↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰向  作者: 凛光穂
第三巻 緊迫の逃亡?刺激的な逃避行!いたずらな旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
101/217

高通用系主脈 その三

 綺絢(キケン)は秉核(ヘイカク)の白い袖に包まれた腕に目をやり、それから顔を上げて微笑んだ。

「その点はご心配なく。まずはゆっくりお休みください」


 秉核(ヘイカク)は少し間を置いてから言った。

「では、ありがとうございます」


 綺絢(キケン)は「どうぞ」と促した。綺絢(キケン)は再び白いシルクの手袋をはめた手を伸ばし、秉核(ヘイカク)を招き入れる仕草をする。


 地主側の厚意を感じ取り、秉核(ヘイカク)は部屋の中へと進んだ。


 部屋は非常に広く、帝都の寮よりも大きかった。

 ベッド、椅子、机がそろっており、鏡やその前の小さな机など、学校の寮にはない備品が完備されていた。


 秉核(ヘイカク)は一通り見回してから、満足そうに頷いた。

「いいね。ええと、もう休んでもいいかな?」


 綺絢(キケン)は笑みを浮かべて頷いた。

「どうぞ」


 秉核(ヘイカク)は振り返り、部屋に立っている二人のメイドがついてこないのを見た。この二人は秉核(ヘイカク)が入ってきた時からずっと彼を見つめており、秉核(ヘイカク)をかなり落ち着かない気分にさせていた。


 秉核(ヘイカク)はこの二人のメイドにもう一度言った。「私は休みます」秉核(ヘイカク)の表情と目線は、追い払おうとしていることを示していた。


 ちょうどドアの外へ出た綺絢(キケン)はそれを聞いて振り返り、秉核(ヘイカク)が二人のメイドに話しかけているのを見て、微笑んだ。

「清泉と白霧は、あなたの身の回りの世話をするメイドですよ」


 秉核(ヘイカク)は一瞬考え、帝国の地方貴族の事情を思い浮かべて、すぐに言った。「綺絢(キケン)さん、生活面でのお世話は要りません。部屋の片づけは自分でやりますので」


 綺絢(キケン)はそれを聞いた。

 ため息混じりの声だった。しかし口元には微笑を浮かべていた。

「そんなことをされては、私たちの接待が行き届かないではありませんか」


 秉核(ヘイカク)は答えた。

「これまで、ご家族の皆様から何ら拘束を感じたことはありません。このままの心地よさを続けたいのです」


 秉核(ヘイカク)は頑なな目を向け続けた。


 綺絢(キケン)は頷くほかなく、わずかにため息をついた(おそらく故意の表情)。

「では、ご自由になさってください」


  ……


 数分後。


 部屋の入り口で。


 清泉という名のメイドが、名残惜しそうに言った。

「お坊ちゃま、何かお入り用なことがあれば、いつでもお呼びくださいませ」


 秉核(ヘイカク)は「誠実」な様子で応じた。「うん、うん、この数日間よろしくお願いします」そして秉核(ヘイカク)はドアを「バタン」と閉め、ついでに鍵までかけた。

 まるでドアの向こうに人喰い猛獣でもいるかのように。


 ドアに背中を預け、秉核(ヘイカク)は長いため息をついた。


 秉核(ヘイカク)は再び立ち上がってドアの鍵のところへ戻ると、手のひらに魔法の光が現れた。

 磁流体系魔法の発動とともに。


 金属粉末の流体が鍵穴へと染み込んでいく。


 複雑な鍵穴の中の機械部品は、磁力によって直接ずれてしまった。これでこのドアは、鍵を使っても開かなくなった。(注。ずらせるということは元に戻せるということ。秉核(ヘイカク)自身はまだ鍵を開けられる。)


 全てを終えると、秉核(ヘイカク)はベッドの前に駆け寄り、ぴょんと跳び上がって布団に飛び込み、自由気ままに三回転も転がった。秉核(ヘイカク)の気持ちは、今すっかり和らいでいた。子供の頃、夏休みに両親が出勤して家を出た後の解放感を思い出すようだった。


  ……


 しかし十分後、秉核(ヘイカク)は姿勢を正して座り直し、体内に意識を集中させ始めた。


 消しゴムの能力のおかげで、魔核の影響は完全に見えなくなっていた。チート能力があれば、その程度の傷は何でもない。もちろん、傷が治るということもあって、秉核(ヘイカク)は最近、自分の行動がますますリスクを軽んじていると感じていた。


  ……


 座り直した姿勢のまま、秉核(ヘイカク)は自らの体内の法脈を整理し始めた。


 現在の秉核(ヘイカク)の法脈体系は、主脈で分けると二つの系統に大別できる。


 第一のセットは銃焰(ガンフレイム)家の法脈で、現在は改良が加えられ、銃焰(ガンフレイム)家の機械師法脈よりも優れている。銃焰(ガンフレイム)家の現行法脈の上限は中級機械制御者だが、秉核(ヘイカク)がバグを修正した後なら、上級機械制御者に到達できる。


 第二のセットは、秉核(ヘイカク)がこの世界に生まれ、この世界の法脈に触れた後、自らの興味に基づいて研究したオリジナルの法脈体系である。

 このオリジナル法脈体系では、せいぜい低位の中位職業者までしか到達できない。


 理屈の上では、銃焰(ガンフレイム)家の良い法脈があるのに、秉核(ヘイカク)はなぜオリジナルに熱中するのか?


(注)興味とは必ずしも最強にこだわることではない。秉核(ヘイカク)のオリジナル法脈への興味は、主脈との互換性にある。


  ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。