家族の中の敵 その一
王立騎士団
これは聖ソーク帝国最精鋭の軍団である。
全員が貴族の子弟で構成された。
最も高貴で勇敢、意志力に優れた部隊だ。
毎年、帝国から動乱地域へ派遣されて戦う。
作戦が終われば、帝都へ帰還するよう命じられる。
輕鈞・エロットのこの部隊は、帰還ルートを申請する際に三日間の休暇も併せて願い出た。帝国の許可が下りると、エロットは部隊をここに駐屯させ、四号自走機甲を一機選んで秉核の学校の正門前に乗り付けた。
二十一世紀初頭の地球で、高級車を女子校の前に停めるより、よほど注目を集める出来事だった。
……
帝国四号機甲は高さ五メートル、二足歩行で重量十五トン。動力炉は二百七十馬力を供給できる。これは内燃機関タンクの技術系統ではない。そもそも内燃機関すら存在せず、機械技術系統ですらない。秉核は、機甲の脚部にワイヤー伝動のリンクが存在しないことに気づいた。
これは生物技術系統のものだった。
鋼鉄の外殻の内側では、生物筋肉が機械運動を牽引している。
内部の動力炉は、むしろ一種の胃と言えた。木を消化できる胃だ。
外見は機械だが、機械技術としての難易度は戦車とは比べものにならない。
戦車は一、二立方メートルほどのエンジンが、いくつかの歯車伝動桿を通じて膨大な機械力を生み出し、数十トンの車体を駆動する。
エンジンに直結された歯車とベアリングは、巨大な力に耐えなければならない。
そのぶん、戦車は機械故障を起こしやすい。
一方、この生物組織では、数トンの生物筋肉が広い範囲で機械外殻に接触し、機械を駆動する。
伝動する力は、筋肉と機械の多数の接続面に分散される。
だから故障する確率は、かえって低い。
しかしこの機甲には、生物的な欠点があった。疲労である。
時速五十キロで走れるが、二十分も走ると速度が落ちる。
連続十時間歩けば、内部の筋肉組織が乳酸過多で疲労し始める。運転を止めなければならない。
……
この発明は、帝国の皇室|聖ソーク家の先祖たちによるものだった。
この家族は数百年をかけ、月隠山脈に生息するごく普通の魔獣を、自らが必要とする形態へと育て上げた。
魔獣の名前は非常に複雑。形態としては肉塊の集合体で、さまざまな特性を持ち、さらに融合もできる。
現在では原始種は見られないが、秉核は家系の書物からいくつかの種の原型画像を見つけ出した。秉核は、これがスライムだと確信している。
……
この魔獣は成長を終えると、木片などの有機物を素早く消化できる。
また興奮剤を注入すれば、馬力を急激に上げることも可能だ。
それが、この時代の装甲兵器となっている。
戦場では二足歩行の装甲機が三十ミリ機関砲を担いで集団を組み、素早く迂回して敵軍を分断した。
そして帝国を、一時的に大陸中部の決定的な勢力にまで押し上げた。
重騎士団――銃砲時代に消えたこの名が、装甲部隊に冠された。
……
貴族の移動手段がまだ馬車だったこの環境に、これほど大型の機械装備が現れたのは、確かに風変わりな光景だった。
スライム動力パック技術は、地球の内燃機関技術のように民生用まで普及しなかった。
だからこそ、こうした不調和が生まれた。
……
巨大な装甲機がしゃがみ込むと、秉核は素早く背面の小さなドアによじ登り、船倉の密閉扉のような車のドアを開けて機甲のキャビンに潜り込んだ。
中にはリモコン操作桿があり、バッテリー回路を制御して、機甲内の各筋肉組織に直結していた。
パチン、と秉核が無造作に動かした手を叩かれた。
エロットが言った。
「触らないで。後で私の操作を見て」
数分後、残る二人の乗組員が這い込んできた。一人は秉核の髪をくしゃくしゃにかき回し、もう一人は子供を誘い込むような笑顔で、秉核に自分の膝の上へ座るよう促した。突然の悪寒に襲われた秉核は、慌てて首を横に振って断った。
……
機甲が起動すると、機体全体が一気に明るくなった。内部には鏡面魔法が次々と現れ、コックピットからは鏡面反射を通して外の光景が直接見渡せた。機甲の外には人だかりができ、無数の視線が注がれていた。秉核はまるでコンサートのステージに立ったような気分だった。
「前進せよ」
エロットの命令とともに機甲が動き出すと、他の二人もすぐに厳粛な表情になった。
彼らの手と目の上で魔法が躍動する。
二足歩行装甲機内部のガラス結晶には、二十一世紀後半の電子ディスプレイ技術さながらに操作パネルが次々と浮かび、幾何学的な線条で周囲の地形図が描き出されていく。
これはもはや魔術というより、精密で標準化されたテクノロジーの美学そのものだった。
機甲の結晶の中央で最も目立つのは、全地形図だった。
千メートル範囲内の起伏に富んだ地面と複雑な環境を鮮明に映し出している。
さらには、範囲内の蒸気ボイラーの熱源まで記されていた。
……
魔法操作の設備は、サイエンスフィクション風のデザイン。
各種の計器盤が操作プラットフォームに並び、その様式を非電子時代へと引き戻していた。
その中で機甲の筋肉疲労度を測る計器盤について、秉核が実際にどうやって疲労度を表示しているのかと尋ねると、エロットはpH値で表示されるのだと説明した。
機甲の筋肉の乳酸が一定の値まで上がると、計器は赤く変わる。逆に満タンなら青くなる。
もちろん機甲操作要員は中和剤を強制注入すると同時に、筋肉を刺激する薬剤も注入できる。
そうすれば機甲は疲労感を失い、たちまち爆発的な力を発揮するのだった。
これを聞いて、秉核はすっかり興味を引き、その爆発ボタンを押させろと兄を煽った。
しかしエロットは、軍規が許さないとして秉核の考えをすぐに否定した。
――この操作は機甲の筋肉を損なうからだ。
(確かにこの軍規は存在するが、エロット自身がレースをするときには無視していた。)
秉核ががっかりした顔をすると、エロットはひどく真剣な様子で、半分は騙すように秉核を慰めた。「秉核、いつか君が騎士団に入って自分の自走機甲を手に入れたら、自分の女を愛するように自分の機甲を愛さなければならない」
「そうだ。君の女を理解するように、君の機甲のあらゆる部分を深く理解しなければならない」
そばにいたバルサ(エロットの戦友)が、冗談めかして言った。
秉核は真面目な顔でおとなしくうなずいたが、二人の表情を見てふと気づき、さっきの言葉がどうやら下品だったらしいと悟った。
……
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