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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻二
47/105

道頼、四の君の婿に???

●そろそろ身を固めたら?


 道頼が父・左大将のいる実家へ戻って、理髪などをさせているところへ、侍女の一人がやってきます。四の君との縁談の仲立ちをしている侍女です。


「ちょっと、よろしいですか? 中納言さまから、また、ご連絡をいただきまして。『わけあって、年内にお話を進めたい。ついては、少将殿からお文をいただきたい』とのことです。てゆーか、ガチ催促されちゃってるんですけど……」


 当時の結婚は、ふつう、先ず男性が女性に「お逢いしたい」旨の文(和歌)を贈ることから始まります。女性は、一通目は無視する、二通目にも色よい返事はしない(乳母や母親が代筆する)、三通目あたりで「お逢いしてもよくってよ」を匂わせる文を返して、ようやく男性が通ってくるのです。

 中納言は、少将道頼にその最初の文を贈ってくれるように頼んでほしい、と左大将家の侍女をせっついているのですね。


 そばにいた左大将の北の方(道頼の母)が、侍女の話を聞いて、苦笑します。

「女性のほうから文の催促とは、あべこべの話ですわね。でも、こうまでおっしゃるのだから、聞いてさしあげなさいな。そしらぬ顔では、四の君がお気の毒でしょう。それに、まあ……あなただって、いつまで独り身でいるつもりなのです? みっともないですよ」


「あちらがその気でいるなら、私をさっさと婿取ればいい。文は通うようになったら贈りますよ。きょうびは、形式ばった文のやりとりなんか無くても、結婚しちゃうらしいですよ」

 道頼は微笑み、母親にウィンクして、その場を離れます。



●独身の部屋に別れを


 自室へ戻った道頼です。

 ちょっと甘酸っぱい気分で、室内を見回します。

「バチェラーの日々よ、さらば、だ」


 自分で描いて御簾のところどころに貼っておいたエロっぽい戯画は、ぜんぶひっぺがして丸めて屑籠へ捨てます。この戯画、蹴鞠の仲間うちでウケたっけ、なんて思いだしながら。

 そして、ふだん使っている厨子などの調度類を、シロネコヤマ〇ホームコンビニエンスⓇで二条殿へ送ってしまいます。


 がらんとした室内。

 参内する時刻が迫っていますが、姫君へ宛てて文をしたためます。ついさっき別れたばかりなんですけどね。


『どうしてるかな? ちょっとの間でも気になってね。これから参内するところ。寄り道せずに、急いで帰るからね。内裏から帰ったら、あなたが私を待っていてくれるなんて、信じられないほど嬉しい。この嬉しい気持ちを衣の袖に包んだら、ぱんぱんに膨らんじゃって、袖が破けちゃうな、きっと。夫として妻のあなたに逢うって、ちょっと照れるっていうか、気恥ずかしい……Love&kiss』


 姫君からの返しは、

『つらいと嘆き悲しんでいたあいだに、私の衣の袖は涙で朽ちてしまいました。私の嬉しい気持ちは何に包んだらいいのでしょう? Kiss&love』



●叔母さんからの返信


 和泉守いずみのかみの妻――あこぎの叔母さんから、返書が届きます。


『事情がわからず、昨日こちらから文をさしあげたところでした。そうしたらね、文を持っていったウチの使いの者は、あこぎという女童はトンデモなことをしでかしてとんずらしやがった、とか言われたのよ。危うくボコボコにされそうになって、逃げ帰ってきたの。

 

 中納言家ってどうなってるのよ、やばい系のワイルドバンチだったの?って、もうびっくりするやら、あなたのことを案ずるやらで。無事でいてくれたのですね。安心しました。

 

 侍女の件は、いろいろな伝手つてや斡旋業者に頼んでいるところです。あとで連絡しますね。残念ながら、今ウチにいるのは、あまり使いものにならない者ばかりで……。でも、和泉守の従妹がここにいるのだけど、この人はしっかり者よ。そちらにお仕えするのに適任だと思うわ』



●プチ夫婦喧嘩


 日が暮れます。

 約束のとおり、道頼は内裏からまっすぐ二条殿へ帰ります。

 道頼と姫君は、甘い新婚第一夜を過ごすことになるはずです。

 はずです、が――


「四の君との縁談話だけどね。さっさと私を婿取ればいい、と応じておいたよ。別の誰かを私の替え玉にして送りこむ、という寸法さ」


「まあ! 悪ふざけが過ぎますわ。意に染まないお話なら、率直にそのようにお伝えになるべきです。そんな悪ふざけ、私には受け入れられません。四の君がどれほど傷つくか……」


「あの北の方に徹底して悔しい思いをさせたいんだ。地団駄踏ませて、めらめら炎上させたい。復讐だよ」

「そのことはお忘れになってください。私が四の君を憎んでいるとでもお思いなのですか?」


「あなたって人は……。気弱に過ぎるよ。どれほどひどいことをされても、その怒りを心にとどめておけないの?」

「怒りなんて溜めこまないほうが、私には気楽なんですもの」

 いつになく強い口調で言うと、姫君は衾を引き被り、横になってしまうのでした。

 

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