辺境の壁の外の世界 その三
圖竹は一瞬ぽかんとした。秉核の返答は幾分驚くべきものだったが、同時に予想の範囲内でもあった。
普通の服を着ていて、最初は気弱そうな風貌だったが、貴族の痕跡は消し去れない。
下町で秉核ほどの年の少年は二種類に分かれる。ひとつは黙々とゴミ箱を漁る者。もうひとつは、肉を食うためにひどく早熟で、目には多かれ少なかれ狡猾さや抜け目なさが宿っている。一語一語で相手の弱みを探り、なんとか得をしようとする。しかし秉核の目にはそんな計算が見えず、外見も明らかに苦労知らずで、貴族であることは明らかだった。
(だが貴族にも大貴族と小貴族、そして没落貴族の区別がある。)
圖竹が訊いた。
「どんな報酬が欲しいんだ?」
秉核は少し考えてから訊き返した。
「傭兵と任務発注者の間で合意が成立したあと、協会は何で利益を得ているんだ?手数料か、それとも他の何かか?」
圖竹は答えた。
「状況によります。場合によっては手数料を取りますし、場合によっては記帳して、ある程度たまったところで協会から出された任務をこなしてもらいます」
秉核はうなずいた。
「わかりました。慣例に従って進めましょう。私が客の要求を満たし、協会が評価して、それから分配する、ということで」
圖竹が訊いた。
「この分配比率はどうするべきだと思いますか?」
秉核は傭兵協会の公正さを信じている様子で、うなずきながら言った。
「通常通りで結構です。協会の公正さは信頼しています」
圖竹が訊ねた。
「では、私たちとどのような契約を結ぶおつもりですか?こちらでは機械技師に常時待機してもらう必要があります」
秉核は頬杖をついて考えた。いつの間にか秉核は会話の主導権を握り、ソファにゆったりと座っていた。
「まず一ヶ月の契約を結びましょう。問題がなければ延長できます。ええと、保証金は必要ですか?」
圖竹は頷いた。そう言って圖竹は契約書を取り出した。
「問題ありません。では最後に、こちらにサインをお願いします」
緑衣の女性が契約書を秉核の前に置いた。秉核は契約書に目を通し、条項をめくって、一つ一つの数字に赤丸を付けていく。そしてペンを取り出し、赤丸の横に自分の名前——秉核——を署名した。(苗字は記入せず、数字に赤丸を付けるのは銃焰家の習慣で、赤丸を付けた数字は自分が確認したものであり、後に契約書に変更が加えられても一切認めないという意味である。)
帝国の各貴族家には、文書に署名する際に独自の習慣がある。
傍らにいた圖竹はその細かな動作を見て、顔をわずかにこわばらせた。秉核の暗黙のメッセージは、自分が銃焰家の出身だというものだった。だが圖竹は完全には信じていなかった。
……
こうした社会では、多くの法律が曖昧で、強者にはより多くの解釈の余地があり、契約は大きく変わりうる。
下層街の傭兵ギルドは基本的に強者のものだ。圖竹には、契約上の曖昧な定義を解釈する権利がある。
帝国の法律は、強者の解釈に傾いている。
下層街では、多くの庶民がこうして略奪されている。だが、そうした略奪で富を築いた富豪たちは、より大きな貴族に同じ方法で奪われることを恐れ、細心の注意を払わねばならない。大貴族との協力において、契約は大貴族をほとんど縛らない。
大貴族にとって有用でない限り、大貴族は協力の際に帳面を使ってその詳細を記録する。
だが、大貴族にとって有用でなければ、権力者は自分の気分次第で、慈悲深くも残酷にも振る舞う。
協約を一通結んだあと、秉核は傍らで待っていた緑衣の女性に書類を渡そうとせず、圖竹を見上げて言った。
「契約書は二通作るはずでは?もう一通はどこだ」
側にいた緑衣の女性が答えた。秉核は眉をひそめた。右手のメカニカルグローブに火花が散り、契約書を焼き払おうとした。
「こちらでは一通のみで、協会の金庫に保管されます」
これは秉核が慎重になりすぎたせいだった。銃焰家の者だと明示していれば、さほど問題にはならなかっただろう。しかし秉核は家族の状況を知らず、家族が今取っている一連の行動は、帝都の政争から身を守るためのもののように見えた。秉核は外部勢力に利用されるのを恐れていた。たとえば令息に多額の借金を負わせて脅迫する、といった筋書きである。こうした取り越し苦労の妄想が、秉核を過度に警戒させていた。
一方、緑衣の女性はそれを見て手を上げかけたが、窓の外から赤い点が射し込むのに気づき、慌てて二歩後退した。窓の外の空では、機械鳥が低空へ急降下し、腹部の内蔵弾窓から一筋のレーザーを放っている。ただのレーザーポインタ程度の微弱な光で、秉核はこの機械鳥に武器システムなど搭載していなかった。
だが、部屋の中の者たちにはそれがわからなかった。
圖竹は恨みがましい口調で言った。
「少年、それは感心しないな」
秉核は緊張を抑えた。
震える声で弁解した。
「私は社会経験が少なく、多くのことを理解できませんでした。失礼いたしました。契約の件ですが、こちらで聞いていた話と、家で聞いていた話が少し違います。この分は無効にしてください。帰って確認させてください」
圖竹は言った。「待ってください、二部でも構いません。翠刺(緑の衣の女性の名前)、もう一部作ってきなさい」
傭兵協会は普段、相手に対しては強者として振る舞い、契約書の一部を自らの金庫に直接保管して、もう一方には曖昧なメモしか渡さない。しかしこのとき、会長は秉核の反対を見て微笑み、もう一通の空白の契約書を取り出した。
数分後、秉核は圖竹が署名するのを待って、自分の契約書を手に取った。部屋の中の天体時計を模した時計を見上げて言った。この騙し合いの空気の中に、秉核は一刻もいたくなかった。
「もう遅い時間ですから、今日は帰ります。明日、準備ができたら戻ってきます」
圖竹はにこやかに言った。
「馬車を手配しましょうか?」
秉核は笑いながら婉曲に断った。(秉核は、帰る途中で何か仕掛けられないよう警告しようとした。)
「いいえ、歩いて帰るのが癖なんです。機械区の十七番ゲートはここから遠くありません」
秉核が門を出ると、圖竹の笑顔はすぐに消え、刀傷のあるいつもの顔に戻った。彼は傍らの女性に小声で命じた。
「調べろ」




