第5話「記録が残らない」
「……もう一回見せてくれ」
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「はい」
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後輩がスマホを差し出す。
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さっき送られてきた写真。
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二人。
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屋外。
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「……」
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見つめる。
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さっきも見たはずだ。
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「……」
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「……先輩?」
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「……いや」
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「……これ、こんなだったか?」
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「え?」
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後輩が首を傾げる。
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「さっきと同じですよ?」
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「……」
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分からない。
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何が違うのか。
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でも、
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「……」
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確実に、
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“違う気がする”。
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「……送ってくれ」
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「え?」
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「その写真」
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「あ、はい」
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すぐに共有される。
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自分のスマホに保存する。
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「……」
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「一応な」
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「記録として残しとく」
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「いいですね」
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後輩が頷く。
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「こういうの、あとで検証できますし」
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「……ああ」
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小さく返す。
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「……」
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そのまま、例のアカウントを開く。
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動画一覧。
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相変わらず、見覚えがない。
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「……一回、保存してみるか」
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「動画ですか?」
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「そう」
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「やってみます」
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後輩が自分のスマホで操作する。
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数秒。
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「保存できました」
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「よし」
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「あとで見返せば、内容分かるだろ」
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「ですね」
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その場では、それで十分だと思った。
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「……」
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数分後。
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「……なぁ」
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「はい?」
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「さっきの動画」
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「はい」
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「見返してみて」
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「いいですよ」
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後輩が保存フォルダを開く。
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動画をタップ。
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再生。
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「……」
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数秒。
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「……どうです?」
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「……」
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言葉が出ない。
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画面を見ている。
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はずなのに、
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「……」
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何を見ているのか、
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説明できない。
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「……いや」
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「分かんないですか?」
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「……ああ」
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「俺もです」
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後輩が苦笑する。
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「保存しても意味ないですね」
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「……」
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もう一度、画面を見る。
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確かに、映像はある。
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でも、
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「……内容が残らない」
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「ですね」
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「……」
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沈黙。
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「……写真は」
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ふと思い出す。
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「さっきの写真、もう一回」
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「はい」
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後輩が表示する。
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「……」
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見る。
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二人。
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屋外。
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「……」
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「……先輩?」
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「……これ」
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「はい?」
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「……さっきと同じか?」
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「……え?」
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後輩がもう一度見る。
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「……同じですよ?」
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「……」
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自分のスマホを取り出す。
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保存した画像を開く。
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「……」
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同じ。
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の、はず。
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でも、
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「……」
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並べる。
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二つの画面。
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同じ写真。
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の、はずなのに、
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「……」
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どこか、
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“合っていない”。
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「……なぁ」
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「はい」
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「これ、同じに見えるか?」
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「……はい」
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後輩は即答する。
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「同じです」
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「……」
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もう一度見る。
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同じ。
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違う。
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同じ。
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違う。
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「……」
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視線を外す。
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「……気のせいか」
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「ですね」
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後輩が軽く笑う。
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「ちょっと気にしすぎですよ」
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「……」
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そうかもしれない。
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そう思うことにする。
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「……」
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スマホを置く。
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そのとき、
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一瞬だけ、
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画面が暗くなった。
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「……?」
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すぐに元に戻る。
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「……」
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今のは、
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気のせいか。
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「……」
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もう一度、写真を見る。
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「……」
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さっきまであったはずの違和感が、
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消えている。
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「……」
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何が違っていたのか、
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もう、
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思い出せなかった。




