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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻二
45/105

好色爺さん、逆ギレする

●継母、典薬助を責める


 さて。

 あこぎが置いていった典薬助の例の文です。

 一読、継母の頭に血がのぼります。

「寝てないんだね、あの二人!」

(まだ寝ざりけりと思ふに)

 ドストレートな表現です。継母の底意がはっきりします。


 典薬助、姪である北の方=継母に呼びつけられ、目の前に座らされます。伯父ですが、稼ぎのない居候なので、こういう図式になるのですね。とほほ。


「落窪の君は逃げてしまいましたよ。伯父上に預けたつもりでしたのに。男女の仲におなりではなかったのですか」

「ひょ……そのことじゃが……」

「ここにある伯父上の文。これを読むかぎり、そう考えるほかなさそうですわね」


「そうツケツケ言わんでも……姫君が胸を病んでおられたあの夜は、とにかく、お苦しみがひどくてのぉ、私をおそばへ近寄らせてもくださらなんだ。あこぎも姫君にベタにくっついておっての、姫君のお忌日だと申すのじゃ。姫君ご自身も、今宵ばかりは何もせずにおいてくだされ、とおっしゃって。ひどくお辛そうでな。だもんで、何もせずに姫君のおそばにそおーっと臥しておりましたのじゃ」


 どんくさ……。

 継母のこめかみにブチ切れマークが刻まれつつあるようです。


「で、昨夜は、強引にでもこといたそうと思って、あの部屋の前まで行ったんじゃが、戸が開かないのじゃ。姫君が、内側から鎖をさして、開けてくれんのじゃ」

「でも、伯父上、あの部屋は内側から鎖をさしたりできませんのよ」

「ひょ? そうなのか……? じゃが、とにかく戸は開かなかったのじゃ」

 継母は、継子とあこぎとが何か細工をしたんだな、と気づきますが、典薬助の話のつづきを聞くことにします。


「えらい苦労をしましたのじゃ。夜中まで、あの板の間で頑張ってみたのですわ。そうこうするうちに、風邪をひいて、腹がごぼごぼと鳴りはじめおって。一、二度は聞き流して、遣戸を開けるほうに全身全霊を傾けたのじゃよ。どうしても開けるぞい!と思って。ところがじゃのぉ、何とも見苦しい事態と相成って――」

「見苦しい事態?」


「気が動転してしもうてのぉ。ひとまず姫君のおそばから下がって、衣のなかにしてしまったモノを洗っているあいだに――」

「はあ???」

「洗っているあいだに、夜が明けてしもうたのじゃ。というわけで、結婚の不首尾は、この典薬助が怠けたせいではないのじゃよ」

(しつつみたりし物を洗ひしほどに、夜は明けにけり。翁の怠りならず)


 あらら、典薬助は何を考えているんでしょうね?

 夜中に汚れ物の始末を自分でして、必死に恥を隠そうとしていたはずなのに、相手が身内だからでしょうか、みっともないアクシデントの詳細をしゃべってしまいました。


 少し離れたところには、若い侍女たちも控えていて、聞き耳を立てています。典薬助は、羞恥心ばかりか警戒心も緩くなっているようですね。一夜にして急激に老化が進んだのでしょうか?


 北の方=継母は、ブチ切れマークをピキピキさせながらも、つい、笑ってしまいます。

 若い侍女たちは、もう、死にそうなほどに笑いころげます。


「もう結構です。わかりました。あっちへ行っちゃってください。言いようもなく忌々しい……頼んだ相手が悪かったわ……」

「その言いぐさは無かろうものを。私だってね、ぜひなんとかして、と思ったんじゃよ。じゃが、老いの身のかなしさよ、粗相しやすくなっとったんじゃろう、漏らしてしもうた。想定外のことよ」


 典薬助よ、なぜに自分の失敗談をリピートする?

 ほらほら、鬼ババが苛立っていますよ。

 ピキッ!

「もう結構です、と申しました」


「想定外は想定外じゃ。しかたなかろう? そなたの伯父の典薬助じゃよ、私は。全身全霊、傾けたんじゃ。遣戸を開けようと」

 典薬助、逆ギレです。ぷりぷりしながら行ってしまいます。オナラも、ぶりっ、と放ってしまいます。

 

 若い侍女たち、またも大爆笑です。

「やーめーてー」

「死ぬぅ」

 などと笑いころげて床をぱんぱん叩き、涙を流すのでした。


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