真に習う気か、真に教える気か その二
一国の生産技術は、そう簡単に漏洩するものではない。
技術体系とは、単なる紙の資料のような浅はかなものではないからだ。
他国の高等技術者が工場内の対応設備を使い、生産プロセス全体を実践する。
起こり得るエラーの全工程を試して初めて、技術が外国へ漏洩したと言える。
たとえ技術生産ラインであっても、初めて製品を作り出したからといって、技術を掌握したとは言えない。
その後、実際に運用してフィードバック効果を得て、問題に対処するためのメンテナンス体制を確立して初めて、技術を掌握したと言える。
(これはその国家にその産業ニーズがあり、この産業チェーンを維持できることを意味する。)
そのため、地球上の一部のハイテク工場では、非技術者に工場を見学させることができる。
写真を撮らなければ、見学者は工場が先進的であることだけを大まかに理解でき、具体的にどの細部の工程が先進的なのかは説明できない。
しかし、技術者仲間が見学に来たら、それは『一目見ただけで妊娠する』ようなものだ。
……
この世界の生産機械設備は、上級機械師が制御して操作するのに適している。
これらの設備を地球上に置いたなら、地球の労働者が品質管理を行い、合格した工業製品を製造するのは難しい。
普通の労働者はスペクトルを通じて温度を見ることも、超音波センサーを通じて熱処理材料内部の傷を見ることもできない。
そのため、基層の生産に携わる普通の人々は、生産全体に対してまったく制御権を持たない。
理論上、技術を盗めるのは機械師だけである。
また、たとえ機械師が技術を盗みに来たとしても、そうした大工場まで来なければならない。機械制御者がいる大工場でこそ、いくつかの複雑な工程が実際に生産に用いられている。その工程の流れが操作される過程で外国の機械師の目に触れ、細かな工程を盗まれる可能性がある。
オーカ帝国の技術秘匿活動の重点は、そうした大工場にあった。
トゥーロン港の三号工場には、何十年も蒸気タービンを生産してきた経験がない(数十年前には生産していた)。
生産手順すらないのに、技術が漏れることなどあり得るだろうか?
資料庫はどれも大きな鉄の扉の奥で埃をかぶっている。
これらの紙の資料が盗まれない限り安全だ。
(注)十数トンもの資料となれば、盗むことなどできない。
運び出すにはトラックが必要だ。
……
しかしオーカ帝国は、もう一つの極端な事態をまったく想定していなかった。
ある機械制御者が、みずから目の前までやって来るという事態を。
まあ、これは技術を盗むというより、まったくの国際援助だ。
そしてこの管理の混乱した工場では、責任者が、海軍から送られてきた秉核を見て、オーカ帝国のどこかの大名家が試練のために送り込んだ弟子かもしれないと考えた。
彼らは資料庫を開け、秉核に閲覧させた。
十数トンもの資料は到底読み切れるものではなく、読み切る必要もなかった。
それらは設備のパラメータを記録したものだからだ。
当の設備は現在そろって工場内にあり、改修すれば基本的に問題はない。
さらに、多くの資料は各工程の労働者が読む必要のあるものだ。秉核は直接生産現場で労働者と交流し、その過程を自ら確かめることで、十数ページの本に書かれた情報を把握していった。
……
オーカ帝国上層部の情報機関は、十四歳の異国の機械制御者がオーカの小さな工場に現れたという報せを耳にした。
その信憑性をまったく信じようとしなかった。
さらに、秉核が海軍の捕虜だったことも影響していた。
海軍という部門が絡む他部門との案件は、面倒な問題を引き起こす。
情報機関はこの件を一時的に棚上げし、情報部長はその報告を見て、南方艦隊司令官が『空から餅が降ってくる』ような白昼夢を見ているのだと思った。
しかし、過去四ヶ月で状況は少しずつおかしくなっていった。
……
十一月、秉核が到着した。
秉核は工場の機械技師たちと、この工場の最先端生産技術について実に興味深げに論じ合った。
これはトゥーロン工場の機械技師たちを感激させ、上層部がトゥーロン工場への重点投資を決めたのだと確信させた。(注)秉核は資金を一切持っていない。
資金は工場にあり、トゥーロン港の海軍部門にも一部があった。
機械制御者という身分そのものが、大がかりな投資なのだ。
わずか一ヶ月で、倉庫に封印されていた大型設備は秉核の手で修理され、生産工程が動き出した。重要な合金鋼の転炉からの精錬からドリル加工に至るまで、秉核はすべての工程に関わった。
秉核は資料に基づき、補助魔法を一つひとつ使って温度を制御し、工具を安定させ、製造プロセスのあらゆる微細な変化を見極めていった。その過程で、秉核は労働者たちの生産経験を学び、
実際の操作の場では、秉核は細部を観察し、各労働者の作業における測定基準の役割を果たした。労働者たちにはスペクトル視覚のような詳細観察魔法がなく、
もし労働者たちが秉核から細部の注意点を指摘されなければ、多くの工程は推測に頼るしかない。やがて大量のミスが知らぬ間に製品へ積み重なり、この複雑な工業設備は使いものにならなくなるだろう。
人にはそれぞれ癖があり、個人差もある。
手触りや目測をこの水準まで把握するコツは、紙の資料には書き記せない。
実際の操作のなかで、繰り返しはっきり指摘してやるしかない。
……
数々の紆余曲折を経て、工場をあげての努力により、大型蒸気タービンが完成品として作り上げられた。
製品は工場検査を通り、合格基準の刻印を受けると、待機していた海軍憲兵将校によって速やかに運び去られた。
その後、蒸気タービンは工場から三キロ離れた軍事基地へ運ばれ、試験が行われた。
軍事基地で主要な性能パラメータのほとんどが測定されると、
南方艦隊司令官は電報でオーカ海軍の海軍大臣に報告した。
そしてこの司令官は先手を打ち、トゥーロン造船所に大型船舶用蒸気タービン二十基を発注した。
一割の頭金を支払い、契約書には四十倍以上の違約金が定められた。
南方艦隊司令部からの通知は、上層部に急ぎ人を確保するよう伝えるものだった。
先んじて注文を出すのは、他の艦隊がやって来て人を奪い去る前に、任務を与えてその人物をトゥーロン造船所に縛りつけておくためである。




