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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻二
71/105

賀茂祭りバトル③

●老中納言、意気消沈する


 老中納言が家司から、このところの家計の収支報告を受けているところへ、女童がやってきます。

「大殿さま、上さまと姫君がたがお帰りになられたようです」

「帰った? ついさっき、出かけたばかりではないか」

 何かあったのか、と老中納言は車宿りへ向かいます。


 何かあった、ようです。

 顔を泣き腫らした北の方が、女房たちに支えられて車から降りてくるではありませんか。


「ど、どうしたのだっ?」

「殿~、聞いてくださいましな」

 北の方は、この二時間ばかりのあいだに起きた事のすべてを、泣きながら、鼻水をすすりながら、しゃっくりをしながら、話します。


 老中納言は、話の途中から、もう腰を抜かさんばかりに驚き、わなわなと震えはじめるほどでした。

「ひどい辱めを受けたものよ。ああ、なんたること……!」

「殿、なんとしても仕返しをなさって――」

「出家する」

「はあ?」

「かくなるうえは、出家だ。それしかない」

「(寝ぼけたこと言ってんじゃねえ!)私たちはどうなりますの? 私や子供たちは? 三条殿だって、あんなにコストをかけて全面改築中ですのに」

「むむ…………」

「出家というお考えは撤回なさってくださいまし」

「撤回……する」

「現役続行?」

「続行」

「安堵いたしました」


 北の方はドラ声で女童を呼びつけます。ふだんなら、両手をパンパンと叩くところですが、肘が痛むのです。駆けつけた女童に命じます。

「ぶぶ漬けと大根の塩漬け。大盛りで。急いで持ってきてちょうだい」

 悲惨な目に遭った直後ほど、空腹感は増すもののようです。



●右大臣が道頼を問いただす


 世間は、車争いの件で持ち切りです。ワイドショーでは連日取りあげられ、ニュース番組では特集が組まれ、ネットは祭り状態となっています。


 さすがに、右大臣(道頼の父親)は息子に真相を問いただします。

「女性たちが乗った車が、乱暴な扱いを受けたと聞いた。二条殿の若い連中が関わったとも、聞いておる。どういうつもりなんだ」


「世間は騒ぎすぎです。こちらが物見のために杭を打っておいた場所に、向こうが駐車したんですよ。従者たちが、『ほかに駐車スペースはいくらもあるのに、よりによってここに』と腹を立てたんです。向こうは遠慮しないし、こっちの従者たちも熱くなって、勢いで床縛りを切ってしまった、というわけです」

 復讐のためには、親にもしれっと嘘をつく道頼です。鬼ですね、やはり。


「典薬助とかいう者が散々に傷めつけられたというが、どうなんだ?」


「それも大袈裟な噂が独り歩きしてるだけです。典薬助は無礼な言いがかりをつけてきたんです。懲らしめようと、従者たちがあの爺さんの冠を落として、ちょっと引き倒してやったに過ぎません。あの場には少将と兵衛佐(道頼の二人の弟)もいて、事の次第を見ています。世間からバッシングを受けるようなことなど、しておりません」


「いずれにせよ――人から後ろ指をさされるような真似は、するな。私はまだ納得しとらんぞ」



●二条殿の姫君の嘆き


 二条殿では、北の方(姫君)が、実家の中納言家の人々に同情し、嘆きを深めています。

 衛門が何か言いたそうにしていますね。


「あまり思い悩まないでくださいませ。お父君の中納言殿は、あの場には居合わせなかったんですし。典薬助がボコボコにされたのは、いい気味としか、言いようがありませんわ。いつぞや、北の方さまにいやらしいことを仕掛けようとしたじゃありませんか。天罰が下ったんです」


「まあ……! そこまで言うなんて。衛門、あなたはもう衛門督殿の侍女になっておしまいなさい。衛門督殿は私とちがって、あなたと同じように『リベンジ大好き』のようでいらっしゃいますもの」


 衛門は笑って、

「ご命令とあらば、不肖衛門、これからは衛門督殿にお仕えいたします。衛門督殿は私の願うとおりのことを何もかもなさってくださいますので、まことにまことに、上さまより大切なご主人さまと、お思いもうしあげております」



●親思いの子供たち


 老中納言邸では、今日も北の方のぼやきが止まりません。

「肘が痛い、痛い。ちっともよくならない。このごろ、箸さえ取り落としてしまうよ」

 太郎君は慰めの便りをよこしてくれます。

 法師である二郎君は言います。

「微力ながら、加持祈祷を励みますゆえ」

 元服を控えた三郎君と四人の姫君たちは、神仏に熱心に祈りを捧げます。母上の肘をお治しくださいませ、と。

 

 そうこうするうちに、肘の痛みは薄らいでいくのでした。子供を七人ももうければ、やはり、いいことがあるようですね。

 

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