戦車の設計案 その三
地球の歴史において、民族国家が近代化する前後で最も顕著な違いは、社会における自発的な組織力が形成されるかどうかにある。
基礎教育を受けた民衆は、所属する集団が問題に直面し、皆で組織的に取り組む必要があるとき、必ず自発的に組織を立ち上げる者が現れる。
そうした組織を見ると、人々は組織が必要だと認識する。組織者の血統や家柄といった、指導者としての資格を問うたりはしない。
先に立ち上がった人物の組織能力を、素直に認めるのである。
地球上で最も体格に優れた人種は黒人だが、黒人だけで軍隊を編成すると、その戦闘力はひどいものになる。
一方、東アジアでは国民が大規模な教育を受け始めて以来、社会の組織力がきわめて強い。
二十一世紀の東アジアでは、この組織力はごく些細な細部にまで現れている。
たとえば二十一世紀初頭、多くのゲームサーバーでは中国人がきわめて活発だった。フォーラムの中国語スローガンに呼応して大勢が参加し、ゲーム内で騒ぎを巻き起こした。
中国人は国際サーバーでギルドを組織し、大規模な集団行動を主導することにかけて、常に活発だった。そのため運営側は『不正なチームプレイ』を絶えず取り締まらざるを得なかった。
プレイヤーのこうした自発的な組織力は、ある程度ゲームバランスを崩していた。
秉核が今、自覚的に組織していることは、この時代では特殊だ。
二十一世紀後半には、社会の大衆に普及した一種の自覚的行動である。
……
リーダーシップと組織運営は、非常に頭を使う仕事だ。前世の秉核は他人が組織するのを待ち、自分は従う側の人間だった。だが今の社会環境には、秉核を待ってくれる者などいない。
自ら立ち上がるしかなかった。
三十分後、秉核が隊伍を率いて工場に入ると、工場の労働者たちはうつむいたまま秉核一行をやり過ごし、工場主だけが直接迎えに出てきた。秉核は向かってくる工場主に一枚の紙切れを渡した。秉核が署名した、四十万帝国リラの借用書だった。
この不渡り小切手を渡すと、秉核は工場の管理者たちに言った。
「これから我々の人間が管理を引き継ぐ。お前たちは我々の人間の補佐に回れ」
工場初日、秉核は次のことを行った。
一行に労働者を配属し、全労働者の作業服に番号を振った。すべての機械グループにも番号を付与。全員に自分の番号を覚えさせ、その後、全工程の点検を実施した。
夜になると、秉核は忙しく動き回り始めた。
翌日、秉核は生産計画を立て始めた。
数日前、教室の全員が試作車に触れたが、誰も内部構造を感知できなかった――秉核は断言する。
この試練の出題者は、今期の若い機械技師たちが醜態をさらす様を見たいという悪趣味なのだ、と。
当時の秉核の考えは「皆で形式的にやって、天外有天・人外有人という戦場の複雑さと、学び続ける必要性が分かれば十分」だった。
まさか、こんな騒ぎになるとは。
それが当時の秉核の考えだった。
今や、真剣に向き合う姿勢はまったく違っている。
……
工場の各工程の運転状況を確認したその夜、秉核はランプの下でペンと三角定規を手に、一晩じゅう図面を描き続けた。
秉核は記憶を頼りに、頭の中にぼんやりと浮かんだ装甲車の構造を図面へ描き出していく。ベアリング、シャーシ、サスペンション。そのすべてが秉核の脳内補完によって再現された。補完を終えると、構造が動く際のさまざまな力や各部の摩耗を計算した。
翌日、三時間をかけて車体全体の伝動構造を検証し、各部品の指標となる難点を議論すると、秉核はすぐさま各部分の作業を仲間へ割り振り始めた。
……
この世界の工業生産には大規模な製造能力が欠けている。だが、機械技師たちの小規模製造能力は、地球上よりもはるかに優れている。
旋盤のバイトは複数の術法の加持を受けており、刃の硬度は常に最高の状態に保たれ、温度も一定に維持されていた。
高温溶接にはパイプは要らない。数人の機械技師が協力してアセチレンガスと純酸素、アルゴンガスを調整し、鋼板を突き合わせる。
大きな金属部品は、機械技師の手元の旋盤で直接削り出される。
地球の工場なら、こうした作業は機械を正しい状態に調整するのに数日を要し、その後でようやく稼働できるところだ。
……
もちろん二十世紀の地球の工場機械は、一度正しく調整されれば、各工程が機械技師の手作業よりも速い。
さらに地球の工場では各工程が組み合わさって流れ作業となり、そのまま流動生産が行われる。
もしこの世界の機械技師が十日で戦車一台を製造できるとしたら、地球のどの工人も生産ラインの助けなしには成し遂げられない。
だが地球上の生産ラインが協力すれば、それはまた別次元の比較になる。
……
秉核は三日目に現場労働者の賞罰制度を導入し、工場の労働者一人ひとりにまで細かく適用した。
多額の報奨金と相互監視の仕組みにより、労働者たちのやる気は薬を飲んだように爆発した。
秉核が割り当てた任務は、どのモジュールもすべて予想を上回る成果を上げ、しかも進みが非常に速かった。――金は秉核が出したわけではない。秉核のチームには、富豪の子弟が少なくなかった。
帝国学院で学べる者は、皆、金に困らない連中ばかりだ。
大量の廃棄部品が再生された。
ベアリング用の鋼板や車体シャーシは、試作品が廃棄されたあと、いくつかの成功作が製作された。
……




