航從が話す隅とは教室全体を隔てた距離にいた。
魔法音声拡散術は、周囲の音を素早く空気中に消散させ、数メートル離れると二人の会話が聞こえなくなる術だ。しかしこの術法には、消散した音が別の角に集まる効果があり、天壇の回音壁の効果に似ている。他の者に盗聴されないよう、同じ波輪家のカイスが別の角を占めていた。
着席すると、航從が言った。「秉核さん、ご家族はあなたのために婚約の準備をされていますか?」




