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帰向  作者: 凛光穂
第二巻 機械師の心

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帝立軍事アカデミー その一

 帝国機械学院


 上級教官の私的研究室にて。


 黒い機械服を着たスコットは、浮遊式溶接機を操作し、三メートルほどの機甲ロボットの構造強化を行っていた。


 電線のように見えるが、実際は伝動筋肉の束がロボットの関節から露出している。

 この巨大なロボットは、この時代の様式をかなり混乱させていた。


 機械制御者スコットがこの高度な実験装置を製作している間、機械の腕が通信結晶を掲げていた。

 結晶には、ぼんやりとした像が映っている。


 スコットはこの時、銃焰伯爵(ガンフレイム伯爵)と会話していた。


 スコットの目の前で、強い光がきらめく。彼は仮面をつけて真っ赤な溶接点を観察しながら、思芬(シーフェン)に言った。

「息子が優秀だと分かった時、どんな気分だった?」


 銃焰(ガンフレイム)は逆に問い返した。

「生徒が優秀だと分かった時は、どんな気分だった?」


 スコットが答える。

「生徒が成長すれば、当然うれしいものだ。君はどう思う?」


 思芬(シーフェン)は少しためらってから、口を開いた。

「彼が無事に機械制御者になれればいい。それ以上は、特に求めていない」


 スコットは溶接点から画面へ視線を移し、訝しげに訊く。

「どうするつもりだ?」


 思芬(シーフェン)はそう告げた。

「私はすでに彼のために南方の赤炎軍団と連絡を取った。卒業後は、君が指導者として推薦状を書いてくれ」


 スコットは驚いた。

「しかし北方軍団はもっと良い条件を提示しているぞ」


 思芬(シーフェン)は短く答えた。

「南方でいい」


 スコットが複数の溶接トーチと機械アームの制御を解除すると、実験室全体が突然静かになった。


 スコットは画面に向き直り、詰問するような口調で言った。

「ギア、君は十一年前、いや十二年前に北で何をしていた?なぜ帰ってきた時、こっそり赤ん坊を連れてきて、自分の子だと宣言したんだ?何かを隠しているのか?」


 思芬(シーフェン)は無表情に言った。「何でもない。余計なことを聞く必要はない。これは銃焰(ガンフレイム)家の内輪のことだ」


  ……


 場所は天体塔の寮。


 時間は二日後。


 二日間続けて眠り続けた秉核(ヘイカク)は、腹の空腹に起こされ、仕方なくベッドから這い出た。しかしベッドを降りた途端、秉核(ヘイカク)は目眩がして視界が暗くなるのに気づく。バタンという音を立てて、地面に倒れ込んだ。努力の末、秉核(ヘイカク)は一つの事実を認めざるを得なかった。

 自分が病気になっていたという事実を。


 重度の疲労に加え、張り詰めた緊張が急に解けたこともあり、二日間何も食べずに昏睡状態に陥っていた。

 体には一片の力も残っていない。


 しかし習慣で入口まで這い上がった後、秉核(ヘイカク)は気づいた。

 ドアは、ここへ滑ってきた二つの棚で塞がれている。

 重度の疲労のせいか、魔力はあるのに法脈の魔力が散らばっていて調律できない。


 箱から六角形の金属棒を取り出す。

 この金属棒をくるくる回せば、棚を元の位置に戻せる。(機械式弩の弦を張るのもこの構造だ)


「一回、二回、三、三、うん」三回転させたところで、秉核(ヘイカク)は抵抗を感じた。


 しゃがみ込んで確認すると、棚のレールの位置とカーテンが引っかかっていた。


 秉核(ヘイカク)は二度引っ張り、カーテンをビリッと開けた。すると布切れが挟まっているのに気づく。この忌々しい布切れが溝に作った抵抗が、秉核(ヘイカク)がドアを開ける最後の障害となっていた。今の秉核(ヘイカク)は病気で、体力が最も衰えた状態だった。


 秉核(ヘイカク)は息を切らしながらその溝を見つめ、しばらく呆然とした。

 そして歯を食いしばり、消しゴム修正法で法脈の変更を始める。

 兵士の職業に変更したのだ。


 ギシギシと音を立てて、秉核(ヘイカク)はありったけの力で棚を元の位置に押し戻し、それからドアの前でへたり込んだ。


 法脈を機械師に戻した後、秉核(ヘイカク)は息を切らしながら心の中でつぶやいた。

「騎士、騎士、やっぱり必要だな」


 ドアを押し開けたが、裾を踏んでしまい、もともと目がくらんでいた秉核(ヘイカク)は、そのまま外へ転がり出た。


 廊下を行き交う学生たちが突然足を止める。二人の学生が秉核(ヘイカク)を助け起こした。

 医務室まで送り届けた。


  ……


 天体塔の時針が一回転した。

 空の太陽と月も、星空を一周する。


 聖ソーク(セイソーク)首都、機械区から七キロ離れた場所。


 帝国軍事区、稜堡前の広大な広場にて。


 広々とした馬場では、大勢の少年たちが騎兵戦闘隊形の訓練に励んでいた。

 この蒸気時代にあっても、駄馬は依然として主要な運搬力である。

 騎兵もまた、代替できない主要兵科だった。


 ここに整列している少年は、全部で三百人。

 そのうち二十人以上が、すでに下位職業を持っている。

 残りの大部分は、職業者のレベルに達していない。


 これは機械学院の学生で職業者になれる割合と比べると、かなり低い。

 学生の出身が違うためだ。


 機械区の学生のほとんどは、全国各地の工場主の子供たちだ。

 そうした工場主には富裕な商人や小貴族もおり、家には職業者がいる。


 帝都軍事学院が地元で募集する学生の多くは、家庭の経済状況や条件が機械学院の学生より劣っている。


 機械学院は学生を募集する際、毎年多額の金銭を受け取ることができるが、


 軍事区は学生を募集する際、毎年多額の金銭を支出しなければならない。


  ……


 帝都が募集する軍事学生のほとんどは、三つの条件を満たしている。


 第一に、帝都は最低でも皇帝陛下が直轄する領地であること。


 第二に、帝都の軍人や警察の家庭に生まれた子供であること。


 第三に、一定の戦術的素養があること。


  ……


 各地の大公も、領地で同様の学校を運営している。

 大公たちが設立した軍学校も、これと似た三つの条件を設けている。


 第一に地元出身であること、第二に家庭に地元の軍関係者の背景があること、第三に一定の戦術的素養があること。

 ただし、そのレベルはやや劣る。


 したがって、学生の出身地から見れば、帝都軍事学院は帝都の他の学院と比べて地方的な性格が強い。

 他の学院は、全国から学生を募集している。


 帝都軍事学院は、帝国中央に直接忠誠を誓う武装勢力を育成する。

 そして、この忠誠という条件を優先的に満たすのだ。


 帝国軍事学院を卒業した者の中で、職業者の割合は機械院、医師院、植物学学院よりはるかに低い。

 しかし人数は、他の学院より圧倒的に多い。


  ……


 ―――――

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