苛立ちの果てに正気を失う その四
追い払われて離れたはずの璃韻が、小股で素早く後を追ってきたのだ。
璃韻が秉核の背後に近づき、疑わしげな表情で言った。「あなた、急いで讃えたいんじゃなかったの?なんで後ろの車両に向かってるの?」突然、声を弾ませて続けた。「ああ、わかった。あなたはただ遠くから悲しんでるだけで、正面からは言えないチュウチュウ虫なのね」(夏の草むらでは虫の声がよく響くが、近づくと鳴き止むため、この世界ではそんな人々を形容するのに使われる。)
「あなた、急いで讃えたいんじゃなかったの?なんで後ろの車両に向かってるの?」
突然、声を弾ませて続けた。
「ああ、わかった。あなたはただ遠くから悲しんでるだけで、正面からは言えないチュウチュウ虫なのね」
(夏の草むらでは虫の声がよく響くが、近づくと鳴き止むため、この世界ではそんな人々を形容するのに使われる。)
秉核の顔が曇った。
数分後、車内で秉核は龍・コフィ公女と対面した。公女はすらりとした体つきで、資料によれば十二歳。だが今はベールを被り、青と白のロングドレスと白い長靴を身につけており、ブーツには宝石が散りばめられていた。
公女はすらりとした体つきで、資料によれば十二歳。
だが今はベールを被り、青と白のロングドレスと白い長靴を身につけている。
ブーツには宝石が散りばめられていた。
秉核は背後から注がれる値踏みするような視線を感じ、深く息を吸い込み、無理やり演技を始めた。
無理やり演技を始めた。
秉核はまっすぐ公女の前へ進み、護衛が止めようとした瞬間、片膝をついて大声で讃えた。「私が夢にまで見た女神よ、神々に感謝します。ついに、太陽も霞むあなたの御姿を拝める日が来ました。あなたの声は水晶のように美しい。どうか、私があなたの傍らで剣を持ち、永遠に守ることをお許しください」
護衛が止めようとした瞬間、片膝をついた。
大声で讃えた。
「私が夢にまで見た女神よ、神々に感謝します。ついに、太陽も霞むあなたの御姿を拝める日が来ました。あなたの声は水晶のように美しい。どうか、私があなたの傍らで剣を持ち、永遠に守ることをお許しください」
沈黙。まる十秒続く、気まずい沈黙。そのなかで、秉核の背中は冷や汗でびっしょりだった。
まる十秒続く、気まずい沈黙。
そのなかで、秉核の背中は冷や汗でびっしょりだった。
……
しかしその後、ベールをまとった公女はためらいがちに尋ねた。「あの、あなたは?」
「あの、あなたは?」
「ゴクリ」と秉核が唾を飲み込むと、背後でドアが静かに閉まる音がした。璃韻は、間違えて部屋に入った見知らぬ通行人のように、その場を去っていった。
と秉核が唾を飲み込むと、背後でドアが静かに閉まる音がした。
璃韻は、間違えて部屋に入った見知らぬ通行人のように、その場を去っていった。
……
秉核は顔を上げ、乾いた笑いを浮かべながら言った。「あのさ、さっきの台詞はオペラの脚本からパクって読んだだけなんだ。俺って、どう挨拶すればいいかわからなくてさ。出だしが気に入らなかったら、聞かなかったことにしてくれない?あのさ、もう行ってもいいかな?」
「あのさ、さっきの台詞はオペラの脚本からパクって読んだだけなんだ。俺って、どう挨拶すればいいかわからなくてさ。出だしが気に入らなかったら、聞かなかったことにしてくれない?あのさ、もう行ってもいいかな?」
周囲から「フゥー」と息を吸い込む音が次々と聞こえてきた。笑いをこらえる音だ。護衛の騎士たちやメイドたちは、必死に真面目な顔を保っていた。
笑いをこらえる音だ。
護衛の騎士たちやメイドたちは、必死に真面目な顔を保っていた。
椅子に座った公女の表情は見えなかったが、上下する胸元から笑っていることは分かった。しばらくして、公女は笑いをこらえて真面目な顔をつくり、言った。「銃焰秉核閣下、貴族として、あなたの発言には責任が伴います。剣を持って守ると約束しておきながら、簡単に撤回するとは、栄誉を侮辱しているのですか」
だが上下する胸元から笑っていることは分かった。
しばらくして、公女は笑いをこらえて真面目な顔をつくり、言った。
「銃焰・秉核閣下、貴族として、あなたの発言には責任が伴います。剣を持って守ると約束しておきながら、簡単に撤回するとは、栄誉を侮辱しているのですか」
そばにいた護衛の騎士が前に進み出て、少しだけ剣を抜いた。決闘の構えである。しかし、その顔にはからかいの笑みが浮かんでいた。
決闘の構えである。
しかし、その顔にはからかいの笑みが浮かんでいた。
秉核は少し間を置き、すぐに手を振りながら言った。「そんなことあるはずがないでしょう?あなたの守護騎士であることは、私の光栄です」秉核は心の中で呟いた。「くそっ、なぜあのガキと話すたびに、私の知性は半分になってしまうんだ」
すぐに手を振りながら言った。
「そんなことあるはずがないでしょう?あなたの守護騎士であることは、私の光栄です」
秉核は心の中で呟いた。
「くそっ、なぜあのガキと話すたびに、私の知性は半分になってしまうんだ」




