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第8話「あなたが映っています」

「……」


---


“見つけてくださって、ありがとうございます”


---


その口の動きが、


---


頭から離れない。


---


「……今の、見ました?」


---


後輩の声が、わずかに上ずる。


---


「……ああ」


---


目を逸らせない。


---


画面の中の自分。


---


確実に、


---


“喋った”。


---


「……」


---


音はなかった。


---


でも、


---


はっきりと分かった。


---


「……なぁ」


---


「……はい」


---


「……これ、今の俺だよな」


---


「……そう見えます」


---


「……」


---


見える、じゃない。


---


“そうとしか思えない”。


---


「……」


---


画面の中の自分が、


---


指を動かす。


---


一拍遅れて、


---


自分の指が動く。


---


「……」


---


「……先輩」


---


「……」


---


「これ……逆じゃないですか」


---


「……ああ」


---


小さく答える。


---


「……俺が、真似してる」


---


「……」


---


後輩が何も言えなくなる。


---


「……」


---


もう一度、画面を見る。


---


今度は、


---


画面の中の自分が、


---


ゆっくりと顔を上げる。


---


「……」


---


こちらを見る。


---


「……」


---


現実の自分は、


---


まだ動いていない。


---


「……」


---


数秒。


---


遅れて、


---


自分の首が持ち上がる。


---


「……」


---


同じ角度。


---


同じ視線。


---


「……」


---


心臓が、うるさい。


---


「……これ」


---


「……はい」


---


「……ズレてるよな」


---


「……さっきより、広がってます」


---


「……」


---


数秒だったズレが、


---


確実に伸びている。


---


「……」


---


息を吸う。


---


吐く。


---


画面の中の自分は、


---


それより遅れて、


---


同じ呼吸をなぞる。


---


「……」


---


気持ち悪い。


---


自分の呼吸が、


---


誰かに操作されているみたいで。


---


「……先輩」


---


後輩の声が小さい。


---


「……一回、閉じません?」


---


「……」


---


返事ができない。


---


目が離れない。


---


「……」


---


そのとき、


---


スマホが震える。


---


「……っ」


---


DM。


---


あのアカウント。


---


「……」


---


開く。


---


『近いですね』


---


「……」


---


喉が詰まる。


---


「……なにがだよ」


---


言葉にしても、


---


意味は変わらない。


---


「……」


---


動画に戻る。


---


再生。


---


「……」


---


さっきと、


---


同じはずなのに。


---


「……?」


---


違う。


---


「……先輩」


---


「……ああ」


---


画面の中の自分。


---


「……」


---


笑っている。


---


「……」


---


現実の自分は、


---


笑っていない。


---


はずなのに、


---


「……」


---


口の端が、


---


勝手に持ち上がる。


---


「……っ」


---


手で押さえる。


---


「……やめろ」


---


誰に言っているのか分からない。


---


「……先輩!」


---


後輩が一歩、距離を取る。


---


「……顔、変です」


---


「……」


---


押さえているはずの口元が、


---


ゆっくりと開いていく。


---


「……」


---


止まらない。


---


「……」


---


画面の中の自分が、


---


同じように口を開く。


---


でも、


---


「……」


---


そっちの方が、


---


わずかに、


---


“先”だった。


---


「……」


---


音はない。


---


なのに、


---


はっきりと分かる。


---


「……」


---


“いらっしゃいませ”


---


「……」


---


次の瞬間、


---


画面の中の自分が、


---


椅子から立ち上がる。


---


「……」


---


現実の自分は、


---


まだ座っている。


---


「……」


---


一歩。


---


画面の中で、


---


こちらに向かって歩く。


---


「……」


---


その距離が、


---


一歩ごとに、


---


現実と重なっていく。


---


「……先輩、やめてください」


---


後輩の声が遠い。


---


「……」


---


画面の中の自分が、


---


手を伸ばす。


---


「……」


---


気づいたときには、


---


自分の手も、


---


同じように、


---


前に伸びていた。

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