籠から出た鳥 その二
乞食は秉核を見て驚いた。
何か叫ぼうとしたが、声を上げる間もなく、目の前の天真爛漫な小さな人影は人混みの中へ消えていった。
……
転生したため性格が非常に活発になり、新しいものを見るとつい試したくなってしまう(大人から見ればお転婆である)。悪い結果に気づかないことも多く、秉核は、自分が百歳の時のように心を落ち着けて多くの規則を守ることが、もうできなくなっていることに気づいていた。
大人のように堅苦しくあれこれ気にしすぎれば、この年頃では息が詰まってしまうだろうとも思っていた。
だから秉核は、自分が注意すべきだと感じたことだけに注意を払っていた。
――幼稚であろうと、軽薄であろうと、あるいは将来老いてこの世のほとんどのものに無関心になるかもしれないが、変わらないのは本来の姿だけだ。
……
その夜。
秉核は私船の港を見つけた。
沿岸部にはスラム街が広がっていた。
こうしたスラム街は都市の法執行の盲点であり、独自の掟を持っていた。
夜更けの人けのない時間に、秉核は赤外線スペクトル視覚を起動した。
街の最も高い場所に立つと、海辺で一艘の帆船が帆を降ろし、人力の櫂でゆっくりと漁港へ入っていくのが容易に見て取れた。
高い塔の上からその光景を眺め終えると、秉核は軽く跳んで屋根から降り、暗闇の中を素早く目的地へ向かって走り出した。
……
波輪港のスラムにある黒魚私港は二十年にわたって営業を続け、密輸や人身売買など一連の違法行為に関わっていた。
帝国の貴族たちにとって、これほど大規模な私港を壊すこと自体は簡単だが、この地域に介入して管理することはできない。
帝国内には常に一割の貧しく飢えた人々が存在する。
金儲けになる仕事なら、どんなものでも人が集まる。
大型の私港を一掃しても、今度は非常に多くの小型私港が現れる。
これらの小港は不定期に営業するため、調査は非常に難しい。
そのため波輪家は、地元のこうした大型私港に目をつぶっていた。ここにある私港が毎年の上納金を期限どおりに納めさえすれば、波輪家はしばらくの間、スラム内の違法行為を容認した。そして黒魚港は、開設から二十年で近隣スラムの他の私港の商売を完全に駆逐してしまった。
一方で黒魚港の黒魚組の門弟たちは戦闘力が高く、他方で時勢をわきまえ、毎月、密港の利益を波輪家の税務部門に上納していた。波輪家がスラムのギャングを掃討する際にも、黒魚港はいつも見逃された。
また、こうした大型密港同士が互いに競争相手を排除することから、スラム内部の状況を把握することもできた。
……
現在に戻る。
陸からの気流が海辺へ吹きつけ、スラムのさまざまな腐臭が埠頭特有の魚の匂いと混ざり合った。
港で急いで船に乗り込む人々は息を止めた。
薄暗い夜闇の中、密航ブローカーの低い催促の声だけが聞こえていた。
「早く、早く」
「中へ入りやがれ」
「余計な口を利いたら、海に放り込んで魚の餌にしてやる」
集音術で港の内部の様子を聞き取った秉核は、荷物を確認すると、急いで港へ向かって走り出した。
その走り方は、少年がバスに乗り遅れまいと駆けるようだった。
埠頭の木道を踏み鳴らす音は、夜だけにやけに耳についた。
当然、これほど目立って走れば、埠頭ではすぐに警戒が高まった。
六人の大男が駆け寄ってきた。中には刀を抜く者もいた。
目の前の男たちが刀しか持っていないのを見て、秉核は安堵のため息をついた。
ここにいる者に銃はいない。
妨げる男たちを前に、秉核は無邪気な口調で言った。
「すみません、こちらは客船でしょうか」
「違う。さっさと失せろ」
短く拒否された。
秉核は息を吸い込んで言った。「本当に違うんですか?もしそうなら、近くにあるはずですよね。それなら後ろの人に聞いても構いませんよね」秉核の声は次第に大きくなり、この暗闇の中ではあまりにも大きく響いた。
それがまた、向かいにいる男を刺激した。
「ヒュー」という音とともに、ナイフが直接飛んできた。その飛来した方向は秉核の頭部だった。
この一撃は非常に致命的だった。
しかし、秉核はわずかに頭をひねり、ナイフをかわした。
……




