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帰向  作者: 凛光穂
第二巻 機械師の心

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試練後の生活 その一

 試練が終わってから、すでに一週間が経っていた。秉核(ヘイカク)は、自分の周囲の状況が大きく変わったことに気づく。


 同級生たちは秉核(ヘイカク)の姿を見かけると、立ち止まって挨拶をするようになった。


 秉核(ヘイカク)が教室に入るのが少し遅れても、いつもの席は空けてあり、隣の席も誰かが(予約して)きちんと確保してくれていた。


 これまで君子の交わりを淡々と保ってきたカイスたちでさえ、最近の会話では過剰なほど熱心だった。その熱心さが、かえって秉核(ヘイカク)に距離を感じさせた。入学して二、三年になる上級生の貴族学生たちまで、自ら進んで秉核(ヘイカク)に近づいてくる。


 それに自分の姪ときたら、まる一週間もまともに目を合わせようとせず、授業では遠くの席に座っているようだった。――この一点だけは、秉核(ヘイカク)にとってこの上なく喜ばしいことだった。

 昔を思えば、この娘が一日たりともトラブルを起こさない日は、「先生が宿題を忘れた」ときのような喜びだったのだから。


  ……


 教室で。


「ヒカル、三号実験プラットフォームへ」

 講壇の上から、ソーグートがヒカルに命じた。

 うん、試練が終わってからというもの、ソーグートがヒカルを教学の右腕として使う機会は、ますます増えているようだ。


  ……


 機械学院は、軍事学院のように下級職業者を大量に教官へ充てるわけにはいかない。

 戦争のない時期、兵士職業者には仕事がない。だが機械技師はたいてい自分の工房を持っていて、収入も多い。

 金だけを雇用条件にするなら、機械技師を雇うには七、八倍の資金が要るかもしれない。


 機械学院には教官が足りないため、指導教員が任命した各グループのリーダーが、次第に教官の権限を引き継いでいく。

 それは概して二年生からで、各グループのリーダーが機械技師の職階に入り、試練を通過したあとのことだ。


 権利の上では、完全に指導教官に次ぐ立場となる。

 上は教官たちの研究室に入ることができ、下は学生たちを組織して一連の活動を行える。


 優秀な組長は教官からますます重用される。

 また、試練通過の際に配慮してもらおうと、学生たちも優秀な組長の周りに集まり始める。

 もちろん、明らかに不適格な組長は解任される。


 これは秉核(ヘイカク)の前世の学校における、学生とクラス委員の緩やかな関係とはまるで違っていた。――秉核(ヘイカク)はまだ組長の背後にある権力に気づいておらず、ただ周囲が変わったと感じているだけだった。


  ……


 教官に呼ばれ、秉核(ヘイカク)は胸を締め付けられる思いで壇上に上がり、助手の仕事を始めた。


 機械プラットフォームの上には、帝国の現役二足歩行型機甲が横たえられていた。

 すでに廃棄処分になった機体である。

 今日の授業は、故障した部品を検査して良品と交換し、あわせて帝国機甲の複雑なバランス制御システムを理解するという内容だった。


 音響透過測定術。


 析金術。


 温度制御術法。


 強酸微細腐食術。


  ……


 秉核(ヘイカク)の操作で、複数の魔法が機械部品の加工を始めた。


 一つ一つの機械部品には、機械技師でなければできない精密加工が施される。直径0.1マイクロメートルの微細な穴を開け、さらに内部にめっきを施して、細い導線を通さなければならない。――秉核(ヘイカク)はぼやいた。

「この二足歩行機甲は誰が設計したんだ?わざとこんなに難しい工程にしたのか!」


 秉核(ヘイカク)は作業手順をまとめると、一刻も遅れず、素早く部品をスコットの手に渡した。


 しかし秉核(ヘイカク)も不思議に思った。――今日の指導教官の手際は、どうやら異常に速い。実は今日に限ったことではなく、試練が終わってからというもの、スコット教官(スコット教官)の指導はここ数日でめまぐるしくなり、ますます速くなっていた。


 今日の授業で秉核(ヘイカク)は、なんとかついていくために、複数の新しい魔法を同時に使いこなさざるを得なかった。


 秉核(ヘイカク)のこうした操作は、すでに上級機械師、ひいては一部の機械制御者の特徴を徐々に示し始めていた。


  ……


 旧来の魔法体系では、単体の大魔法の発動成功率が重視された。

 小さな火の玉、大きな火の玉、さらに大きな火の玉へと成功の規模を広げられることが、そのまま魔導師のレベルを示していた。


 一方、新魔法の下位職業者における低級、中級、高級の区分は、二つの条件で決まる。


 第一は、法脈上でどれだけ多くの種類の新魔法を発動できるかだ。


 第二は、新魔法の切り替え時間、つまりCDが短ければ短いほどよいということだ。

 旧魔法が大技を放つために時間をかけ、詠唱に一、二秒、あるいは七、八秒かかっても、戦士が援護してくれるなら問題ないのに対し、職業者はまったく別物だ。


 新魔法を使えても、一生職業者とは認められず、魔術師としてしか評価されない者がいる。

 彼らは新魔法を発動するのに、一分もの準備が要るからだ。


 最低限の職業者の基準は、五秒以内に魔法を発動できること、そして各魔法に有効な精度と長時間持続する作業時間があることだ。――現在の秉核(ヘイカク)のように、手の上の術式が爆竹のように素早く切り替わり、なおかつ必要な作業精度を保てるのは、まさにその条件を満たしているからだ。


 一方、スコットは複数の魔法群を完全に同時稼働させている。

 しかも互いに干渉させず、各工程を同時に確認し、複数のマニピュレーターで同時に精密作業を行う。

 これが標準的な中位職業者の基準だ。スコットは機械制御者である。


 職業者の才能ポイントは、まるごと速度と精度に振り分けられている。

 工業の時代は、工具の時代なのだ。

 力やエネルギー、破壊力といったものはすべて工具が担い、職業者はそれを制御する。


  ……


 ―――――

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