苛立ちの果てに正気を失う その一
蒸気暦1024年、黒海北部の情勢は突然緊迫した。ヘイラ人と帝国は、ポレンステ要塞で対峙を始めた。この地は黒海と地中海のあいだ、黒海・地中海運河の北岸にある。
ヘイラ人と帝国は、ポルンステ要塞で対峙を始めた。
この地は黒海と地中海のあいだ、黒海・地中海運河の北岸にある。
……
要塞防衛線のすべてと、運河沿いの三つの港湾都市は、いずれも龍牙大公の領地である。北方軍団もまた龍牙大公に属しており、銃焰家と比べれば、この大公家は由緒ある旧家門である。
握る財力も、帝国軍事分野における権力も、一流中の一流である。
北方軍団もまた龍牙大公に属している。
銃焰家と比べれば、この大公家は由緒ある旧家門だ。
握る財力も、帝国軍事分野における権力も、一流中の一流である。
領地の鉱山や農地は言うまでもない。黒海と地中海を結ぶ運河を扼する要衝にあって、通行する商船から徴収する通行税だけでも、銃焰家が羨むに十分な額になる。銃焰家の財力と龍牙家のそれを比べれば、ハスキーとサイほどの差がある。
黒海と地中海を結ぶ運河を扼する要衝にある。
通行する商船から徴収する通行税だけでも、銃焰家が羨むに十分な額だ。
銃焰家の財力と龍牙家のそれを比べれば、ハスキーとサイほどの差がある。
もちろん、龍牙大公が北方で権力を握りすぎていたからこそ、ここ数百年のあいだ、銃焰家の政治的立場は確立されてきたのだ。
帝国の聖ソーク皇族は、この北方の強藩の権力がこれ以上拡大するのを防ぐため、北方の軍事産業を銃焰家に経営させた。帝国の政治地図において、銃焰家は龍牙家を牽制する駒なのである。
帝国の政治地図において、銃焰家は龍牙家を牽制する駒なのである。
政治とは微妙なもので、|聖ソーク家はこの公爵を牽制するだけで、徹底的に敵視しているわけではない。
帝国の安定には、この北方の強藩が欠かせない。さもなければ、帝国の北方はヘイラ人の蒸気ローラーの進撃に直面することになる。帝国北方の領土は危うくなるだろう。
さもなければ、帝国の北方はヘイラ人の蒸気ローラーの進撃に直面することになる。
帝国北方の領土は危うくなるだろう。
……
帝国皇室の要求は多い。
そのため、銃焰家はここ数百年にわたり、常に慎重に龍牙大公との関係を扱ってきた。
そのため、銃焰家はここ数百年にわたり、常に慎重に龍牙大公との関係を扱ってきた。
銃焰家は龍牙大公家とあまり親密になってはならない。親密すぎれば、帝国皇室の疑念を招くからだ。
親密すぎれば、帝国皇室の疑念を招くからだ。
銃焰は龍牙大公と大きな衝突も起こせない。些細な衝突が起きれば、帝国がまず行うのは龍牙大公をなだめることで、銃焰家は懲らしめられることになるからだ。
些細な衝突が起きれば、帝国がまず行うのは龍牙大公をなだめることだ。
銃焰家は懲らしめられることになるからだ。
銃焰の基盤はまだ薄すぎる。
……
1024年、辺境の情勢が悪化し始めた。
銃焰家は帝国上層部の風向きを読み取った。
龍牙公爵の仕事に全面的に協力し始め、蒸気工場では各種軍需品の生産が急ピッチで進み、蒸気船も次々と配備されて物資の供給が確保された。どの物資も不足せず、どの商品も市場で値上がりすることはなかった。
蒸気工場では各種軍需品の生産が急ピッチで進んだ。
蒸気船も次々と配備されて物資の供給が確保された。
どの物資も不足せず、どの商品も市場で値上がりすることはなかった。
聖ソーク帝国は資本主義国家ではない。資本が国家独占を達成する以前には、商人が安く買って高く売り、戦前に値上げし、国難に乗じて利益を得るのは普通のことだった。聖ソーク帝国内にも商業グループや商業勢力は存在したが、そうした勢力は常に権力の中枢へ入り込むことができなかった。
資本が国家独占を達成する以前には、商人が安く買って高く売るのは普通のことだった。
戦前に値上げし、国難に乗じて利益を得るのも同じだ。
聖ソーク帝国内にも商業グループや商業勢力は存在した。
だがそうした勢力は、常に権力の中枢へ入り込むことができなかった。
これらの商業勢力は、帝国貴族たちの前では竹鼠のようなものだった。口実をつけては収穫の対象にされた。
口実をつけては収穫の対象にされた。
……
そして、以上のことが銃焰秉核にどんな影響を与えたのか?
のんびりと貴族の御曹司として暮らす銃焰秉核は、今はとても気楽で愉快だった。
数ヶ月前、家伝の法脈の主脈体系が完成した。主脈が整ってからは、分脈にあたる具体的な新しい魔法の分法脈について、一族の機械師たちの指導を仰ぐことができ、もう伯爵様の厳しい視線にさらされる必要はなくなった。
主脈が整ってからは、分脈にあたる具体的な新しい魔法の分法脈について、一族の機械師たちの指導を仰ぐことができた。
もう伯爵様の厳しい視線にさらされる必要はなくなった。
銃焰秉核は、伯爵様のあの厳格で決して笑みを浮かべない表情を見るたびに、全身が落ち着かなくなるのだった。
銃焰秉核は、毎週の検査は不要で、月に一度軽く確認するだけでよいと伯爵様から告げられ、自由を感じた。だがすぐに、それが思い違いだったと知ることになる。問題が持ち上がってきたのだ。
自由を感じた。
だがすぐに、それが思い違いだったと知ることになる。
問題が持ち上がってきたのだ。
……
二日前の夜、伯爵である銃焰思芬は秉核を書斎に呼び、こんなふうに切り出した。
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