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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻二
48/105

あこぎ、衛門となる

●浮かれる中納言家

 

 中納言邸では、四の君との縁談話を少将道頼が「喜んで承諾した」と聞いて、嬉しや、とばかりに大騒ぎで準備に入ります。

「落窪がいないのが痛いね。裁縫を任せられるのがいない」

 継母=北の方は愚痴ります。←←頭、オカシイ。


「少将の気が変わったら大変だ」

 中納言は、急いで結婚の日取り(婿候補が最初に通ってくる日)を決めます。十二月五日です。


 蔵人の少将は、几帳は新調したほうがいいだろうな、風情のある屏風も一双揃えるか、などと舅が気忙きぜわしく言っているのを耳にします。夕食後のデザートをつまみながら、三の君に話しかけます。

「どなたを婿取りされるの?」

「左大将殿のご子息の、左近の少将殿とか、聞きましたわ」

「左近の少将殿! すばらしい人だよ。私も親しくおつきあいして、いっしょにこちらへ出入りするってのは、うん、悪くないねぇ」


 蔵人の少将の賛同を漏れ聞いた北の方は、「中納言家の面目躍如!」と、有頂天になります。


 少将道頼は、姫君の反対を押しきって、やはり四の君との縁談話を進めるようですね。

 復讐劇の幕が、切って落とされました。



●あこぎ、衛門となる


 十一月もつごもりとなりました。

 二条殿には、新参の女房や女童たちが、十人以上も揃いました。

 和泉守の従妹は、兵庫という女房名で、仕えてくれることになりました。和泉守から、しっかりお仕えするように、と送り出されてきたのです。


 あこぎは、晴れて、女房へと昇格しました。

 女房名は衛門です。あこぎの父親か兄弟が、衛門府の武官だったのでしょうか。かっこいいですね。

 サラリーも(現金ではありませんが)支給されます。


 装束も、これまでは女童でしたから、汗衫かざみ姿でしたが、唐衣裳からぎぬもというスタイルになります。

 紅の長袴を着け、ひとえうちき三~五枚の上に唐衣(丈の短いジャケット)を羽織り、裳(後ろ側だけの付け裾、トレーン)をきりりと結びます。

 

 衛門。

 立派な名前をもらったあこぎですが、小柄で、まだどことなくあどけないんですよね。それでいて、いつも何の不安もなさそうに、自信に満ちて立ち働いているんです(思ふことなげにてありく)。


「あこぎ、かわいくて頼もしいな」

「ええ。あこぎは頼もしくて、やっぱりかわいらしい」

 少将道頼も姫君も、あこぎに全幅の信頼を寄せ、身内のように大切に思うのでした。



●ゴッドマザー


 そうこうするうちに、左大将の北の方=道頼の母親が、息子の私生活の変化に気づきます。


「二条殿に女性を住まわせているとか聞きましたよ。本当なのですか? 本当なら、中納言殿に色よい返事をなさったのは、どういうことなのです?」


「母上にはお知らせしてから、と思ってはおりました。二条殿には誰も住んでいなかったので、しばらくのあいだ、とだけ思って。後先あとさきになってしまいました。申し訳ありません。彼女には、母上からも文などお贈りいただけませんか。中納言殿は、とにかく、この縁談に乗り気でおいでなのだと聞いております。まことに結構なこと、と承ったしだいです。まあ、男は妻一人と決めたものでもないでしょう。妻同士も、うまくやっていくものじゃないんですか」※


「なんと……ずいぶん思い上がったことを言うものですね。妻をたくさん持てば、その人たちを悲しませることになりますよ。あなただって苦しむことになります。二人の妻を持つなんて、およしなさい。二条殿に住まわせた方が本命だというなら、その方一人と心に決めて、四の君とのご縁談はお断りなさい。二条殿においでの方には、近いうちに文をお贈りいたしましょう」


 近いうちにと言った母親ですが、もうその日のうちに、息子の嫁さんである姫君と文のやりとりを始めるのでした。母親は文に添えてプレゼントも贈ります。綾絹や薫物たきものなどでしょうか。

 

 姫君からの返書は、いやみのない内容が達筆でしたためられていて――つまり、優等生的なのですね――当然ながら、高ポイントを獲得しちゃいます。

 道頼の母親は満足げに微笑みます。

「いい方のようね。お手紙の書きぶりも筆跡もすばらしいわ」

「でしょう?」


「どこのお嬢さんなのですか? この方に決めておしまいなさい。娘を持つ身としては、二条殿にお住まいのこの方が、どんなお気持ちでいらっしゃるかと思うと、心が痛みますよ」


 道頼は芝居をつづけます。

「二条殿のこの人も、けっして忘れたりはしませんよ。でも、ほかの女性にも興味があるんですよね」

 微笑みながら、しれっと言います。

「まあ……呆れたこと」

 母親も、眉をくもらせながらも、笑います。


 少将道頼の母親=左大将の北の方は、心やさしく、美しい方なのでした。


 道頼の母親は、強欲で下品な継母の対極に位置する女性として描かれていますね。中納言家よりワンランクもツーランクも上の上流家庭のかなめとなる、優雅なゴッドマザーです。


 道頼は、ちょいマザコンかな、という印象もありますね。いずれにしても、道頼は両親から深く愛されて育ったようです。


※中納言殿は、とにかく、この縁談に乗り気で~~~妻同士も、うまくやっていくものじゃないんですか――このあたりの部分は、参考にさせていただいている二つの現代語訳が、かなり違います。採用されている仮名文字の底本がそもそも異なりますし、原文の解釈も分かれますので、現代語訳もさまざまになりますね。


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