知謀と樹信 その一
聖ソークの黒海地区にある銃焰領地で、一人の高階兵士が銃焰伯爵の領地へ駆けつけた。この使者は、皇室の印章が刻まれた封蝋で封じられた手紙を銃焰伯爵に手渡す。銃焰伯爵はその手紙を見て一瞬たじろいだ。
極秘文書であり、決して第三者に漏らしてはならないものだったからだ。
この時代、各大帝国は自国の重要貴族の領地に電報施設を設置しており、電報の内容は電報室で解読された後、上層部へ渡される。これは高層の間で通用する通信手段の一つである。
一方、伝書鳩と訓練された鷹は、各軍団の間の通信手段として用いられていた。
しかし帝国の上層部には、今も使者を派遣して手紙を届ける伝統がある。
高位の兵士が使者となって、帝国貴族の間で機密情報を伝える手段となっているのだ。
こうした高位の兵士は、受取人に会えない場合には手紙をそのまま破棄し、内容を漏らすことはない。そしてこの使者たちもまた、帝国貴族の腹心であった。
銃焰伯爵は使者を丁重にもてなした後、一人で書斎へ向かった。
赤い木の扉が閉じられると、下りてきた金属のシャッターが塞ぎ、同時にカーテンも閉められた。
こうしてこの部屋は、完全に防音された密室となった。
銃焰思芬は手紙を開け、その内容を見て顔色を変えた。そして部屋を出ると、伝令鳩を飛ばして長男に急ぎ戻るよう伝えさせた。
十八時間後、銃焰ロス(璃韻の父親)は慌ただしく戻ってきた。
彼が受け取った手紙には、ただ「家に用事」とだけ書かれていた。
その上に赤い丸が描かれていた。この赤い丸は、用事がひどく急を要することを示している。
ロスが家族の書斎の前に着くと、そこに老執事が立っていた。この老執事は家族が育てた中位の兵士で、伯爵が絶対の信頼を寄せる人物であった。
書斎の外の執事が小声で言った。
「大少爺、ご主人がずっとお待ちです」
銃焰ロスはうなずき、中へと入っていった。
そばにいた執事はドアを閉め、入り口をしっかりと守る。
書斎の中の思芬伯爵は長男を見上げ、深く息を吐いて言った。「今、小秉核の消息が入った」
ロスは一瞬言葉に詰まった。まさかこの件だとは思わなかったのだ。一年にわたる捜索の末、銃焰家の多くは成果を得られず、秉核が見つかる望みを完全に捨てていた。そこへ突然の知らせが届き、ロスの思考は追いつかなかった。
ロスは詰め寄った。
「彼はどこに隠れていたんだ?それで、捕まえたのか?」
伯爵は首を横に振り、机の上の手紙を指差して、長男に読むよう促した。
ロスは訝しげに手紙を取り上げたが、顔色を急変させて言った。
「オーカ?どうしてあっちに行ったんだ!え、選王だと!?」
数ヶ月前、秉核が蘇塔の一行に従ってオークリーへ来た時、すでに聖ソークの密偵に気づかれていた。聖ソークの密偵は秉核の肖像画を本国へ送っていた。
聖ソーク国内で情報を担っていたのは、ほかならぬ許令である。この憲兵総署署長は昨年、秉核の脱走に手を焼き、秉核の写真を数百回も見せられていた。
そして今回、オーク王選の隊伍の護衛に関する肖像画が送られてくると、彼は一目でその中の人物の正体を確信した。こんなに若く、こんなに似ていて、しかも機械制御者とは。
場面は現在に戻る。ロスは、聖ソーク皇室が表面上は事実を伝えつつ、実際には詰問してくる手紙を読み終えた。
ロスは衝撃のうちに顔を上げ、「支柱を見るような」眼差しで父親を見た。
銃焰思芬は感嘆混じりに言った。
「資料には、彼が機械制御者に昇格したと書いてあるが、本当かどうかは分からんな」
ロスはぽかんとして、父親の関心が少し要点からずれているように感じた。
ロスは心の中で思った。
『弟が国外に出てオーカ人の側に立ったことで、皇帝から問い合わせの手紙まで届いている。まず家族が国内で受ける危機に対処すべきではないのか?
父上はなぜ、弟が機械制御者かどうかなどを気にしているのか。本末転倒ではないか』
しかし銃焰ロスは、伯爵の言葉に沿ってこう返した。
「四男はまだ今年成人していないでしょう。機械制御者という情報も、必ずしも真実とは限りません」
思芬は顔を上げてロスを見つめ、深く息を吐いて言った。
「彼の血脈には、優れた法脈を形成する利点がある」
銃焰・思芬の推測は誤りだった。実際、秉核は自身の血脈をまったく覚醒させていなかった。髪の色に隠れた遺伝子が現れ始めた以外、血脈などというものは秉核にはまったく感じられなかった。秉核はチート機能を使うのに忙しく、血脈を刺激する必要があることなど気づきもしなかった。
たとえば二十一世紀に二・三メートルの身長という利点があっても、二千億の資産を相続できるのなら、バスケットボールの潜在能力を掘り起こす必要があるだろうか?
一方、情報量の多い父の告白を聞いたロスは表情を硬くし、家族の一部の者の噂を思い浮かべた。
銃焰・思芬は彼が勝手に推測するのを許さなかった。「銃焰秉核は私の息子であり、お前の実の弟だ。この点に疑いはない。この中の内容については、お前が当主になった時に話そう」
ロスは頭を下げて言った。
「はい、父上。ただ、この件はどうすればよろしいでしょうか?」
思芬は言った。「この件ではまず皇帝陛下に態度を示さねばならない。我々はこの件について何も知らず、監督不行き届きが原因だったと表明するのだ。二股をかけることは、上位者にとって最も忌み嫌われる行為だ。秉核については、全力で連れ戻す必要がある」
ロスは頷き、疑問を抱いたように尋ねた。「もし銃焰秉核を連れ戻せなかった場合は?」
思芬は目を閉じ、片手を壁の大砲のレリーフに当てた。手のひらを下へ滑らせると、指は思わず大砲の砲口を押さえていた。
思芬は深く息を吐いて言った。「|聖ソーク家が大陸の中央で二千年もの間、倒れずにいられるのは、その冷酷さゆえだ。私たちは何も知らないふりをして、ただ秉核がオーカで無事に余生を過ごせる幸運を願うしかない」
銃焰思芬の顔には諦めの色が浮かんでいた。
大名家の当主としての責任と、老いた父親としての愛情が、今まさに衝突していた。
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