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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻二
54/105

四の君、大泣きする

●蔵人の少将、愚痴る


 蔵人の少将は、三の君に皮肉を言います。

「世の中に男はいくらでもいるのに、どうしてまた面白の駒なんか引っ張りこんだんだい? 呆れてものも言えない。この私があんなのと一緒にこちらの屋敷へ出入りするなんて、我慢ならないね。あのアホは殿上でも相手にされてないんだ。なのに、こちらに縁づくなんて。中納言家の意向による、というわけなんだね」


 三の君は困惑するほかありません。

「私たちは何も知らなかったんです」


 三の君は妹が不憫でなりません。

 兵部の少輔は殿上で相手にされないアホ……なるほど、そうにちがいないわ。だから、あんな非常識な後朝の文をよこしたのよ。あの文のこと、蔵人の少将殿には言えやしない。それにしても、かわいそうな四の君……。



●四の君、大泣きする


 九時になっても、十時を過ぎても、それどころか昼になっても、兵部の少輔は婿として遇されず、放っておかれます。洗面の支度もされず、粥も出てきません。


 左近の少将を婿取られる幸運な姫君にお仕えしたい、と目をキラキラさせて集まっていた侍女たちは、みな雲隠れしてしまいました。アホの世話なんてまっぴら、というわけです。


 兵部の少輔は、粥はまだかな、まだかな、と思いながら、起きては寝、寝ては起き、起きては寝ています。


 四の君は、夫の寝顔を直視できません。

 ブサイクすぎる……。

 呼吸のたびに膨らむ兵部の少輔の鼻の穴を見るに、この穴から人が出入りできるんじゃない?とまで思ってしまいます。――四の君よ、いくらなんでも、それは無理。


 うとうとしていた兵部の少輔が目を覚ましますが、四の君は「母が私に何か用があるようですの」などと適当なことを言って、御帳台から抜け出してきちゃいます。


 じっさい、北の方は四の君に言いたいことが山ほどあるのでした。

「兵部の少輔が通ってきていると、すなおに話してくれていたら、こっそり事を運ぶこともできたのに。大騒ぎして露顕ところあらわしまでして、ウチじゅう大恥をかいたじゃないの。誰があなたと兵部の少輔の仲を取り持ったの? 言いなさい!」

 実の娘を、北の方は久々の鬼の形相で睨みつけます。


 四の君は、ただもうびっくりして、震えながら泣いてしまいます。

 あんなブサイクで間抜けな兵部の少輔を通わせたおぼえなんか、ないわ! でも……父上の前で、兵部の少輔がまことしやかな説明をしちゃったんだもの、もう逃げ道はないのね……。

「女って、こんな情けない身分なの? ただ振り回されるだけ! どうしたらいいのっ!」

 

 今度の一件を蔵人の少将はどう思っているのだろうと、お気に入りの婿さんの思惑を心配していた北の方ですが、末娘のヒステリカルパニックにぎょっとします。

 ほんと……どうしたらいいの?



●面白の駒、居づらくなって帰る


 正午です。

 兵部の少輔は、まだ、四の君の寝所で所在無げにしているようです。

 

 中納言はさすがに気になって、北の方に言います。

「兵部の少輔に手水ちょうずを使わせてやれ。何か食わせてやれ。あの男だって、あんまり気を悪くすれば、四の君を見捨てないともかぎらんぞ。あんなのに中納言家の末娘が捨てられたなどと世間の噂になったら、恥の上塗りではないか。こうなってしまったのも、四の君の宿世すくせ(運命)だったんだろう……。今さら泣いて騒いで、どうなる。取り返しはつかんのだ」


 北の方は困惑します。

「冗談じゃありませんわ。どうして、大切な娘をあんな奴にくれてやって、あんな奴を婿として世話しなきゃなりませんの?」


「軽はずみにものを言ってはならん。四の君があんな男に捨てられてしまったと世間で笑われたら、とんでもなくみっともないじゃないか」


「あの男が通ってくるのを止めたら、世間じゃいろいろ噂するでしょうけど、かまうもんですか。私はこっちから、あの男がそうするように仕向けてやりたいですわ。手水も粥も出したくありませんの!」


 というわけで、ひつじの刻(午後一時)になっても、誰も何の世話もしてくれません。

 兵部の少輔は居づらくなって、帰ります。



●新婚四日目の夜


 牛車に揺られ、兵部の少輔は帰宅します。

 カップ焼きそば二個とカレーパン二個をたいらげ、コーラをがぶ飲みします。

 すると、あっというまに、日が暮れて。


「あ、また夜になっちゃった。むぅ」

 兵部の少輔は、げっぷをし、やおら身支度を始めます。

「結婚しちゃったもんね~♪ ちゃんと通わなくちゃ」


 新婚四日目の夜です。

 空気を読まない男、兵部の少輔が、また中納言邸に到着します。


 四の君は大泣きに泣いて、寝所へ出向くのをいやがります。

 すると、これまた空気をぜんぜん読まないダメ親父が、切れて、思いやりのかけらもない説教を垂れるのでした。


「そんなに嫌だと思う相手を、人目を忍んで通わせていたのは、どういうわけなんだ。露顕ところあらわしまでして世間に吹聴した仲だというのに、今になってわがままを言うとは、親きょうだいに重ねて恥をかかせようというのかっ!」


 中納言は、何をそんなに意地になっているのか、末娘を執拗に責めたてます。

 四の君は泣きじゃくりながら、寝所へ入っていきます。

 兵部の少輔は、またおろおろしてしまいます。

「ど、どうして、そんなに泣いているの??? 困ったな……」

 困ったな、困ったな、と言いながら、今夜も前進あるのみの兵部の少輔なのでした。

 …………。



●四の君、身ごもる


 四の君は毎日泣き暮らし、北の方もなんとかして兵部の少輔=面白の駒と縁切りしたいと悩んでいますが、中納言は頑固なままです。どうにもなりません。


 年が暮れていきます。

 兵部の少輔は毎日通ってきますが、四の君は、寝所で迎えることもあれば、待ちぼうけをくわせることもありました。


 そんなふうではあったのですが、ままならぬ宿縁というべきか、あっというまに、四の君は身ごもってしまいます。


 北の方は落胆を隠しません。

「待ち望んでいる蔵人の少将殿のお子は生まれずに、あの間抜けに子孫誕生とは(このれ者のひろごること)」

 四の君は、母親が嘆くのも当然のことと思い、もう死んでしまいたい、とも思うのでした。


 …………。


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