一つの扉 その三
(注)炎日と皎月は地元の人間ではない。秉核は「彼らが現地で大きな事件を起こしてそのまま逃げる」ことを懸念していた(修仙小説でよくある舞台転換のパターン)。
もし二人が犯行現場に秉核の製作した機械を残していた場合、聖ソークの情報システムが追跡すると、その手がかりは秉核のところで途切れる。このような調査は秉核に面倒をもたらす。途切れた地点は重点的な審査対象となり、繰り返し尋問を受けることになるからだ。
情報部門にこの二人の法脈情報を伝え、帝国情報部門に調査を続けるための情報を与えておけば、帝国情報部門の追及の目は秉核から逸れるだろう。
そうすれば秉核の面倒はかなり小さくなり、彼自身の貴族という身分で、こうした些細なトラブルを遮断することも可能になる。
秉核は取引のリスクを知らないふりをし、ただ社会実践のなかで偶然この二人と接触しただけだと主張した。具体的な責任は傭兵協会や鉄髭たちが負うことになる。
もちろん、より可能性が高いのは、帝国情報部門が秉核からこの二人の来歴を調べられるということだ。だからこの二人は、殺人で口を封じるわけにもいかず、秉核と接触した痕跡をきわめて注意深く消すだろう。
もちろん、面倒を避ける最善の方法はこの取引をしないことだ。――しかし秉核はこの二人の法脈を見てみたかった。
……
炎日はためらいながら、顕魔石の彫刻を手に取った。
秉核は顕魔石の像の構造を見て、目を大きく見開いた。
抑えきれない衝撃を覚える。
これは騎士位階に近い魔脈だ。おそらくすでに騎士になっているのだろう。一部の領域は意図的に起動されていない可能性がある。もちろん秉核が衝撃を受けたのは騎士の魔脈のせいではない。大量の完璧な対称構造を見たからだ。
このような対称性と精緻な光景は、二十二世紀の高度な精密機器のなかでしか感じられないものだった。
今の秉核には、中位職業に到達できる自信がある。しかし中位職業の上の上位職業はどうだろうか?炎日を見る前、秉核の知識は完全に空白だった。
炎日を見たあと、秉核は自分に重要な要素が欠けていることに気づいた。これがなければ、上位職業に到達することは永遠に不可能だと悟った。
対称バランス。全身の法脈の全体的な対称バランス。
全身の筋肉と骨格を基盤とした平衡配置システム。
しかし身体には、たとえば左心房と右心房のように、生まれつきの不均衡がある。炎日の法脈もこれら不均衡を考慮し、それに応じて配置され始めていた。
脈絡は天秤のように両側へ均等に広がっている。
秉核は、炎日の全身の法脈の空隙が左右対称であるのを見た。これらの対称的な空隙は、明らかにさらに高みの段階のために予約されたものだった。
そして目の前のこの男性の法脈体系は、騎士段階において整然とした空間を予約していた。これは彼の家族に上位職業が存在することを示している。
顕魔石では主脈絡しか見えないが、細かな分脈絡については、専用の法脈探知魔法でしか把握できない。
しかし主脈の構造がこのようである以上、分脈の配置においても、
その精度は中位職業者の家族を質的に超えている。
……
「終わったか」炎日が尋ねた。
秉核はぼんやりと「はい、次の方どうぞ」と言った。炎日は傍らの皎月にうなずいた。
この少女は袖をまくり上げて顕魔石を握ったが、魔力の入力が少し多すぎた。顕魔石の彫刻上の法脈が非常に眩しくなり、秉核は思わず顕魔石を取り戻す。心配そうに自分の服の裾で拭った。その動作に皎月は秉核を睨みつけた。しかし秉核は気にせず、その目には戸惑い、より高次元への迷いが浮かんでいた。
皎月の法脈を詳しく見るまでもない。秉核は、この二人の法脈が同じ系統の伝承だと確信していた。
……
三十分後、機械装備は二人に引き取られた。
取引は成立した。
そして秉核は機械店を閉めた。
機械シャッターがゆっくりと下りていく。
秉核は店の金庫から上質な水晶を取り出し、手のひらに魔法の光を躍らせた。水晶には秉核の魔法によって、細かい彫刻模様が浮かび上がった。
(微細彫刻魔法は機械工学者の必修四十七魔法の一つである)
大量の絶対的な対称性を備え、雪の結晶のような六角形の完璧なバランスを持つ法脈体系を見て、秉核は冷静になり、考えた。
「身体要因。きっとこのようなバランスの基礎となり得る何らかの要因があるはずだ」




