信頼を築く その一
カールは今年十七歳。まだ何にでも好奇心を向ける年頃だった。
工場の空き地で、秉核は長さ三十メートルの水素飛行船を宙に浮かべた。
二十キログラムのバックパック型無線装置で操る。
八百メートルの高さからのデモンストレーションだった。
この王選者の注意は、すっかりこの新奇なものに引きつけられていた。昨日空へ上がった花火についても、カルは簡単に尋ねただけだった。ただのロケット弾の試作品だと知ると、それ以上は問いたださなかった。
飛行船の性能を確かめた後、カルは軍事貴族らしく、その目は鋭かった。
この飛行船がカメラを載せた偵察機能や、爆弾投下の攻撃機能を備えていると見抜いたのだった。
カルは大陸の軍事装備に詳しかった。だがこれまでこのような兵器を聞いたことがなかった。新しく、軍事革命を引き起こしかねないものだと確信した。
もちろん、大陸の新たな軍事装備が機械制御者と機械師の才能にかかっていることも、カルは知っていた。
そのため、カルは秉核に強い興味を抱いた。
礼儀正しく賢者を敬う彼は、秉核の好みを熱心に尋ね、さらに招待の意を伝えてきた。
工場の入口で、カルは胸の家紋のバッジを秉核に手渡した。
「融鋼の機械制御者よ、今日お会いできて本当に幸運です。この王選が終わった後も、長くお会いできればと願っております」
カルは招待状を差し出した。秉核は微笑んで頷いた。
「機会があれば必ず貴家へ伺います」
そう答えながら、心の中では「その機会はまずないだろうが」とつぶやいていた。
群騰・カルを追い払うと、秉核はほっと一息ついた。どうやら昨日の花火事件はうまく切り抜けられたようだ。秉核は空中飛行艇のパラメーターを心の中で繰り返す。飛行高度八百メートル、積載量六十キロ、基地局との通信範囲内で二十キロの巡航が可能。だが実際には、秉核の心には別の数値があった。飛行高度千メートル、通信範囲八十キロ。(注。これは秉核の現在の技術基盤で達成可能な数値である)
秉核は化学工場(作業場)から出て、自分の部屋のドアを開けた。またもや比索が、勝手に自分が作った模型を手に取っていじっているところだった。
これらの模型は秉核が退屈しのぎに作った武器の模型で、ガラスケースの中に並べてあった。戦艦の模型、戦車の模型、それに最新式の飛行船の模型まである。まるで前世でフィギュアを集めていた頃のようだ。秉核は念入りに封印を貼り、自分の棚に収めていた。
そして今、両側に機銃を備えたその飛行船模型から、比索は機銃のパーツを一つ取り外した。
手に取ってじっくり眺めていた。
「トントントン」
秉核はドアを叩き、自分の物を元に戻すよう促す。
しかし比索は機銃のパーツを模型に戻しただけで、元の位置には戻さなかった。
軽くため息をついて言う。
「ようやくあの野郎を送り出したか」
秉核は答えた。
「ああ、もう大丈夫だよ。君たちは大げさすぎるんだ。ほら、何も大したことじゃないだろう!」
比索は秉核を見て言った。
「どうして大袈裟だなんて言えるんだ」
彼は秉核の飛行船モデルを掲げた。
「俺の天才機械技師さん、君がどれほど素晴らしいものを作ったか分かってないのか?」
大げさな口調だった。
同時に比索は悔しそうに言う。
「君がこんなものを作るつもりだと知っていたら、オークリー人の審査に対応させたりなんかしなかったのに」
秉核が即席で最初の水素飛行船を作り上げたのは、ついさっきのことだった。だから城透と比索は、秉核がカールと一緒に飛行船を飛ばすのを見て、はじめて秉核が工場で新しいものを設計していたことを知ったのだ。
秉核が持ち出した空中飛行船は、城透の計画にはなかったものだった。十キロの範囲の地面を空から制御できるこの装置は、城透の計画が求める範囲をはるかに超えている。理性的に言えば、城透の計画が成功する確率をより確実にしたとも言えた。
しかし城透は、何かを得てはまた失うような、そんな漠然とした心持ちを抱いていた。秉核の才能が貴重であればあるほど、この異国の地で城透は、貴重な磁器を手にした給仕人のように、何かを台無しにしてしまうのではないかと常に気を揉んでいた。そのため城透は比索に秉核を守るよう命じた。
秉核はそんな比索の笑顔を見て、何も言わなかった。
秉核が黙り込むと、比索は乾いた笑いを浮かべて言った。
「君がこんなに静かだと、どうも落ち着かないな」
秉核が口を開いた。
「無線の制御コードが必要なのか?」
比索は「やはり君は察しがいい」という笑みを浮かべ、頷きながら言った。
「ああ、各飛行船の無線制御システムには独自の暗号化機能がある。君の設計は本当に天才的だ」
秉核は少し間を置く。
「渡してもいいが、ただし……」
秉核は湖のように静かな瞳で比索を見つめた。
ゆっくりと問いかけた。
「僕がこうすることを、後で後悔しないだろうか?」
秉核の視線を受け止めた比索の笑顔は少し硬かった。それでも無理に笑みを作って「融鋼、君は?」と言った。
だが、口にした言葉が嗄れていることに気づく。
特に気まずさは感じていなかったが。
秉核は厳しい表情を笑顔に変えて言った。
「後悔するわけないだろう?よし、コードは君にやる。ただし金は一銭たりとも減らせないぞ」
比索は胸を叩き、秉核を指差して言った。
「てっきり君が渡さないのかと思ったよ。びっくりさせないでくれよ。よし、よし、君の言葉を聞いて安心した。俺は先に行くよ。ああ、そうだ、あのカールのことだけど、君、彼とはあまり近づかない方がいい。彼の君を見る目は露骨な占有欲だぞ。さっきは彼が君を食い物にしそうで心配だったんだ」
秉核はうんざりしたように手を振った。
「早く帰れ。」
比索は笑いながら部屋の窓から飛び降り、秉核が作った飛行船モデルもついでに持ち去っていった。
十分後。秉核は廊下から大量の鋼材を引き出し、部屋の窓を防犯窓に溶接しはじめた。
すべてを終えると、部屋に座った秉核は飾り棚の置物が一つ欠けたスペースを見つめ、ため息をついた。
作品が消えたことを嘆いているようでもあり、また別の何かを嘆いていた。
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