機械師への道 その二
これはもしかして、転生後のシステムが仕組んだ宿敵なのか?
自分はここまで「寛大」に彼女の顔を殴るのを我慢し、この悪役を踏みつけるのを「堪えて」きたというのに、彼女のほうはむしろ楽しんでいるようだ。
璃韻が今むしゃくしゃしているのは、自分ではなく秉核が組長に選ばれたからだ。
指導教官が選んだ組長は皆、貴族の子弟だった。しかし璃韻は、自分の才能と能力が秉核より上だと思い込んでいた。(秉核の評では「家で甘やかされてわがままになった」)
そのため今、彼女は第二組の一員として期待したほどの注目を得られず、すぐに基盤の不安定な秉核へ挑みかかった。
しかも今や、この一族内の確執を、クラスの組同士の確執にまで広げようとしている。
彼女がこんな騒ぎを起こしたことで、秉核だけでなく第二組の組長も頭を抱えた。璃韻が一族の内部でトラブルを起こすだけなら、彼は部外者として説得などしなかっただろう。
だが、よりによって第三組の組長の名前まで出したことで、組同士の対立に発展しかねなくなっていた。
……
秉核は立ち上がり、目をキョロキョロさせた。すると、くだらない考えが心の内から噴き出してくる。
秉核は璃韻をじっと見つめ、突然笑いながら言った。「愛しの姪よ、君に好きな人がいることは知っているよ。叔父としてなら、君に蹴られて少し恥をかくくらい、何でもない。だが、恋愛経験豊富な私から一つ忠告だ。女の子が男の子を惹きつけたいなら、雄のカワセミ(孔雀のようなもの)が羽を広げるように自慢してはいけない。それは想い人の関心を引くどころか、反感を買うだけだ」そう言って、秉核は満面の笑みで璃韻の後ろにいるカイスを見た。カイスは驚き、璃韻の肩に置こうとしていた手を止め、璃韻を説得するのもやめてしまった。
一方の璃韻は、顔を真っ赤にして慌てふためいた。
「あ、あんた何言ってんの?わかんない」
秉核はさらにおだてて言った。「我が銃焰家は数百年、天才少女を待ち望んできた。ぜひとも控えめに」
バン、という音がした。璃韻は秉核を思い切り蹴りつけ、真っ赤な顔のまま外へ駆け出していく。
秉核は蹴られた足をさすりながら、心の中でこっそり笑った。
「思春期の少年少女はやはり面の皮が薄い。一族の年長者たちの前では敵わなかったが、学校ではまだ早いな。ちくしょう、この小娘の蹴りは本当に痛い」
そう言って、すぐに消しゴムの能力で、ふくらはぎのあざを時間ごと巻き戻して消した。
……
璃韻が去った後、クラスの雰囲気は少し変わっていた。
ヘイグスだけがやや気まずそうで、あとの少年少女たちはもうゴシップ話に花を咲かせている。
地球の学校と同じで、退屈で抑圧的な学習環境ほど、恋愛話などで気分転換をしたがるものだ。
第三組と第二組のどちらが強いかなどという話題は、とっくにどこかへ脱線していた。
気まずそうなカイスに向かって、秉核は言った。
「私の姪はとてもわがままでしてね。家ではなかなか言うことを聞かせられません。どうか、閣下、彼女のわがままを大目に見てやってください」
カイスは慌てて手を振った。
「とんでもない、とんでもない。お宅の姪御さんはただ活発なだけですよ」
秉の心は得意で満ちていた。璃韻が教室から逃げ出して主導権を放棄したことで、学校での「彼女の叔父」という立場は固まった。これから先、璃韻が反抗を続けても、たとえ後で彼女の前で負けることがあっても、周囲の目には年長者の寛大な譲歩と映るだろう。
……
一矢報いることに成功した秉は、その日一日ずっとご機嫌だった。
昼食には普段より大盛りを二杯も食べた。
もちろん、そんな学校生活のささやかな楽しみも、あっという間に薄味の卵スープのように色あせてしまった。
それからの数ヶ月、秉は学校の個室自習室で、大量の木材と電線を抱え込んで自分の学習に没頭した。
世界が鉄の時代に入ったとはいえ、木材はまだまだ十分に役に立つ素材だった。
木材は金属材料よりも加工しやすいからだ。
基礎的な機械学では、木で寸法比どおりの機械構造を作ることが、初心者にとって機械システムの理解を助ける。
機械が立体的に動く構造図を頭の中で思い描く習慣を養うのにも便利だった。
機械学は多くの記憶を呼び覚ましたが、それらは断片的なものだった。秉核は一からやり直すことに決め、系統的な学習を通じて乱雑な記憶をつなぎ合わせ、より多くの記憶情報が得られるかどうかを確かめようとした。
臨時の実験室で木材を削りながら、秉核は小声でぶつぶつ言った。「まず思考の型を身につけて、それからまとめた経験をもとに法脈を構築するんだ。法脈の構築であの天才(璃韻)に劣っているのは、決して頭が悪いからじゃない。考えすぎて、疑いすぎて、質問しすぎているからだ」――秉核は言い訳をしていた。
ここ数年うまくいかなかったことへの、言い訳である。
もちろん、数ヶ月にわたって毎日のように積み上がる木屑と、ほとんど失敗作と言っていい機械伝動構造の数々を目の前にして、秉核はようやく機械師という職業と真剣に向き合い始めた。




