落窪姫、堂々の帰還をはたす
●法華八講は中納言邸で
法華八講の初日は、八月二十一日と決まりました。
御代替わりがあったのです、大納言となった道頼は超多忙の毎日を送っていますが、八講会の準備も怠りなく進めるのでした。
「御八講は、こちら(三条殿)でなさいますの?」
北の方(姫君)が尋ねます。
「どうしようかな。中納言殿の北の方や女君たちは、まだここの敷居を跨ぐ気になれないかもしれないね。中納言邸で執り行おう。私たちが向こうへ出向こう。中納言邸は少し修理したほうがいいだろうね。修理して、きれいに飾りつけをするんだ。越前守も、御八講プロジェクトの責任者に就けることにしよう」
「何から何まで、お心を尽くして考えてくださいますのね。嬉しゅうございます」
「あなたは二十日の晩に向こうへ行くといいよ。中納言邸は手狭だから、侍女たちは向こうには宿泊しない。四日間、通わせよう。車は七輛も用意すればいいかな。イベント屋って、考えなきゃならないことがいくらでもあるな」
●継母&異母姉妹たちとの対面
そうこうするうちに、あっというまに二十日の夜となります。
かつての落窪姫=大納言道頼の北の方は、継母や異母姉妹たちと対面します。何年ぶりの再会でしょうか?
対面の場に臨んでみると、大納言の北の方(姫君)があまりにもすばらしい衣装に身を包んでいるので、継母は吉田沙保里選手の速攻タックルを受けた気分になります。早くも、勝ち目、ないわ……。自分も自分の娘たちも、なんとも見劣りのする姿でいることよ……。
しゃーない、と継母はこの場は諦めることにします。とにもかくにも、何か挨拶の言葉を並べて恰好をつけなきゃ。
「落窪(おっと!)……いえ、姫君は、まだ本当に幼い頃に、私どものところへおいでなさいました。あなたも私の娘。実の娘。そう思っておりましたけれど、私はちょっとしたことでカッとなってしまいますの。生まれつきの性格ですのよ。どうしようもありませんの。相手の気持ちも考えずにものを言ってしまうところがありますのよ。あなたにも、ひょっとして、不快な思いをさせたかもしれませんわね。申し訳ないことをしましたわ」
大納言の北の方(姫君)は、心のうちでは、さすがにちょっと笑ってしまったのですが(君は、下には、少しをかしく思ふことあれど)、
「不快に思うことも恨みに思うことも、ございませんでしたわ。どうにかして、育ててくださったご恩への感謝の気持ちを知っていただきたいと、ずっと思っておりました」
「嬉しいことをおっしゃってくださること。ウチの子たちも婿殿たちも、みんなパッとしませんでしょ。親はいろいろ期待しても、なかなか思うようにはいきませんのよ(よからぬ者ども多く侍るなれば、思ふさまにも侍らぬに)。でも、あなたはこうして立派になられて。この屋敷の者たちは誰もが喜んでいると思いますわ」
異母姉妹たちは、「帰ってきた落窪姫」の堂々たる姿と、自分たちには真似できそうにない気品あふれる話し方に、圧倒されています。
その昔、母上はこの人に着古したウルトラライトダウンコートなんか着せていたわ……!
過去を思い出しては、冷や汗をかく異母姉妹たちなのでした。




