第10話「止めるな」
「……ほら」
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動画を指でなぞる。
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「……分かるだろ」
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「……」
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後輩は答えない。
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視線は画面じゃなく、
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俺の方を見ている。
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「……先輩」
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「……なんだ」
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「……もう、やめましょう」
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「……」
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聞こえている。
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でも、
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意味として入ってこない。
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「……なんでだよ」
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「……おかしいです」
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「……」
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「……最初から、全部」
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「……」
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「……誘導されてるみたいで」
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「……違う」
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すぐに否定する。
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「……これは」
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画面を軽く叩く。
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「……情報だ」
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「……」
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「……先に見えてるだけだ」
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「……」
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「……使えばいい」
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「……」
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後輩が一歩、下がる。
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「……先輩」
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「……」
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「……顔、やばいです」
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「……」
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気にしない。
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視線はもう、
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画面から外れない。
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「……」
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動画の中の自分が、
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こちらを見ている。
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じっと。
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「……」
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その目が、
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少しだけ細くなる。
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「……」
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笑っている。
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「……」
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数秒後、
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自分の頬も、
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同じように歪む。
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「……っ」
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止めようとする。
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でも、
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「……」
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止まらない。
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「……ほらな」
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かすれた声で言う。
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「……先に分かる」
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「……」
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後輩が首を振る。
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「……違います」
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「……何がだよ」
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「……」
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「……先に決まってるなら」
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言葉を選ぶように、
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ゆっくりと、
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「……それ、先輩が動かされてるってことじゃないですか」
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「……」
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一瞬、
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言葉が止まる。
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「……」
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でも、
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すぐに、
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笑った。
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「……逆だろ」
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「……え」
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「……先に分かってるなら」
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「……俺が合わせてるだけだ」
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「……」
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「……ズレてるだけで」
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「……本質は同じだ」
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「……」
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後輩が何も言えなくなる。
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「……」
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スマホが震える。
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「……」
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DM。
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開く。
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『いいですね』
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「……」
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口元がさらに歪む。
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「……見てるな」
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小さく呟く。
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続けて、
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『もう少しです』
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「……」
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「……ほら」
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後輩を見る。
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「……もう少しなんだよ」
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「……」
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「……ここまで来てやめるか?」
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「……」
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後輩が、
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ゆっくりと首を横に振る。
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「……やめてください」
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「……」
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「……それ以上見たら」
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「……」
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「……戻れなくなる気がします」
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「……」
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一瞬、
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ほんの一瞬だけ、
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手が止まる。
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「……」
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でも、
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その瞬間、
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動画の中の自分が、
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こちらに向かって、
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手を伸ばした。
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「……」
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数秒後、
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自分の手も、
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同じように、
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前に伸びる。
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「……ほら」
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小さく笑う。
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「……もう決まってる」
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「……」
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「……止められないんだよ」




