「追い払われた」 その二
その日の午後、頓特港で万トン水圧機による圧延作業を見学していた秉核。
タート侯爵の随身騎士に呼び出された。
ダント港で最も豪華なオフィスビルの二十七階、機械部センターに到着した。
機械仕掛けの通路を抜け、多くの機械技師たちの好奇の視線を浴びながら、秉核は機械部総合オフィスのドアを開けた。
タート侯爵の穏やかな表情は、秉核には街で子供をさらう人買いのように見えた。
「ここ数日で、慣れましたか?」
法脈を騎士モードに調整しながら、無害そうに頷いて答えた。
「ご心配いただきありがとうございます。ここではとても楽しく過ごしています。こちらの工業都市で、これまで学べなかった多くのことを学びました」
タート侯爵は言った。
「ええ、では、もう少し散歩に出かけても構いませんか?」
秉核は声を上げた。
「えっ?!」
……
しばらくして。
侯爵の説明を通じて
秉核はおよそ察した。どうやらオーカ帝国は、自分を十年間の海外派遣に出そうとしているらしい。これを聞いて秉核は戸惑った。
『オーカに来れば重宝されると思っていたのに、突然外に出されるなんて。オーカ人にもガラスの天井があるのか?』
外派されることに大きな損失はないが、オーカ帝国のこの態度に秉核は少し寂しさを覚えた。秉核は心の中で呟いた。
「どうやら無償奉仕の機械制御者は、重視されないらしい」
秉核は表情を変えずに尋ねた。
「トゥーロン造船所はどうなるのですか?」
侯爵は言った。
「工場はほかの機械制御者に引き継がれる。心配するな、帝国は君に十分な補償をする」
これを聞いて、秉核の心は凍りついたように冷たくなった。
ため息をついて問いかけた。
「だいたいいつ頃、追い出されるんですか?」
侯爵は慌てて、秉核の感情に気づいた。
「これは」と口ごもった。
侯爵は銃焰秉核の無邪気で、少し傷ついたような眼差しを見て胸が締め付けられ、突然『この子の外での生活』が心配になった。
急いでなだめるような口調で言った。
「いやいや、それは誤解だ。君を追い出すわけじゃない。この十年はただ、ただ、ええと、これは複雑な事情なんだ」
場は少し沈黙した。
機械式時計のわずかな針の音だけが聞こえていた。
侯爵は心の中で呪った。
「議会の汚らわしい取引を、どうやってこの純真な子に説明すればいいんだ!」
秉核は心の中でつぶやき、反抗的に思った。
「十年?俺が十年もいると思うか?二、三年遊んだら帰国するさ。物は故郷を離れて貴くなり、人は故郷を離れて卑しくなる。古人の言葉は本当だった」
……
秉核は少し残念そうに、あるいは運命を受け入れたような口調で言った。
「時間だな。時間について話そう。準備しておく」
侯爵は言った。
「急がなくてもよい。選王の隊列は五月四日に出発する。それまでに、何か要望はあるか?」
それを聞いて、秉核は顔を上げた。
「要求を出してもいいですか?」
侯爵は笑って答えた。
「もちろんだ。満たせる要求なら、何でも構わない」
秉核は尋ねた。
「帝都の工場を見学できますか?」
侯爵は答えた。
「大部分の工場は見学可能だ。ただし機械制御者の専用工場は少し難しい。だが前もって連絡しておけば、機械制御者たちも君の学習を拒まないだろう」
秉核は問いかけた。
「帝都の環球博文館、私は入ってもいいですか?」
この時、部屋の片隅にいた騎士が言った。
「全く問題ありません」
秉核はようやく、そばにいた騎士の表情に気づいた。今まで秉核は、この騎士をタック家の騎士だと思っていた。
しかし今、秉核はこの騎士がタック家と同じ陣営の者ではないらしいと気づいた。
こうまで口を挟む態度は、何かを決めようとしているように見えた。
……
侯爵は騎士を振り返り、不愉快そうな表情を浮かべた。
しかし騎士は侯爵に申し訳なさそうな笑みを向けると、そのまま秉核に向かって言った。「私は、林隱・馬風。現在は帝国第四装甲旅に所属しています。帝都に着かれましたら、陸軍省があなたの待遇を保証します。それから八月以降の選帝随行任務では、私たちが――」
言葉を終える前に、侯爵が机を強く叩いた。
「もういい」侯爵は騎士の言葉を遮った。「タック家は軍の争いの場ではないし、あなた方の紛争に巻き込まれるつもりもない」
騎士は振り返り、恭しく言った。
「はい、侯爵様、今回はご迷惑をおかけしました」
しかしその態度には、勝利を収めた後の自負が明らかに表れていた。




