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イレギュラー・マリオネット~人形達の休日~  作者: 流右京


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18/25

第18話「自称勇者、参上!」

「イレギュラー・マリオネット -The Wild Guardian-」の後日談にあたる話です。

前作はこちら

https://ncode.syosetu.com/n9755kt/

「修復薬……ですか?」


再び、エルトの家に戻ってきた3人。

話によれば、文字の擦れや綻びを修復できる薬があるとの話だった。


「そうなのです! こういった修復は錬金術師の十八番(おはこ)なのです。この合成薬のお礼に、提供しますです」


「おお! やったなレオン兄ちゃん。これで目的達成だな」


ライガも嬉しそうに喜んでいる。

正直、完全な状態で持ち替えられるならそれに越したことはない。


「ありがとうございます、エルト様。ちなみに、その薬はどこに……?」


「はいっ! 僕の作業部屋にありま……」


と、そこでエルトの動きが止まった。

ライガも何かを察したようだ。


「お前……。その部屋、さっき爆発させたんだよな?」


「ああああああ! そ、そうだったのですぅ~!!」


エルトは頭を抱えてうずくまった。

ライガは呆れたようにため息をつきながらも、口元を緩めた。


「おいおい……せっかくいいとこだったのに、台無しだぞ」


「うぅ……ご、ごめんなさいなのです……!」


今にも泣きそうなエルトの表情を見て、レオンは思わず声を掛ける。


「仕方ありません。やはり修復は諦めて――」


言いかけて、レオンはふと考え込むように視線を落とした。


「……あの、エルト様。修復薬の主成分は何ですか?」


「え? ええと……、ルミナの花の雫なのです」


(ルミナの花……確か、満月の夜に採れると植物図鑑に載っていたな)


少年時代に擦り切れるほど読んだ植物図鑑。

ルミナ草のページも、鮮明に思い出せる。


エルトが顔を上げ、ぱっと表情を明るくする。


「それで、それを蒸留した液体に月光石の粉を混ぜると――」


「完成するわけだな!」


ライガが腕を組み、うんうんと頷いた。


「で、その花はどこに生えてんだ?」


「ルミナの花は……この街の北にある“静光の谷”で採れるのです! ただ、夜じゃないと開花しない特別な花で、少し危険かもですが……」


(静光の谷……か。好都合だな)


レオンには心当たりがあった。

丁度、ライガを連れて行こうと思っていた場所なのだ。


「では、俺達が採ってきま――……」


と、その時だった。


「エルト! エルトォォォオオオオ!! 俺が来たぞぉぉお!!」


扉を挟んでいても部屋に響き渡る大声。

レオンとライガはぎょっとする。


「……なな、何だ何だ!?」


「ああもう……っ、最悪のタイミングなのです……」


鳴りやまないノックの嵐に、エルトは疲れた様子でヨタヨタと歩いて行った。

恐る恐る鍵を開けた瞬間、勢いよく扉が開く。


「エルト! 今日も来たぞぉぉ! 心配は要らないぞ、俺が守ってやるからな!」


そこに立っていたのは、兵士のような子供用の甲冑を着た少年だった。

ちょうど、エルトと同い年くらいだろうか。その場でふんぞり返っている。


「ルグナス……。いま取込み中なのですが……」


「いいや、ダメだね! 未来の伴侶を守るのは俺の使命……って、あれ?」


少年は、興味津々でこちらに視線を送ってきた。


「おお! お客さんか、珍しいな! 俺は勇者見習いのルグナスってんだ」


「へぇ~、ソイツ、エルトの知り合いなのか? ……ん? 勇者見習い?」


ライガもルグナスに興味をもったようだが、その単語にピクリと反応した。


「ああ、違うのですっ! あくまで『自称』なのですよ。ルグナスの適性ジョブは≪付与術士(エンチャンター)≫なのです」


「良いだろ別に! 俺は勇者に憧れてるんだ! 付与術士(エンチャンター)なんて俺向きじゃねえんだよ!」


言い争う二人に割って入るように、ライガが声を掛ける。


「よぉ! 俺、ライガだ。宜しくな!」


続いて、レオンも席を立ってルグナスに深々とお辞儀をした。


「レオン、と申します。以後お見知りおきを」


「おぉ! 宜しくな? あ、ちなみにもうすぐエルトと婚約予定だ!」


突拍子もないその言葉に、思わずライガと共に目が丸くなる。


「……え? 婚約?」


「うわわわぁあああっ! 何てこというのです!?」


「良いだろ別に? お前が俺の嫁候補ってのは、もう周知の事実なんだし」


「君が勝手に言いふらしているせいなのです!!」


「んぁ? なぁおい、どういうことだ? エルトが……ルグナスの嫁?」


「まぁな! 俺たち、相思相愛(ラブラブ)のベストカップルだ!」


「あうぅ……。相思相愛(ラブラブ)になった覚えはないのです……」


にこやかに笑顔で対応するルグナスを余所に、あからさまに疲れ切った顔のエルト。随分と対照的な二人だ。


「ええっと……。どうしてそんな関係に?」


「ルグナスは僕の幼馴染なのですが、僕が錬金術師に選ばれたとのことで、関係を迫ってきたのです」


「んぁ? 錬金術師がどう結びつくんだ?」


「おいおい、知らねぇのか? 昔、勇者様には錬金術師(アルケミスト)適性(ジョブ)を持った伴侶が居たって話だ。だから俺も勇者見習いとして、錬金術師を嫁にすることにしたんだ!」


ライガは思わずレオンに視線を向けた。

当の本人も気まずそうに口を開く。


「あの、ルグナス様? 錬金術師が嫁になったからといって、勇者になれる訳では……」


「んなもん、分かってるさ! まぁあれだ、≪錬金術師(アルケミスト)≫は割とレア適性ジョブだしな。街にも3人しか居ねーし。俺がエルトを守ってやらねーとな!」


まるで自分の家のように勝手にテーブルに着き、ふんぞり返るルグナス。

エルトも渋々、もう一人分の茶を用意しながら呟く。


「≪錬金術師(アルケミスト)≫は『合成』や『分解』、他にも『分析』や『調合』が出来るので重宝されているのです。僕も街からの依頼で壊れた金物を直したり、薬草を調合して薬を作って生計を立てているのです」


「あっはっは! 何かリサイクルショップみてーだよな~!」


「ううううるさいのですっ! そういう言い方止めて欲しいのですぅっ!」




「何だよ、兄ちゃん。何か嬉しそうだな?」


「ああ……いや。何でもないよ」


騒がしい二人のやり取りを、レオンは微笑ましく見ていた。

Copyright(C)2026-流右京

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