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帰向  作者: 凛光穂
第四巻 赤子の純を欺くな、謀を弄び信を失い、良き人を測り難し

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成功の喜びと良心の責務 その二

 そのころ、列車の中間の車両では。


 この車両は非常に豪華に設えられ、テーブル、絨毯、書斎、ワインラックまで揃っていた。両側の窓から流れていく野原が見えなければ、ここを快適な書斎と勘違いしてしまうほどだ。この車両の主人は蘇塔(スータ)。部屋の中では城透(ジョウトウ)が蘇塔(スータ)に挨拶をしていた。


 城透(ジョウトウ)が口を開いた。

「殿下、我々はすでにヴィクラに到着しました。今後の数日間、準備を整えてください」


 蘇塔(スータ)は答えた。

「ご忠告ありがとうございます。関連する礼儀作法の流れは、すでに把握しております」


 城透(ジョウトウ)はうなずいた。


 蘇塔(スータ)が尋ねた。「ところで、秉核(ヘイカク)の様子はいかがですか?最近、彼を外出禁止にされたと聞きましたが」


 城透(ジョウトウ)は答えた。

「ただ行動を制限しているだけで、到着次第、解除します」


 蘇塔(スータ)は言った。

「それでは、彼を前もって解放していただけませんか」


 城透(ジョウトウ)は笑った。

「元々、長期にわたって拘束するつもりはありませんでした。殿下がおっしゃるなら、今すぐにでも――ええ?」


 城透(ジョウトウ)は窓の外を見やった。狂ったように駆け回る牛たちを目にして、奇妙な表情を浮かべる。


 蒸気時代の列車はそれほど速くない。

 野原を疾走するときで最大時速六十キロ。都市に近づけば時速三十キロにまで落ちる。


 一刻後


 列車はヴィクラに近づいたところで停まらざるを得なくなった。

 二十頭の死骸が線路に横たわり、血なまぐさい光景が広がっている。

 列車にも、牛の角がぶつかった跡が残っていた。


 そしてすべての元凶である秉核(ヘイカク)は車内でおとなしく座り、何事もなかったかのように嘆いてみせた。

「こんなに多くの家畜が死んでしまうとは、国の法律が不十分ですね。線路の両側で牛を放牧するなんて」


 比索(ビソ)は意味深に秉核(ヘイカク)を見て言った。「線路沿いの目撃者の話によると、誰かが列車の屋根で赤い布を振っていたそうです」


 秉核(ヘイカク)は白い手拭いで手を拭いながら言った。

「そうか?誰だかはっきり見たのか?捕まえたら必ず重罰だ。必ず謹慎させてやる」


「はは、秉核様(ヘイカク様)、今は誰もあなたを指摘できませんが、皆わかっていますよ。この車内でそんなことをするのが誰かなんて」

 比索は笑った。


 ガチャン、と秉核(ヘイカク)はカップをテーブルに置き、痛恨の極みといった表情で言った。

「偏見だ!これが人間の原罪だ!」


 二十分後、秉核(ヘイカク)は冷静ではいられなくなった。


 駆けつけた農場主は馬から降り、傍らに一列に跪く者たちを見て激怒した。

 鞭を手に取ると、地面に跪く奴隷たちを打ち始める。


「この卑しい奴め!牛の番もまともにできんのか!牛の番もまともにできんのか!」


 水に濡らした鞭は威力が凄まじい。炸裂するような音が響くたび、急いで駆け下りてきた秉核(ヘイカク)は身を震わせた。秉核(ヘイカク)は足を速めて走り寄り、この農場主貴族をなんとか止めようとした。

「もういい、もう打つのをやめてください。牛は一頭いくらですか、私が買います」


 しかし秉核(ヘイカク)の声が小さかったのか、農場主は相変わらず農奴を激しく打ち続けた。まるで打ち殺すまでやめないかのようだった。


 これに秉核(ヘイカク)は焦り、すぐに腰から速射銃を抜いた。「ダダダ」と農場主の足元を掃射すると、農場主は地面に坐り込んでしまった。両足の間に水たまりができたのを見て、ようやく話ができると判断した秉核(ヘイカク)は銃を収め、こう言った。(秉核(ヘイカク)がオーカ(オーカ)で調べた相場では、牛一頭五十銀貨だった。)

「七十銀貨で牛一頭を買わせてくれ。全部で二十頭、千四百銀貨だ。儲かっただろう?」


 農場主は腰を低くして言った。

「若様のご慈悲でございます」


 秉核(ヘイカク)は笑いながら言った。

「よしよし、儲かったなら、嬉しそうに笑え」


 農場主はひどく嫌らしい笑みを浮かべた。


 これを見て秉核(ヘイカク)は手を振った。秉核(ヘイカク)は傍らの兵士に向き直る。

「もういい、笑うのはやめろ」と告げた。

「牛肉を汽車に積み込め。今日はごちそうだ。何頭かはこの旦那とその下僕たちのごちそうにしておけ」


 その事件現場では、兵士たちは困り顔だったが、銃を収めて汽車に戻り始めた。

 死んだ牛を積み込む作業が始まる。貴族の一行とはいえ、肉を無駄にするほどではなかった。


 農場主はすぐさま地面に鞭を一閃させ、残忍な顔で牛を追っていた農奴たちを叱りつけた。

「まだ礼を言わないのか。若様のご慈悲だぞ」

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