第9話「分かった気がする」
「……なぁ」
---
声が、少しだけ落ち着いていた。
---
「……はい」
---
後輩が警戒したまま答える。
---
「……分かったかもしれん」
---
「……え?」
---
「……これ」
---
スマホを持ち上げる。
---
例の動画。
---
「……これ、ただの映像じゃない」
---
「……」
---
「……タイムラグがある」
---
「……はい」
---
「……最初は、俺の動きが遅れてた」
---
「……そうですね」
---
「……でも今は違う」
---
「……」
---
画面を見る。
---
再生。
---
「……」
---
画面の中の自分が、
---
先に動く。
---
「……ほら」
---
「……」
---
「……これ、多分」
---
言葉を選ぶ。
---
「……未来の俺だ」
---
「……は?」
---
後輩が眉をひそめる。
---
「……先に動いてるだろ」
---
「……でも、それって」
---
「……記録じゃない」
---
言い切る。
---
「……予測でもない」
---
「……」
---
「……先に“決まってる”」
---
「……」
---
自分でも分かる。
---
無茶な理屈だ。
---
でも、
---
「……」
---
それ以外に説明がつかない。
---
「……」
---
動画の中の自分が、
---
また口を動かす。
---
「……」
---
数秒後、
---
自分の口も、
---
同じように開く。
---
「……」
---
「……ほらな」
---
「……」
---
後輩が何も言わない。
---
「……つまり」
---
少しだけ、笑う。
---
「……先に見ればいい」
---
「……え?」
---
「……この動画を」
---
画面を指差す。
---
「……全部見れば」
---
「……」
---
「……何が起こるか分かる」
---
「……」
---
後輩の顔が曇る。
---
「……先輩、それ」
---
「……合理的だろ」
---
食い気味に言う。
---
「……」
---
「……先に結果が出てるなら」
---
「……それを見ればいい」
---
「……」
---
「……そうすれば」
---
言葉が少しだけ弾む。
---
「……コントロールできる」
---
「……」
---
後輩が一歩引く。
---
「……先輩」
---
「……」
---
「……それ、見せられてるだけじゃ」
---
「……違う」
---
即答する。
---
「……これは“ヒント”だ」
---
「……」
---
「……向こうが見せてるんじゃない」
---
「……俺が見つけたんだ」
---
「……」
---
言い切った瞬間、
---
少しだけ、
---
安心した。
---
「……」
---
スマホが震える。
---
「……」
---
DM。
---
また、あのアカウント。
---
「……」
---
開く。
---
『その通りです』
---
「……」
---
口元が、歪む。
---
「……な」
---
後輩を見る。
---
「……合ってるだろ」
---
「……」
---
後輩は何も言わない。
---
「……」
---
続けてメッセージが届く。
---
『そのまま見てください』
---
「……」
---
『最後まで』
---
「……」
---
「……ほら」
---
スマホを持つ手に力が入る。
---
「……やっぱりそうだ」
---
「……」
---
動画を開く。
---
再生。
---
「……」
---
画面の中の自分が、
---
こちらを見ている。
---
「……」
---
その目が、
---
さっきよりも、
---
はっきりと、
---
こちらを“認識”していた。




