欠陥のある法脈 その二
……
秉核はカジェット世子に、この飛行装置の機能を実演してみせた。
同時に、コマンド伝送のコードをカジェット世子に伝えた。魔力通信は非常に基本的なレベル0の魔法で、数百メートルの圏内なら職業者同士が通信できる電磁波を自ら発信できる。もちろん、機械人形の遠隔操作も可能だ。
カジェットはしばらく弄り回したあげく、笑みを浮かべて秉核の手を握った。
「これは本当に面白くて役に立つ発明だ。ちょっと貸してもらえないか?」
秉核はすぐに手を引っ込め、慌てて言った。「小さな玩具ですから、貸すも何もありません。気に入っていただけて光栄です」カジェットの手はとても温かかったが、男に手を握られるのは秉核には少し気味悪かった。
コフィも傍らで笑った。「秉核は私の守護騎士です。彼があなたのお役に立てて嬉しい」
その笑顔には少女らしい想いが滲んでいたが、視線は終始カジェットから離れなかった。
……
十分後、彼らの姿が見えなくなると、秉核はほっと一息ついた。
「地位の高い人と話すのは本当に気が重い」と呟いた。
兵士、機械技師、医師――三つの職業はそれぞれ帝都の三つの区域に分かれている。
区域が違えば学生同士の交流もない。
カジェットがここへ来たのは、試練のためだった。
帝都の若い学生はどの職業でも試練を課される。
ただ、その種類はそれぞれ違う。
たとえばカジェットの試練は、列車で月隕山脈まで行き、軍事特別訓練を受けることだった。
だから彼はいくつか小物を用意する必要がある。
秉核が作った、複雑な地形で素早くロープを架けられる小さな道具は、見た目はごく普通だが、ある地域を越えるときには非常に役に立つ。
先程の会話で、秉核はカジェットのためにこうした飛行機械を六機作る羽目になった。報酬はない。貴族同士の付き合いでは、報酬など話題に上らないのだ。言ってみれば、秉核が他の貴族と交流すること自体、伯爵が奨励していることだった。
小遣いが尽きたときは、この口実で家から金をせびることもできる。
カジェットの家系にも、こうした簡易リモコン機械を作れる機械技師はいくらでもいる。
ただ、家の機械技師を動かすより、学校の人脈を通じて機械学院の学生に協力を求めるほうが、自分の力を誇示できる。
この帝国学校では、貴族の誰もが進んで人脈を広げているのだ。
……
そんなこんなで少し時間を食ってしまった。
ふと我に返った秉核は時計を見て「しまった、遅刻だ」と小声で叫び、歩調を速めた。数分後、秉核は教師の事務室にたどり着いた。
ここもまた秉核に圧迫感を与える場所だった。
金属工場のような造りの部屋で、用具はどれも金属製の組み立て式だ。
スコット(秉核の指導教官で、枯れ草色の髪をした初老を迎えたばかりの中年男性)は背を向けたまま本を読んでいた。秉核は一言も発さず、壁伝いに静かに近づいて立った。数分後、スコットが振り返り、冷たい口調で秉核に「座れ」と言う。
秉核は座ると自分の腕を伸ばした。スコットが手を上げると、その腕から一本の線が伸びて秉核の腕に絡みつく。秉核はすぐに、波のように広がる魔力の振動が全身に伝わるのを感じた。
しかし数秒で終わった。スコットは秉核を見上げる。
「間違いない、この調子で続けなさい」
秉核はうなずいて片付けようとしたが、スコットは秉核を見て言った。
「最近、お前の進みが随分早くなったな」
秉核は答えた。
「法脈についての本を多く読み、少しずつ分かってきました。導師、私の家系の法脈について、いくつか疑問があるのですが」
スコットは眉をひそめて叱責した。
「余計なことを考えてどうする!」
秉核はすぐに説明した。
「ただ、ちょっと興味があって……うちの家系の法脈は、どうも改変品みたいでさ」
スコットは秉核と視線を合わせた。その恐ろしい視線に秉核が後ずさりしたくなった、まさにそのとき、スコットはため息をついて言った。「お前の家の法脈は、お前が気にするようなことではない」秉核は好奇心を抑えきれず、小声で尋ねた。
「やっぱり本当にあるんだ」
「本当にあったんだ」
スコットは一呼吸おいた。
「言っただろう、今の君が考えることじゃない。やたらに考えていると、知らぬ間に過ちを犯すことになる」
秉核は表向きにはうなずいたが、心の中では過ちなど全く気にしていなかった。(秉核は心の中でこう思った。「チートがあれば調子に乗れるさ」)しかし秉核の表情はやはり本心を隠しきれず、スコットにはその「どうでもいい」という顔が読み取れた。
スコットは秉核を見つめた。「もしこの五ヶ月間、同じペースと正確さを保てるなら約束しよう。法脈の誤った修正が何を引き起こすか、見せてあげてもいい」




