籠から出た鳥 その三
冷兵器の時代、騎士や遊侠は近距離戦闘において普通の兵士を圧倒していた。
暗闇での戦闘では、ほとんどの騎士が集中術や集音術、感音術を使い、音によって位置を把握できる。しかし秉核は現在、スペクトル視覚を持っている。赤外線の視点では、今の埠頭は秉核にとって昼間と何ら変わらない。
しかも相手は職業者ですらない。
飛んできたナイフは秉核の左頬の横で止まり、その柄を秉核が指で挟み取った。
指先を一振りすると、鉛筆を振るようにナイフは瞬く間に投げた者の方へ飛んでいき、手首に突き刺さった。
すべては電光石火の間の出来事で、六人の妨害者たちは反応する暇もなかった。
行動を起こすと、秉核は一瞬の躊躇もなく前方へ身を進めた。
まるで暗闇の亡霊が迫るかのように。
バキッという音とともに、二人の手首が瞬く間に脱臼した。さらに三人は埠頭の下へ掃き飛ばされ、水しぶきを上げた。そして秉核は、六人で固めていた封鎖線へと突入した。
……
慌てた声が秉核を引き止めた。
「英雄、手を止めてください」
この手の顔役連中が生き延びる最大の秘訣は、形勢が不利と見るや即座に屈服することだった。
声の主は封鎖線の内側にいた一人の船員――ごく普通の作業服を着た船員だった。
彼が口を開くと、埠頭の他の者たちは一斉に手を止めた。
明らかに、この人物が私設港の臨時責任者であることが窺えた。
この船員は袋を取り出し、その中から銀貨の束を三本取り出した――銀貨を重ね、新聞紙で包んで長い棒状にしたものだ。これが一般的な金の持ち方である。
袋に銀貨を入れてジャラジャラ鳴らせば、貴族は成金だと見なすだろう。底辺の人々は狙われるのを恐れる。
民間の慣習では、銀貨二十枚が一塊、五塊で一条となる。
銀貨一枚の額面は一リラで、一条の銀貨は百リラに相当する。
三条分の重さは四キロ。これらの硬貨は国外でも通用する。
……
船員は銀貨を桟橋の中央に置き、後ずさった。秉核は遠慮なく進み出て、金を拾い上げた。(指で超音波検査をして、異常がないか確認する。)三条分の金を自分のリュックに入れると、秉核は続けて言った。
「船に乗せてもらおう」
船員は驚いた表情を浮かべ、低い声で言った。
「英雄、道の掟では、見知らぬ者を船に乗せることはできない」
秉核は馴れ馴れしい様子で言った。秉核の口ぶりは、まるで相手がもう仲間であるかのようだった。
「お金までくれたんだから、もう見知らぬ人じゃないでしょ?」
船員はしばらく黙ってから言った。
「それでは、上がってください」
この港の親分は、秉核を止められないと知ると、ぐずぐずしなかった。
……
船内に入ると、秉核は悪臭を嗅いだ。
船倉は上下二層に分かれていた。
下層の船倉はほとんど家畜を運ぶような環境で、床には至るところに汚水がたまっていた。
便器は鎖で船倉の入り口に固定されており、密航船ではトイレに行くこと自体が恥ずかしいことだった。
もちろん秉核は下船室には入らず、上船室の個室へ案内された。その個室はトイレほどの広さしかないが、基本的に清潔で、船内では比較的特権的な位置にあたる。秉核が超音波で探知したところ、このような密閉された部屋は船全体でたった三つしかなかった。
……
秉核が船に乗り込んでから三十分後、帆船のマストが帆を広げ、海風を受けてゆっくりと航路についた。
秉核はデッキの前端に立ち、突然、病気にでもかかったように大声で叫んだ。
「偉大なる航海の始まりだ!」
その雷のような叫び声は漆黒の夜に響き渡った。
周囲の船員たちはまるで夜盗のように思わずしゃがみ込み、それから怒りを抑えつつ、突然大声を上げた秉核を睨みつけた。
注。これは私営の港で、非合法な商売は表立って行えない。少し頭の足りない秉核は、つい夜間の公共フェリーと勘違いしてしまう。
他の者なら、船員たちから他ギルドのスパイと疑われるところだった。
船員は急いで近寄り、怒りを抑えながら、歯の隙間から声を漏らすように低く言った。
「旦那様、ちょっと、休まれてはどうです」




