飛躍的進歩 その三
秉核は自分の家紋を見せた。銃焰家の家紋は、二丁の火縄銃が交差して炎を噴き出す図柄だ。秉核を取り調べた憲兵は半信半疑の目で彼を見つめ、それから慎重に尋ねた。
「失礼ですが、学生証など他の身分証明書をお見せいただけませんでしょうか」
秉核はそれを聞くと、何も言わずにすぐ学生証を取り出した。
そしてバックパックから金属製の機械を取り出し、魔訊術の指令を入力すると、たちまち変形して金属製のアームカバーになった。
このアームカバーには銃器機能があり、六発の弾丸を発射できる。
この機械は自分が機械技師であることを示すと同時に、下町に銃を持ち込んだことも意味していた。憲兵は秉核の品々を見て、次に秉核が差し出した身分証にちらりと目をやり、手が震えて落としかけた。そしてすぐに媚びた笑みを浮かべる。「秉核様、下町にいらっしゃったのは……つまり、下町は非常に状況が複雑でして、もし何かご用がおありでしたら、私がお手伝いさせていただきますが?」
秉核は手を振った。
「結構です。ただぶらぶら見て回るだけです。同行は必要ありません」
その衛兵は「少々お待ちください」と言い残し、すぐ脇の哨戒塔の詰め所へ走って行った。
数分後、彼は一枚の紙を取り出した。汚れて酒臭いその地図を広げると、秉核は身を乗り出して覗き込んだ。
なんと下町の地図だったが、地図の上は何らかの勢力によって幾つかに区画分けされているようだった。
この衛兵は宝物でも献上するように言った。
「坊ちゃん、下町は昼間なら自由に散策できますが、夜にはいろいろなタブーがあります」
秉核は眉を上げ、笑顔で言った。
「鼠には鼠の道、蛇には蛇の道がある。それは分かっている。うん、何か注意すべきことはあるかな?」
……
衛兵は言った。
「街全体には複数のギャングがいて、昼間はパトロール隊がいるので彼らも動きませんが、夜になると各区域で詐欺や窃盗が起きます」
秉核はうなずきながら、突然尋ねた。
「昼間の治安はどうだい?外郭部のスリは横行しているのかね?」
衛兵は困惑した表情を浮かべた。「それは違います、違いますが、もし何かお忘れ物をされましたら、一言いただければ、三日以内に必ずお届けできると保証します」
秉核は地図を手に取り、意味深げに言った。
「つまり、夜は人心が険しくて、下町で誰かが突然いなくなるようなことがあっても、城衛軍の捜索範囲を超えている可能性が高い、ということですか?」
衛兵は言った。
「その、その、我々は街全体にはまだ統制力を及ぼしております。ただ、あなた様のこのお姿ですと、目が節穴のような者が、勝手にあなた様へ手を出そうとするのではないかと危惧しておりまして」
秉核は自分の平民じみた服装を見て、顔を上げた。
「私の服装に問題があるのか?」
衛兵は周りを見回し、それから小声で言った。
「坊っちゃん、あなたのようなお綺麗な方が下町に入ると、多くの人に狙われますよ。昼間は大胆には出てきませんが、わざとトラブルを起こして足止めしようとするでしょう。夜になってから……」
中年の衛兵は空中で首を絞めて引きずるような仕草をした(これは芝居で誘拐を表現する芸術的な動作だ。この時代の芝居は現代の映画のようなものだった)。
秉核はうなずいた。
「分かった、情報をありがとう。君の名前は?」
「マーロです、坊っちゃん。これが本名で、ここの人たちは私を『牙叔』と呼んでくれています」
中年の衛兵はすぐに答えた。
秉核はうなずいた。
「うん、覚えておくよ。地図と情報をありがとう。もし本当に困ったことがあったら、君に助けを求めるかもしれない」
秉核は門を離れ、人混みの中へ入っていった。
「牙叔、あのチームに少し情報を流しましょうか。彼らに注意させます」
マロのそばにいた兵士が言った。
マロは手下の額を叩きながら罵った。「バカなことを言うな。早く肖像画を描いて、あの親分たちに知らせろ。問題を起こしても、誰も尻拭いしてやらないぞ」秉核自身に自覚はなくとも、下町の人々の目には、銃焰家が確かに帝国一流の家族の一つと映っていた。




