引き立て役に回る その二
しかし、秉核が悲しんでいる暇などなかった。
十分後。
秉核は寝床から直接引きずり起こされ、脇に抱えられるようにして作業場から連れ去られた。
秉核は抵抗する意志こそあったが、両腕を押さえつけられ、力で抑え込まれて何もできなかった。今秉核を制圧しているのは騎士(中位職業)で、しかも上級者だ。瀾濤城透
彼は今回のオルカ選王一行の総リーダーとして、浮冰・比索のような皇族の子弟や、ほか数名の中位職業者を抑え込む必要があり、実力は確かでなければならない。この人物は上級騎士である。
……
この二十七歳の騎士は二年前、将軍には昇格できないと見なされた。そのため軍に送り込まれ、前線指揮官となった。
陸軍で培ったのは、口ではなく手で人を仕込む、言葉より拳が先に出る野蛮な習慣だった。
そして現在、責任者として呼び戻された彼は、この乱暴な流儀を存分に発揮していた。例えば、もともと無組織無規律だったピソは、彼の拳でこらしめられた。
一方、秉核に対しては、この大佐は拳を振るわず、いきなり拘束した。
……
秉核は工場から引きずり出され、馬車の革シートに放り込まれた。
秉核は手首を揉みながら、小声で不平を漏らした。
「足があるんだから自分で歩けるよ。口がきけないのか?」
城透は両手の指の関節を押さえ、パキパキと鳴らした。
「ああ、足はあるし、好き勝手に走り回るのも好きだな」
秉核は脅しを無視し、軽蔑と、同時にやっかみを混じえて言った。(秉核は幼い頃から「騎士」と呼ばれる強者に憧れており、高位の騎士に強い嫉妬を抱いていた。)
「ふん、武骨者め」
城透は弱い者である秉核の嘲りを無視して言った。
「よし、お前の銃も完成したし、用事も片付いた。これからは大人しくしていろ、勝手に動き回るな。明後日には出発だ」
秉核は不審そうに問い返した。
「王選?まだ二ヶ月もあるじゃないか?」
「それは選帝侯の時期だ。我々護衛隊は前もって拝謁しなければならない。これから数日で、宮廷礼儀を素早く覚えるんだ」と城透は言った。
「はっ、そんなものを学ぶ必要があるのか?俺を見くびっているのか?俺だって貴族だ、基本的な礼儀なら知っている」と秉核は鼻で笑った。
……
一日後。
天体塔のビルにある国宴ホールには客が一人もおらず、一群の礼儀師が秉核を取り囲んで、複雑な指導を始めた。
「お坊ちゃま、ナイフを置く角度はちょうど三十五度にしなければなりません」
食卓に座り、皿の中身を見た秉核は、思わず唾を飲み込んだ。
叱責を聞いて、秉核は無意識に手を伸ばし、ナイフの角度を直そうとした。
しかし、手を伸ばした途端だった。
別のメイドが言った。
「この時は姿勢を正し、再び手を食卓に置くのは非常に失礼な行為です」
秉核は気まずそうに手を引っ込めた。
数時間前まで、自分の礼儀には問題がないと信じていた秉核は、自分が間違っていたことに気づいた。
長い貴族の歴史の中で、宮廷礼儀はすでに複雑極まる体系へと進化していたのだ。
田舎の正月の風習で気をつけるべきことが十なら、この宮殿の礼儀は百にも及ぶ。
上古ヒマン帝国から伝わったこれらの宮廷儀礼は、煩雑を極めている。
例えば国宴で出される野菜は、一本三センチという規格に正確に揃えられている。
どこから噛み始め、何回咀嚼するかまで決まり事がある。
これらの儀礼指導官の言葉によれば、帝国の上流貴族がこのような儀礼を知らないなら、それは成金の家系である証拠だという。
宮殿儀礼課程の結果は、秉核の銃焰家が、数百年かけてやっと栄えた成金家系であることを証明した。
……
しかし二日後、課程は強制的に打ち切られ、秉核は汽車に乗せられた。
選王の場で不作法を働いてしまうのを恐れ、秉核は不安そうに比索へ問いかけた。
「まだあの儀礼を覚えていないけど、どうすればいい?」
比索はちらりと一瞥をくれて、返した。
「君は両国結婚の王子や王女じゃないのに、そんなに細かく覚えてどうするんだ?あの礼儀作法の授業は、要するに、複雑な宮廷の場ではなるべく控えめに振る舞えという注意に過ぎない。あまり気にするな。実際の場では、誰も君の細かいところまで追及したりしない。今の大陸の貴族たちは、結局のところ家系の由緒を重視する。法脈体系が弱い者だけが、礼儀で過剰に装うことを要求されるんだ」
比索の口調には、宮廷の礼儀司にいる年増の女性たちへの強い軽蔑が込められていた。
比索の評価はこうだった。
「法脈がダメだから、貴族の教条にすがって見栄を張るしかない年増女どもめ」
……
比索という皇室の事情通の発言を聞いて、
秉核は腿を叩いた。
「ここ数日間の苦労は無意味だったってこと?」
「どう言うかね?礼儀作法の授業での才能が、機械の才能と同じだと期待している奴もいるんだ。お前はね、生まれつき社交界で花瓶役が務まる顔をしてるんだよ。ちくしょう、ここ数日で少しは性格が穏やかになるかと思ったのに」
比索は答えた。
比索は秉核の拳をかわした。
しかし、股間にお茶をぶっかけられるのは避けられなかった。




