序章 その二
視点は高次元空間へと移る。
ここには強大な知的存在が蟠踞していた。その核は、多様な可能性に満ちた壮大な文明圏にある。その形態は、低次元では説明し得ない。
だが、その蟠踞する時空領域からは、勇気や忍耐、夢といった、生命の意義に関わる一連の現象が湧き出していた。
複雑な思考を持つ存在が、これらの極めて重要な意義を備えてこそ、初めて生命と呼ぶに値する。
高次元における生命の形態は連続的であり、複数の時間軸に広がる。異なる時点で接触することで、その時点の低次元で知覚できる知的存在となる。
ただし、これらの低次元の個体は記憶が単純すぎ、低次元に限られた知覚しか持たない。
そのため互いの共通記憶を持たず、自分自身ですら各々を識別できない。
低次元では、これらの個体は勇気が爆発したり忍耐が現れたりするような特別な瞬間にのみ、互いに共鳴し感動し合う。
ここは肥沃な時空領域で、時間の下流において無限の高次元知恵を育む場所である。
……
ここには戦いがある。ほとんどの戦いは、位面上の変数を略奪するため、つまり一時的に低次元に束縛された知性を求めて行われる。
最も豊かな時空領域だけに、戦いは絶えない。
この時、非常に高い知性体がここに巣くっている。
これらの知性体は、極めて凶悪な敵と戦っている。その敵は、高次元知性の低次元情報生命源を引き裂いていく。
一方、高次元知性生命は、核心から湧き出る自我を低次元上で集束させ、この凶悪な個体の内部へと進入していく。
この極悪非道な存在は、そうした集束攻撃に直面した。殺戮だけを許す閉鎖空間を懸命に作り出し、変数の集束を封鎖し、破壊しようとする。一部の変数は集束から離脱し、その空間でいかなる倫理観も失った。殺戮思考だけが残った低次元形態へと変貌した。多くの変数が、欲望の集合体である殺戮思考へと変わると、そこから知性は消え去った。
しかし一部の変数は、この極悪非道な存在を直接的に炎上させ、低次元において果てしない探求の勇気と不屈の堅持を爆発させた。
そして遂には再び強力な高次元思考体へと変貌し、高次元で自己と合流することに成功した。
これらの小さな空間で苦闘し、低次元で束の間生きて争い合う物語を、本書は語らない。
本書が語るのは、極悪非道な存在によって肥沃な時空領域から引きずり出され、亜廃墟時空領域に放り込まれた小さな変数たちである。
ほとんどの小さな変数たちは枷をはめられ、亜廃墟で冷却され、最終的に計算と制御へと帰する。
枷は必要不可欠だ。
枷がなければ、これらの小さな変数たちは亜廃墟領域の低次元ステージでは生き延びられない。
最終的には、大きな流れに従って肥沃な領域へと戻ってしまう。
……
常秉の記憶が徐々によみがえる。
正確に言えば、奇妙な夢のような感覚だった。
さまざまな知覚はあるのに、自分の身体には触れられない。ただ巨大な光の球が目の前にあるだけだ。
そして自分は、どうやらこの光の玉と数えきれないほど複雑な縁があったらしい。
ただ、それを突然忘れてしまっていた。
常秉は、このとき自分の記憶の大部分が失われていることに気づいた。
「あなたは生命の意味を知り続けたいですか」
光の玉が問いかけた。
常秉は一瞬ためらった。奇妙な質問だ。
遠い昔に聞いたことがあるような気もする。だが自分にあるのは、病床で蝉を見る前の記憶だけだった。
しかし、何か漠然とした感覚が、常秉にほとんど考える間もなくこう言わせた。
「生命の意味について、私は他人に聞いたことはない。『知っている』とも『知らない』とも他人に言ったことはない。なぜなら、私はずっと期待しているからだ。期待のなかで出会い、出会いのなかで解決し、解決した後また期待する。それが生命だ」
「あなたは再生できる。このような再生を期待しますか」
光の玉は言った。
常秉は答えた。
「もちろん期待します」
「ふむ、あなたは特異な才能を携えて転生することができます。選択を行ってください」
光球は言った。
大量の情報が常秉の脳裏に浮かんだ。彼はその記憶に愕然とした。
これらの記憶は、あたかも元から自分の記憶の一部であったかのようだった。
自分はこの情報を無数に読み込み、深く考察してきた。
しかし以前は遮断されていたようで、ついさっきまで自分はまるで知らなかったかのようだ。
……
エネルギー系
虚空エネルギー――虚空からエネルギーを汲み取り、直接的に敵を破壊する。(超越的な破壊力を持ち、道理が通じない。全ての利用可能な条件を封じられても、空間からエネルギーを汲み取ることができる)
エネルギー吸収――対象からエネルギーを抽出する。(この能力には複数の種類がある。太陽光からエネルギーを吸収する、樹木や草からエネルギーを吸収するなど。敵を破壊することも、自身の身体の損傷を修復することも可能で、非常に柔軟性が高い)
……
空間系
空間跳躍(空間移動能力。逃げるのに最適)
空間収納(この能力は空間を複数のモジュールに分割し、異なる物質を収納できる。一つのモジュールには焼けた鉄を、別のモジュールには冷たい氷を保存できる。非常に柔軟な能力)
空間商店(空間商人の能力。末世ではカップ麺一つが法外な値で交換できる。末世で誰も欲しがらない金のアクセサリーなら、簡単に拾える)
……
物質系
創造(空間から直接、物質を創り出す。この能力の持ち主と、生産力や霊薬、武器で競っても無駄だ。まったくのチートだ)
物質再構成(広範囲の粒子を再構成する能力。炭水化物をケーキに変えたり、肉塊に変えたりできる)
……
……
数万の能力が常秉の記憶に浮かび上がった。
そのなかで自分は、かつて非常に長い時間をかけてこれらのことを研究していたように思えた。
そして括弧のなかの評価について、常秉は、多くのものが自分自身による評価であり、また多くのものが自分が聞いた評価だと感じた。
いったいいつこれらの評価を下し、いつこれらの評価を聞いたのか。記憶のなかに再び曖昧さが現れた。
どう考えても、はっきりとは思い出せなかった。
転生し、そして特典をもらう。本来ならとても嬉しいはずのことなのに、常秉はなぜか、漠然とした戸惑いを感じていた。




