第18話「自称勇者、参上!」
「イレギュラー・マリオネット -The Wild Guardian-」の後日談にあたる話です。
前作はこちら
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「修復薬……ですか?」
再び、エルトの家に戻ってきた3人。
話によれば、文字の擦れや綻びを修復できる薬があるとの話だった。
「そうなのです! こういった修復は錬金術師の十八番なのです。この合成薬のお礼に、提供しますです」
「おお! やったなレオン兄ちゃん。これで目的達成だな」
ライガも嬉しそうに喜んでいる。
正直、完全な状態で持ち替えられるならそれに越したことはない。
「ありがとうございます、エルト様。ちなみに、その薬はどこに……?」
「はいっ! 僕の作業部屋にありま……」
と、そこでエルトの動きが止まった。
ライガも何かを察したようだ。
「お前……。その部屋、さっき爆発させたんだよな?」
「ああああああ! そ、そうだったのですぅ~!!」
エルトは頭を抱えてうずくまった。
ライガは呆れたようにため息をつきながらも、口元を緩めた。
「おいおい……せっかくいいとこだったのに、台無しだぞ」
「うぅ……ご、ごめんなさいなのです……!」
今にも泣きそうなエルトの表情を見て、レオンは思わず声を掛ける。
「仕方ありません。やはり修復は諦めて――」
言いかけて、レオンはふと考え込むように視線を落とした。
「……あの、エルト様。修復薬の主成分は何ですか?」
「え? ええと……、ルミナの花の雫なのです」
(ルミナの花……確か、満月の夜に採れると植物図鑑に載っていたな)
少年時代に擦り切れるほど読んだ植物図鑑。
ルミナ草のページも、鮮明に思い出せる。
エルトが顔を上げ、ぱっと表情を明るくする。
「それで、それを蒸留した液体に月光石の粉を混ぜると――」
「完成するわけだな!」
ライガが腕を組み、うんうんと頷いた。
「で、その花はどこに生えてんだ?」
「ルミナの花は……この街の北にある“静光の谷”で採れるのです! ただ、夜じゃないと開花しない特別な花で、少し危険かもですが……」
(静光の谷……か。好都合だな)
レオンには心当たりがあった。
丁度、ライガを連れて行こうと思っていた場所なのだ。
「では、俺達が採ってきま――……」
と、その時だった。
「エルト! エルトォォォオオオオ!! 俺が来たぞぉぉお!!」
扉を挟んでいても部屋に響き渡る大声。
レオンとライガはぎょっとする。
「……なな、何だ何だ!?」
「ああもう……っ、最悪のタイミングなのです……」
鳴りやまないノックの嵐に、エルトは疲れた様子でヨタヨタと歩いて行った。
恐る恐る鍵を開けた瞬間、勢いよく扉が開く。
「エルト! 今日も来たぞぉぉ! 心配は要らないぞ、俺が守ってやるからな!」
そこに立っていたのは、兵士のような子供用の甲冑を着た少年だった。
ちょうど、エルトと同い年くらいだろうか。その場でふんぞり返っている。
「ルグナス……。いま取込み中なのですが……」
「いいや、ダメだね! 未来の伴侶を守るのは俺の使命……って、あれ?」
少年は、興味津々でこちらに視線を送ってきた。
「おお! お客さんか、珍しいな! 俺は勇者見習いのルグナスってんだ」
「へぇ~、ソイツ、エルトの知り合いなのか? ……ん? 勇者見習い?」
ライガもルグナスに興味をもったようだが、その単語にピクリと反応した。
「ああ、違うのですっ! あくまで『自称』なのですよ。ルグナスの適性は≪付与術士≫なのです」
「良いだろ別に! 俺は勇者に憧れてるんだ! 付与術士なんて俺向きじゃねえんだよ!」
言い争う二人に割って入るように、ライガが声を掛ける。
「よぉ! 俺、ライガだ。宜しくな!」
続いて、レオンも席を立ってルグナスに深々とお辞儀をした。
「レオン、と申します。以後お見知りおきを」
「おぉ! 宜しくな? あ、ちなみにもうすぐエルトと婚約予定だ!」
突拍子もないその言葉に、思わずライガと共に目が丸くなる。
「……え? 婚約?」
「うわわわぁあああっ! 何てこというのです!?」
「良いだろ別に? お前が俺の嫁候補ってのは、もう周知の事実なんだし」
「君が勝手に言いふらしているせいなのです!!」
「んぁ? なぁおい、どういうことだ? エルトが……ルグナスの嫁?」
「まぁな! 俺たち、相思相愛のベストカップルだ!」
「あうぅ……。相思相愛になった覚えはないのです……」
にこやかに笑顔で対応するルグナスを余所に、あからさまに疲れ切った顔のエルト。随分と対照的な二人だ。
「ええっと……。どうしてそんな関係に?」
「ルグナスは僕の幼馴染なのですが、僕が錬金術師に選ばれたとのことで、関係を迫ってきたのです」
「んぁ? 錬金術師がどう結びつくんだ?」
「おいおい、知らねぇのか? 昔、勇者様には錬金術師の適性を持った伴侶が居たって話だ。だから俺も勇者見習いとして、錬金術師を嫁にすることにしたんだ!」
ライガは思わずレオンに視線を向けた。
当の本人も気まずそうに口を開く。
「あの、ルグナス様? 錬金術師が嫁になったからといって、勇者になれる訳では……」
「んなもん、分かってるさ! まぁあれだ、≪錬金術師≫は割とレア適性だしな。街にも3人しか居ねーし。俺がエルトを守ってやらねーとな!」
まるで自分の家のように勝手にテーブルに着き、ふんぞり返るルグナス。
エルトも渋々、もう一人分の茶を用意しながら呟く。
「≪錬金術師≫は『合成』や『分解』、他にも『分析』や『調合』が出来るので重宝されているのです。僕も街からの依頼で壊れた金物を直したり、薬草を調合して薬を作って生計を立てているのです」
「あっはっは! 何かリサイクルショップみてーだよな~!」
「ううううるさいのですっ! そういう言い方止めて欲しいのですぅっ!」
「何だよ、兄ちゃん。何か嬉しそうだな?」
「ああ……いや。何でもないよ」
騒がしい二人のやり取りを、レオンは微笑ましく見ていた。
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