蒸気暦で最強の要塞 その二
一方、列車の中では、監禁室に閉じ込められてはいても、秉核は変わらずトランシーバーで蘇塔との会話を楽しんでいた。もちろん、そのトランシーバーは秉核の手作りだ。監禁室のベッドでごろごろ転がりながら、秉核は携帯電話のようなトランシーバーを手に「つまんないよ」と蘇塔に話しかける。豪華なスイートルームの車両では、蘇塔が唇を尖らせて受話器を握りしめ、「焦らないで。もう瀾濤騎士に話しておいたから、あと数日で出してあげる。それに、これも全部あなたの自己責任よ。余計なところに出歩くから」と言った。
「どうして余計なところに出歩いたって言うんだ?まあいいや、ねえ、聞いてる?」と秉核は言った。机の上のチェス盤を前にした蘇塔は「うん、うん、あなたの番よ」と答えた。(二人は離れた場所でチェスをし、駒の動きを伝え合っていた。)
蘇塔にとって、秉核が閉じ込められたことは、かえって彼とチェスをする時間が増えることを意味していた。だから今では、秉核がもう少し長く閉じ込められていても悪くない、とさえ感じていた。
二人はチェスをしながら世間話に興じていた。
話が進むうちに、話題は要塞に移った。
秉核が蘇塔に尋ねた。
「大陸史上最強の要塞はどれだ?」
「溶鋼、上位職業に最強などない。どの戦役に参加したかで有名になる程度だ」と蘇塔は答えた。
秉核は興味をそそられ、監禁室で車の天窓を叩く手さえ幾分止まった。「聞かせてくれ」と秉核は促した。
「将軍は攻撃を主とし、将軍は城を破り軍を滅ぼす戦績で名を上げる。要塞は防御を主とし、戦いで強敵の包囲を阻んだ要塞なら、後世に名を残す」と蘇塔は語った。そして蘇塔は秉核に問い返した。
「君はどう思う?厚い城壁を持ちながら、いつも戦争の流れに従う都市が人々に尊敬されるのか。それとも、小さく城壁も低いが、何度も強敵の侵攻を阻んだ都市が人々の記憶に残るのか?」
「金陵、釣魚城」――秉核は思わずその二つの言葉を思い浮かべ、ため息をついた。
「私は後者こそ尊敬に値し、前者は他人の征服欲を掻き立てるだけだと思う」
こっそり棋譜を調べながら次の手を考えていた蘇塔は頷き、「だから君が歴史上最強の要塞はどれかと聞かれても答えられない」と返した。
「でも、私が最も尊敬する要塞は――600年前のウェスト大公、鋼巒の可軒大公だ」蘇塔の目には星が輝き、崇拝の念を込めてこの要塞の戦績を語り始めた。
蘇塔は語り出した。
「600年前、オーカー帝国はすでに台頭し、発展期にあった。鉄砲の数も大幅に増え、軍艦のトン数は1万トンに達していた」
大陸南西部のヴェストはオーカの拡張の道を阻み、戦争が始まった。
オーカ帝国は最後通牒を発すると、20個軍団の兵力を動員し、同時に海上最強の艦隊が地中海海峡を越えてヴェストへ押し寄せた。
ヴェスト大公は軍を率いて急行し、西側沿岸の丘陵地帯に先回りして防御陣地を築いた。
戦争が始まると、海上の重砲が三日三晩轟き、
陸軍部隊も幾度となく波状攻撃を仕掛けた。
丘が砲撃で4メートルも削られたにもかかわらず、ヴェスト大公の軍は依然として丘の上に陣取り、20個軍団の包囲攻撃を次々と撃退した。
秉核はそれを聞いて、すぐにある概念を思い浮かべた――反斜面だ。
山の正面が砲火に向いているのが正斜面、砲火に背を向けているのが反斜面。
砲弾の弾道は十分に曲がらず、直射であれ曲射であれ反斜面には届かない。
砲弾が山に命中しても、数万トンの砲弾を叩き込んで山の正面を草木も生えない姿に変えても無駄だ。
二百メートル以上の高さの山は、やはり二百メートル以上の高さのままだ。
そして砲撃が終わったとき、兵士たちが坑道に沿って素早く正斜面に到着すれば、
正斜面の傾斜では大部隊は展開できず、傾斜から攻め上がるのはただ斜面に死体を増やすだけだ。
塔視は憧れるような口調で続けた。
「オーカ帝国は24年間に7度の攻撃を仕掛け、2万5千の軍隊と4隻の主力艦を失った。これによりオーカ帝国は、南線への攻勢を100年間も躊躇うようになった」
(注・この戦争でオーカ帝国は高位職業者を一人も失わなかったが、あの戦略的要地にこだわるのは割に合わないと判断し、資源を北方に集中させるようになった)
これを聞いて、秉核は感心したようにうなずいた。「中流の激流を撃つとは、真の英雄だ」とつぶやいた。しかし塔視は惜しむように言った。「もし可軒大公がもう少し長生きできていたら良かったのに。残念ながら、英雄はいつも小人の妬みに遭うものだ」
秉核は驚いて尋ねた。
「どういうこと?ここには何か裏話があるのか?」
蘇塔は周りを見回し、内緒話でもするような声で言った。「可軒大公は謀殺されたのです」
秉核は、真相をつかんだと確信している蘇塔の様子をうかがい、うなずいた。
何も反論せず、信じているという態度を示した。
続いて蘇塔の話は陰謀論へと移っていった。
しかし秉核の思考はそれには追いつかず、静かに何かを考え込んでいた。




