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帰向  作者: 凛光穂
第四巻 赤子の純を欺くな、謀を弄び信を失い、良き人を測り難し

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蒸気暦で最強の要塞 その一

 |群騰ディナン(ディナン)《グントウディナン》、現オークリー大公(オークリー)の長子(職業は高位騎士)、今年53歳。直近の選王戦に参加するのは、彼の四男・群騰カール(グントウカール)である。


 この王爵はオークリー公国において数少ない明晰な人物であり、オークリーと現在の主流強国との差をはっきりと認識していたが、彼一人では国内での発言力に限界があった。


 一ヶ月前、秉核(ヘイカク)がビクリ(ビクリ)に滞在していた頃、群騰迪南(グントウテキナン)は聖ソーク(セイソーク)への訪問を命じられた。オークリー本国からの命令は、聖ソーク(セイソーク)とクリス半島の問題について協議せよというものだったが、彼は聖ソーク(セイソーク)に着いても、

 クリス半島の問題には触れなかった。


 彼は聖ソーク(セイソーク)では、過去の双方の商業貿易協定についてのみ話し合った。双方の交流は良好で、|聖ソーク(セイソーク)皇帝《聖ソークコウテイ》は彼を国宴に招き、その後、燦鴻(サンコウ)に聖ソーク(セイソーク)の軍事演習の視察を案内させた。


 波輪(ポーレン)港の東60キロにある演習場で、聖ソーク(セイソーク)帝国は地中海艦隊の巡洋艦16隻と帝国騎士団(機甲部隊)を動員して演習を行った。

 艦砲と野戦砲の射撃は数キロにわたる陣地を覆い、あたかも神々が大地を鞭打つかのようだった。

 地上の硝煙がまだ散らぬうちに、二足歩行機甲部隊がクレーターだらけの地面を前進する。

 機関銃と突撃砲が前方に十字砲火を展開した。


 しかし|ディナン(ディナン)世子《ディナンセイシ》は顔色も変えずにこの軍事演習を観覧し、聖ソーク(セイソーク)の燦鴻(サンコウ)とともに、演習における各陣営の優劣について落ち着いて論じ合った。


 聖ソーク(セイソーク)帝国への訪問から帰国した際、聖ソーク(セイソーク)で不遜でも卑屈でもなかった世子は、列車で帰国の途につく間、一言も発せず沈黙を守った。しかし帰国後、彼は10万字にも及ぶ報告書を書き、インクを3本も使い切っている。ところがその報告書は、提出するとすぐに大公に突き返された。報告書はほとんど新品のままで、最後のページにだけ乱雑に『拝見』と書かれていた。明らかにオークリー大公(オークリー)は読んでおらず、しかもオークリー大公(オークリー)は、|群騰ディナン(ディナン)《グントウディナン》が訪問中に『オークリーのクリス半島に対する主張』を聖ソーク(セイソーク)にはっきりと表明しなかったことに不満を抱いていた。


 群騰迪南(グントウテキナン)が帰国した後、オークリー大公(オークリー)は彼に会おうともせず、非常に冷淡な態度を示した。選王式まであと二十七日という頃、群騰迪南(グントウテキナン)は自分の書斎で息子と会う約束をした。

 書斎の床には白い毛皮の敷物が敷かれ、それは北方の白狐の皮を縫い合わせたものだった。

 壁には黄金の弓矢が掛かり、部屋は蝋燭の灯で照らされ、水晶のランプシェードの中で明るく輝いている。

 そしてその華麗な部屋の中に、すらりと颯爽とした若者が立っていた。


 若きカールはまだ十七歳で、今年の三月に騎士に昇格したところだ。基礎がしっかりしているため、将来は将軍になる可能性が高い。凛々しい気質が眉間に宿っている。|カルディナン(ディナン)《カルディナン》はこの息子を見て、顔の憂いがだいぶ晴れた。ディナン(ディナン)はこの息子を大いに満足に思っていた。もちろんディナン(ディナン)だけでなく、カールの祖父である現在のオークリー大公(オークリー)も、

 この孫を高く評価していた。


「父上、聖ソーク(セイソーク)へのご出張、お疲れさまでした」

 カールは非常に礼儀正しく父親を迎えた。


「疲れなど問題ではない。国家の将来のため、事を緩めるわけにはいかない。最近の修練の方はどうだ」とディナン(ディナン)は言った。


「父上、ご心配ありがとうございます。すべて順調で、六千七百の束口をすでに確保しました。この調子なら、十年後には将軍になれる見込みです」

 とカールは答えた。


 ディナン(ディナン)は手を叩いた。「素晴らしい、素晴らしい。私より強い」|群騰ディナン(ディナン)《グントウディナン》は若い頃、法脈の基礎が将軍になるには足りず、高位騎士で止まっていた。


「父上、あなたは家族のために策を練り、将軍に劣らぬ役割を果たしています。私はずっとあなたを手本にしてきました」

 とカールは言った。


 ディナン(ディナン)は笑みを浮かべた。父親としての喜びとは、こういうものだろう。ディナン(ディナン)は言った。

「今回の王選で、お前の祖父はあらゆる手段を使ってお前をヒーマン人の盟主にしようと考えている。お前はどうするつもりだ?」


 カールは眉をひそめた。

「父上、お話の状況では、オークリー公国は今が目立つべき時ではありません。今回の王選への参加は諦めるか、あるいはプロイス(プロイス)と密談すべきです」


 ディナン(ディナン)は首を振った。

「いけない。大公の決定には賛成できないが、今や既定事実となった以上、反対もできない。お前が選王に参加するのを止めはしないが、まず第一に気をつけるべきは自分自身だ。お前の才能は元々目立つ。今は風当たりの強い立場にある上、選王の過程では各勢力が暗躍するだろう。巻き込まれないよう注意しろ」


 現在のオークリー大公(オークリー)は270年前の栄光を再現したくてたまらず、極めて偏執的に自分の孫を推し立て、孫が先祖と同じようにまず選帝に勝利し、次に上位職業へ昇格し、最後には大陸の盟主となって一族の栄光を築くことを期待していた。


 しかしディナン(ディナン)は良き父親として息子の立場を大いに案じ、偏執的な大公を説得することもできず、ただ息子に注意するよう諭すしかなかった。カールは父親の忠告を聞き、うなずいて承諾した。


 ディナン(ディナン)はうなずくカールを見て、話を続けた。「王選の過程では、オーカ(オーカ)帝国に善意を示すこと、またプロスフェスとも友好関係を築くことに気を配りなさい。今回の王冠が誰の手に渡るかは重要ではない。肝心なのは大陸間の外交関係だ。オーカ(オーカ)帝国の人々に会ったときには、適切なタイミングで、我々のクリス半島問題に対する懸念を表明する必要がある」


 カールは疑問を口にした。「聖ソーク(セイソーク)帝国はクリス半島で戦争を引き起こそうとしているのか?」


 ディナン(ディナン)は根気よくカールに説いた。「聖ソーク(セイソーク)が戦争を引き起こそうとしているわけではない。聖ソーク(セイソーク)には戦争を起こす能力がある、ということだ。同じくオーカ(オーカ)もプロスフェスも、戦争を起こす能力を持っている。我々は彼らの主要な戦争対象になってはならない。だからこそ一対一で彼らと友好関係を築き、その一対一の関係の中でそれぞれの相手に、我々がもう一方と対立していることを伝えるのだ。我々は彼らが引き入れようとしている対象なのだ」


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