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帰向  作者: 凛光穂
第四巻 赤子の純を欺くな、謀を弄び信を失い、良き人を測り難し

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「追い払われた」 その二

 その日の午後、頓特港で万トン水圧機による圧延作業を見学していた秉核(ヘイカク)。


 タート侯爵(タート)の随身騎士に呼び出された。

 ダント港で最も豪華なオフィスビルの二十七階、機械部センターに到着した。


 機械仕掛けの通路を抜け、多くの機械技師たちの好奇の視線を浴びながら、秉核(ヘイカク)は機械部総合オフィスのドアを開けた。


 タート侯爵(タート)の穏やかな表情は、秉核(ヘイカク)には街で子供をさらう人買いのように見えた。

「ここ数日で、慣れましたか?」


 法脈を騎士モードに調整しながら、無害そうに頷いて答えた。

「ご心配いただきありがとうございます。ここではとても楽しく過ごしています。こちらの工業都市で、これまで学べなかった多くのことを学びました」


 タート侯爵(タート)は言った。

「ええ、では、もう少し散歩に出かけても構いませんか?」


 秉核(ヘイカク)は声を上げた。

「えっ?!」


  ……


 しばらくして。


 侯爵の説明を通じて


 秉核(ヘイカク)はおよそ察した。どうやらオーカ(オーカ)帝国は、自分を十年間の海外派遣に出そうとしているらしい。これを聞いて秉核(ヘイカク)は戸惑った。

『オーカ(オーカ)に来れば重宝されると思っていたのに、突然外に出されるなんて。オーカ(オーカ)人にもガラスの天井があるのか?』


 外派されることに大きな損失はないが、オーカ(オーカ)帝国のこの態度に秉核(ヘイカク)は少し寂しさを覚えた。秉核(ヘイカク)は心の中で呟いた。

「どうやら無償奉仕の機械制御者は、重視されないらしい」


 秉核(ヘイカク)は表情を変えずに尋ねた。

「トゥーロン造船所はどうなるのですか?」


 侯爵は言った。

「工場はほかの機械制御者に引き継がれる。心配するな、帝国は君に十分な補償をする」


 これを聞いて、秉核(ヘイカク)の心は凍りついたように冷たくなった。

 ため息をついて問いかけた。

「だいたいいつ頃、追い出されるんですか?」


 侯爵は慌てて、秉核(ヘイカク)の感情に気づいた。

「これは」と口ごもった。


 侯爵は銃焰(ガンフレイム)秉核(ヘイカク)の無邪気で、少し傷ついたような眼差しを見て胸が締め付けられ、突然『この子の外での生活』が心配になった。

 急いでなだめるような口調で言った。

「いやいや、それは誤解だ。君を追い出すわけじゃない。この十年はただ、ただ、ええと、これは複雑な事情なんだ」


 場は少し沈黙した。

 機械式時計のわずかな針の音だけが聞こえていた。


 侯爵は心の中で呪った。

「議会の汚らわしい取引を、どうやってこの純真な子に説明すればいいんだ!」


 秉核(ヘイカク)は心の中でつぶやき、反抗的に思った。

「十年?俺が十年もいると思うか?二、三年遊んだら帰国するさ。物は故郷を離れて貴くなり、人は故郷を離れて卑しくなる。古人の言葉は本当だった」


  ……


 秉核(ヘイカク)は少し残念そうに、あるいは運命を受け入れたような口調で言った。

「時間だな。時間について話そう。準備しておく」


 侯爵は言った。

「急がなくてもよい。選王の隊列は五月四日に出発する。それまでに、何か要望はあるか?」


 それを聞いて、秉核(ヘイカク)は顔を上げた。

「要求を出してもいいですか?」


 侯爵は笑って答えた。

「もちろんだ。満たせる要求なら、何でも構わない」


 秉核(ヘイカク)は尋ねた。

「帝都の工場を見学できますか?」


 侯爵は答えた。

「大部分の工場は見学可能だ。ただし機械制御者の専用工場は少し難しい。だが前もって連絡しておけば、機械制御者たちも君の学習を拒まないだろう」


 秉核(ヘイカク)は問いかけた。

「帝都の環球博文館、私は入ってもいいですか?」


 この時、部屋の片隅にいた騎士が言った。

「全く問題ありません」


 秉核(ヘイカク)はようやく、そばにいた騎士の表情に気づいた。今まで秉核(ヘイカク)は、この騎士をタック家(タック)の騎士だと思っていた。


 しかし今、秉核(ヘイカク)はこの騎士がタック家(タック)と同じ陣営の者ではないらしいと気づいた。

 こうまで口を挟む態度は、何かを決めようとしているように見えた。


  ……


 侯爵は騎士を振り返り、不愉快そうな表情を浮かべた。


 しかし騎士は侯爵に申し訳なさそうな笑みを向けると、そのまま秉核(ヘイカク)に向かって言った。「私は、林隱(リンイン)・馬風。現在は帝国第四装甲旅に所属しています。帝都に着かれましたら、陸軍省があなたの待遇を保証します。それから八月以降の選帝随行任務では、私たちが――」

 言葉を終える前に、侯爵が机を強く叩いた。


「もういい」侯爵は騎士の言葉を遮った。「タック家(タック)は軍の争いの場ではないし、あなた方の紛争に巻き込まれるつもりもない」


 騎士は振り返り、恭しく言った。

「はい、侯爵様、今回はご迷惑をおかけしました」


 しかしその態度には、勝利を収めた後の自負が明らかに表れていた。

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