思う者の思い その二
比索が言った。
「君が見たがっていた装甲工場の見学許可が下りたよ」
秉核の怒った表情が一瞬で消え、驚きと喜びの色に変わった。(オーカの機械車工場はすべて機械制御者が担当しており、秉核が見学できるのはこの機械制御者の許可があってこそだった。)
「あの機械技師はこんなに寛大なのか?」
比索が言った。
「余計なことは聞くな。でも知りたいなら、俺に顔を触らせてくれ。ほんの少しでいい?」
秉核は褒めようとした表情を引っ込め、冷たい顔で歯の隙間から警告の声を漏らした。
「ここは図書館だ。喧嘩はしたくない」
そのまま真っ先に図書館を出ると、階段の手すりを滑り降りていった。
オーカの戦車工場を前に、秉核は待ちきれない様子だった。
……
四十分後、
黒煙を吐くオートバイが、帝都の道路を四十分間疾走していた。
比索は車から飛び降り、後部に端座している秉核を見て舌打ちした。
「君がこんなにしっかり座っていられるとは思わなかったな。でも俺の車に乗るなら、しっかり抱きついた方が安全だぜ」
秉核は車から降り、ヘルメットを外しながら言った。
「さっき君が俺を振り落とそうとして大きく横滑りしたのなら、俺の定体術の修行も考慮に入れるべきだったな」
比索は両手を広げ、ため息をついた。
「どうやら、まだスピードが足りなかったようだな」
秉核は言った。
「いや、君は飛ぶのが低すぎるんだ。今度、翼のついたのを作ってやろうか」
比索は声を上げた。
「君、双翼機を作れるのか!」
秉核は真面目な顔で言った。
「帝国法で、機械制御者が個人に双翼機を提供するのは厳禁されている」
比索は胸を叩いた。
「帝国は俺の家が開いたものだ!俺がいるのに、法律なんかを恐れる必要があるか。お前のことは絶対に言わない。俺が拾ったと言うから」
秉核は比索のくだらない長話に耳を貸さず、直接工場の中へ歩いて行った。
……
工場内で秉核は、自分が見たいと思っていたもの――帝国装甲部隊の生産システムを目にした。
帝国の装甲は二種類に分かれており、
第一類は二足歩行機甲で、月隕山脈のスライムをモデルに開発されたものだ。
利点は、伝動構造が生物の筋肉なので複雑なメンテナンスが要らないこと。
欠点は歩行能力が弱く、十日連続の行軍でも平均一日五十キロしか進めないことだ。
第二種は無限軌道車両で、主に火砲を運搬するために使われる。秉核が非常に驚いたのは、現在のオーカ帝国が機械車両の故障率をきわめて低い水準まで下げていることだった。
この大陸最強の国家は、すでに電撃戦を実行する能力を備えている。
もちろん、道路状況が良好な地域に限られるが。
……
重金属機械の機甲生産ラインにて。
ここの機械技師たちの労働の成果を尊重するため、秉核は金属製の安全帽を注意深く被り(帽子は大きすぎた)、全身を覆う作業服を着た(袖がゆるすぎて、ゴムバンドで何度も締め直す羽目になった)。
そのまま、この広大な工場へ入っていった。
秉核は頭を上げ、鉄骨の枠組みの上にある目標物を見つめた。
秉核は戦闘機甲の前に到着すると、金属製の梯子を踏んで登っていった。
機甲の前部へ移動し、ボンネットを開けて内部を観察し始めると同時に、音波検出魔法を発動した。
慣れた手つきで内部の機械筋肉の構造を確かめた。
オーカ帝国は生物筋肉を基盤とし、加工精度がマイクロメートルレベルの機械筋肉を組み合わせていた。
注、オーカ帝国の戦車工場では、機械筋肉は主に生物筋肉の反応を制御するために使われている。オーカ帝国には聖ソークの輕鈞家のような驚異的な析金術はない。
彼らは次善の策として、別の技術路線を選んだ。
地球では二十一世紀後半になってようやく、外骨格機甲用の機械筋肉が量産されるようになったが、この世界ではすでに一部の軍事産業製品にこれが採用されていた。
この世界の機械技師たちの微細加工技術は驚異的だ。
内部のすべてを理解すると、秉核は満足げな笑みを浮かべた。
比索は傍らで、金属工具を手にした秉核が、巨大な二足機甲に登ったり降りたり、ハッチの内外を行き来しながら、まるで宝物でも見つけたかのような様子を見ていた。
「そんなにご機嫌なのか?」
彼は思わず秉核に理由を尋ねた。
上機嫌な秉核が言った。
「大陸で、新しい職業を効果的に証明する方法が分かるか?」
比索は笑みを収め、少し真面目に答えた。
「職業が大陸で認められるには、戦争しかない。戦争で認められなければ、どんなに苦労して生まれた職業でも、単なる道楽と呼ばれるだけだ」
比索は皇室の子弟として普段は陽気に振る舞っているが、このことについては深く理解していた。
だから「道楽」という言葉に、彼は仕方なく肩をすくめた。
秉核は軽く頷き、気に留めない様子で言った。
「戦争か。うん、大陸には戦争が絶えないからね」
工場の出口を出た瞬間、秉核の足が突然止まった。何かに気づいたかのように、隔世の感を抱きながら重い口調で言った。
「戦争か……」
……
秉核が工場を出たとき、四キロ離れた塔のプラットフォームでは、三人が遠隔視覚魔法を使い、秉核が戦車工場から出てくるのを見ていた。
「チッ、一時間入っただけで、もう出てきたのか?装甲車両に興味がないのか?」
陸軍の制服を着た男が眉をひそめた。
「ありえない。興味がなければ、比索のために作ったオートバイにあんなに細かい配慮はしなかっただろう」
傍らで陸軍の軍服を着た機械制御者が、確信を持って言った。
続けて陸軍派閥の機械制御者が付け加えた。
「それに、彼は以前に関連するオートバイ製造の仕事をしたことがあるに違いない。多くの重要な部品は非常に精巧だ。特別な材料を使って製造されていた。彼はその要点を知っているのだ」
首相は言った。
「よろしい、人を見た以上、今後陸軍が彼を引き入れられるかどうかは、あなた方次第です」
首相は手を振り、この機械制御者に退出を促した。
この機械制御者が退出すると、部屋には二人だけが残された。
一、首相閣下。二、陸軍元帥 林隱公爵。




