機械師——まだ新しい職業 その一
蒸気暦千二十六年二月。
五十七個の赤と青の宝石を車冠にはめ込んだ馬車が、ゆっくりとトゥーロン工場の門前に止まった。
五十七個の宝石は、この家系が歴史上五十七人の上位職業者を輩出してきたことを示している。
瀾濤家——オーカ帝国の公爵家。
家系の継承は「砦」と「権柄」。
青い宝石が砦を、赤い宝石が権柄を表す。
当代の瀾濤大公は、見た目こそ三十歳ほどだが実際は七十四歳。いまは高位職業者の権力を握っている。
その背後には六名の中位職業者が控えていた。四人は側近騎士、残る二人は機械制御者である。
彼らは列をなして馬車を降りた。
前方三メートルでは気流術(空気砲)が発動し、道路の階段を跡形もなく吹き飛ばしていた。
……
二人の機械制御者は二つの伯爵家の出で、どちらも帝国海軍派閥に属している。
この二人の機械制御者は、先週秉核が生産した蒸気タービンを検査した。
海軍兵器製造に豊富な経験を持つ二人は、こう結論した。
トゥーロン港の蒸気タービンには、まだ若干の欠点がある(資料を元に作ったため、手取り足取りの指導は受けていない)。
だが全体としては、関連技術の要点をすでに掌握している、と。
これらの技術的な欠陥は二つの方法で解消できます。
一、熟練した機械制御者が生産過程でこれらの技術的欠陥を指摘する。これが最も迅速な解決方法です。
二、軍隊に引き渡した後、軍隊での使用を通じた十数年にわたるフィードバックで解決する。
地球の二十一世紀なら、秉核のこうした欠陥は十数年の絶対的な技術格差を意味する。だがこの世界の千年にわたる蒸気時代では、十数年の試験期間など何の意味もない。聖ソークの波輪家は、まさにこの一連の技術的ボトルネックを利用している。
……
オーカ帝国は、聖ソークよりもはるかに工業化の進んだ国家である。
制度的には立憲君主制だ。オーカ帝国には、工業階級の権利を著しく阻む大領主の封建制がすでに存在しない。
皇帝といえども、自らの意志で国内の家系に権利を与えることはできない。
十数もの大名家は優位を保つため、工業分野に非常に熱心である。聖ソークの御苑家のように、皇帝の権力による封建制に頼ってのんびり生き延びる旧貴族は、オーカには存在しない。
そうした旧貴族は、オーカ帝国ではすでに没落貴族である。
西大陸全体で見れば、オーカ帝国の総合国力は圧倒的だ。一対一なら、どの国にも優位に立つ。
しかしこの国には深刻な帝国病がある。東大陸で大きな壁にぶつかって以来、帝国中央の権威では各政治派閥の対立を埋め合わせることができない。
外交では、近視眼的な行動が、手段を弄するか、国力にものを言わせて強引に押し通すかのいずれかになる。
国内ではそのうえ、互いの内輪もめが続いている。
……
たとえば機械師のような資源は、海軍と陸軍が奪い合う範疇に属する。
陸軍は機械師を抱え込んで銃器を製造し、蒸気装甲部隊を編成している。
海軍は、機械師が造る重砲艦を奪い取る。
海軍と陸軍の衝突は、四百年前、オーカ帝国が最も繁栄していた時代にすでに芽生えていた。
三百年前、オーカ帝国内の矛盾が最も深刻だった時期、海軍と陸軍は鉄鋼・石炭資源をめぐり、機械師と機械制御者の奪い合いで幾度も大規模な衝突を起こした。
騎士たちは熱兵器の使用を極力控え、刃の研がれていない斧や大剣で激しく打ち合った。血みどろの惨事である。
今ではずっと文明的だ。
議会での武闘といっても、インクが飛び散る程度である。
……
瀾濤公爵の純粋に公務上の目的は――トゥーロン港の工場で機械生産を指導し、オーカ帝国に到着したこの若き制御者を懐柔して忠誠を誓わせることだった。大多数の目には、それはオーカ帝国のどの勢力にもできること。十三歳の子供など、容易に操れると考えられていた。
今どきの街中なら、玩具と飴で何人でも誘拐できるほどだ、と。
瀾濤公爵の今回の目的は公私混同だった。陸軍の連中がやってくる前に、秉核のポジションを、帝国海軍が求める造船所や艦砲鋳造業に確実に収めておくこと。
瀾濤公爵の純粋に私的な目的は、縁組である。
伝統を嫌う家系などない。伝統は多ければ多いほどいい。
では、その伝統はどこから来るのか?
この大陸では、新興の貴族家系も、経済的に没落した旧貴族の家系の人々と結婚することで伝統を獲得してきた。
……
―――――




