帝都に着いたばかり その三
汽車の中では、秉核が自らコフィの守護騎士になると宣言し、場の空気をひどく気まずいものにしていた。
しかし龍・コフィーは不満を抱くどころか、秉核が貴族の誓約を交わしたと決めつけた。そして傍らの家臣に剣を抜かせ、挑戦の構えを取らせて、それを既成事実にしようとした。
そして傍らの家臣に剣を抜かせ、挑戦の構えを取らせて、それを既成事実にしようとした。
コフィーにとって、自分を守ろうとする騎士が貴族であることは、どんな高価な装飾品よりも身分を語るものだった。秉核は、自ら進んでやってきた引き立て役に過ぎない。
秉核は、自ら進んでやってきた引き立て役に過ぎない。
……
そして今、憲兵の手振りに視線を追って、秉核はようやく気づいた。高架橋に停車している馬車の列は、それぞれ違っている。最前列には華麗な馬車が、後方には質素な馬車が並んでいた。橋の下で列を作る若者たちを思い浮かべ、秉核ははたと悟る。
この橋の上の馬車も先着順で自由に乗れるわけではなく、明確な順序があるのだと。制度と階級が、この世界の隅々にまで浸透しているのだ。
高架橋に停車している馬車の列は、それぞれ違っている。最前列には華麗な馬車が、後方には質素な馬車が並んでいた。
橋の下で列を作る若者たちを思い浮かべ、秉核ははたと悟る。
この橋の上の馬車も先着順で自由に乗れるわけではなく、明確な順序があるのだと。
制度と階級が、この世界の隅々にまで浸透しているのだ。
秉核とコフィー、それに従者たちは最初の馬車に乗り込んだ。ステンレス製の骨組みに白い陶磁器の外装、銀の房飾りが鎖で飾られている。隊列の中で最も豪華な車両であり、制度上、乗ることが許された車だった。
ステンレス製の骨組みに白い陶磁器の外装、銀の房飾りが鎖で飾られている。
隊列の中で最も豪華な車両であり、制度上、乗ることが許された車だった。
……
乗り込んで席に着こうとすると、車内の者たちが一斉に秉核へ視線を向けた。コフィーの隣の席は空いており、誰もがそこは秉核の席だと考えているようだった。
コフィーの隣の席は空いており、誰もがそこは秉核の席だと考えているようだった。
秉核はぽかんとして、もとからコフィーの側にいた騎士を見た。その騎士も秉核を見つめ返し、しばらく二人で目をぱちくりさせていたが、やがて仕方なさそうに近づき、秉核に小声で言った。「秉核様、あなたはもう殿下の守護騎士です。おそばに付き添うべきです」
その騎士も秉核を見つめ返し、しばらく二人で目をぱちくりさせていた。
やがて仕方なさそうに近づき、秉核に小声で言った。
「秉核様、あなたはもう殿下の守護騎士です。おそばに付き添うべきです」
秉核は一瞬呆然として、コフィーを見た。コフィーは指先で軽く机を叩きながら、窓の外を見つめている。何も言わないが、横目では秉核を追っていた。
コフィーは指先で軽く机を叩きながら、窓の外を見つめている。
何も言わないが、横目では秉核を追っていた。
秉核は少し躊躇してから、コフィーの隣の席へ移った。だが重心は無意識に片方へ偏り、すぐに自分が照れているのだと気づく。「まさか、俺は照れてるのか?」心の中でそう呟いた。
だが重心は無意識に片方へ偏り、すぐに自分が照れているのだと気づく。
「まさか、俺は照れてるのか?」
心の中でそう呟いた。
コフィーは窓の外から視線を戻し、秉核に言った。「秉核、あなたは帝都が初めてなの?」
「秉核、あなたは帝都が初めてなの?」
秉核がうなずくと、コフィーは続けた。「あなた、帝都にすごく興味があるみたいね。何か考えでもあるの?」
「あなた、帝都にすごく興味があるみたいね。何か考えでもあるの?」
少し考え込んでから、秉核は尋ねた。「殿下、貴族の身分は、帝都ではそれほど重要なのですか?」
「殿下、貴族の身分は、帝都ではそれほど重要なのですか?」
車内の空気が一瞬止まり、皆の表情が奇妙になった。コフィーは髪をなめらかな肩にかけると、微笑んだ。「核、あなたは本当に面白い人ね。貴族はこの帝国の実質なのよ。どんな貴族になりたいの?」(貴族は帝都だけでなく、どこでも重要な存在だ)
コフィーは髪をなめらかな肩にかけると、微笑んだ。
「核、あなたは本当に面白い人ね。貴族はこの帝国の実質なのよ。どんな貴族になりたいの?」
(貴族は帝都だけでなく、どこでも重要な存在だ)
秉核は一瞬戸惑い、うなずきかけたが、突然ある記憶が脳裏をよぎった。ぼんやりとした意識の中に、『民は貴く、社稷はこれに次ぎ、君は軽し』という言葉が浮かぶ。秉核は我ながら驚いたが、コフィーの問いに、その言葉を答えることはしなかった。
だが突然ある記憶が脳裏をよぎった。
ぼんやりとした意識の中に、『民は貴く、社稷はこれに次ぎ、君は軽し』という言葉が浮かぶ。
秉核は我ながら驚いたが、コフィーの問いに、その言葉を答えることはしなかった。
代わりに、彼は無難な答えを返した。「私は民衆に支持される貴族になりたいです」
「私は民衆に支持される貴族になりたいです」
コフィは青い瞳で秉核を見つめ、淡々と言った。「あなたは優しい人ですね」そして話を変え、平然と言い放つ。「とても無邪気でもある」
「あなたは優しい人ですね」
そして話を変え、平然と言い放つ。
「とても無邪気でもある」
秉核はうなだれ、すぐに認めた。「その通りです。私はいつも、浅はかすぎるのかもしれません」
「その通りです。私はいつも、浅はかすぎるのかもしれません」
しかし頭を下げたまま、秉核は口では謝罪しながら、心の内では先ほどぼんやりと浮かんだ無数の記憶が渦を巻き、別の理性的な思考を呼び起こしていた。
秉核は心の中でつぶやいた。「この世界は、何かがおかしい」
「この世界は、何かがおかしい」




