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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻二
44/105

二条殿でのディナー

●祭り気分


 二条殿です。

 道頼は姫君を車から下ろすと、お姫さま抱っこして寝所へ直行します。直衣の紐を解くのも、もどかしく、熱いラブラブのひとときをすごします。


 この二条殿には両親もおせっかいな乳母もいませんから、気楽なものです。

 道頼と姫君は、一つふすまにくるまって、ここ数日のできごとを互いに語りあっては泣いたり笑ったりするのでした。


 典薬助の臭いアクシデントの話を聞いた道頼は、爆笑します。

「不運な懸想人だね。北の方が知ったら地団駄踏むだろうな」

 ちょっと困り顔で苦笑する姫君のかわいらしい鼻先を、指でつんつんしちゃったりする道頼です。


 帯刀もあこぎと、汗をかくほどに仲良くしちゃいます。

「もう何の心配も無いね」

「無いわ。少将の君とあなたのおかげよ。感謝してもしきれないわ」

「あこぎこそ大活躍したよ。僕の頭がよくて勇気のある奥さん。誇らしいよ」


 波乱に満ちた一日が、早くも暮れていきます。

「少将殿と姫君にディナーを召し上がっていただかないとね」

「食材は何かあるの? 料理人はいるの?」

「実はね、朝ここを掃除させているあいだに、ちょっと考えておいたんだ。鍋釜のことが得意な雑色を一人呼んでおいた。酒に果物にお菓子も用意してあるよ」

 

 帯刀は二条殿の主顔あるじがおで、御厨子みずし(キッチン)を仕切ります。

 今宵のディナーは海鮮具沢山のパエリアなのでした。


 さらに帯刀は、牛飼童うしかいわらわブラザーズという即席のコーラスグループに、振り付きで、次々に歌わせます。

 牛飼童たちが藤井風の『まつり』©を歌うころには、道頼と帯刀はべろんべろん、あこぎもほろ酔い気分です。

 姫君はただただ幸せで、胸がいっぱいになり、涙ぐんでいるのでした。



●中納言家の人々、大騒ぎする


 同じころ、中納言家の人々が、賀茂の臨時祭見物から帰宅します。

 すると、どうしたことでしょう、姫君を閉じ込めておいた部屋はもぬけの殻です。錠前は壊され、遣戸は外されて床に放り出されています。


「どうなってるのっ! 殿! 殿! 部屋がめちゃくちゃ。落窪がおりませんの。ご覧になってくださいまし!」

「何ごとじゃ? よう聞こえんのじゃが?」

「ああっ、もうっ!」

 継母は衣の裾をからげて、ドスドスと居間へ駆け込みます。夫の中納言の手をつかみ、驚きの現場へ引っ張っていきます。


 中納言も部屋のようすを見て、血相を変えます。

「ここは我が寝殿の一部だぞ。誰かが寝殿にまで入りこんで、このような狼藉をはたらいたのだぞ。誰も咎めなかったのか! 居残っていた者はどこにおる!」


 継母はあこぎを捜します。

「あこぎ! どこに隠れておるのかえ!」

 あっちこっちの襖障子を開けたり、御簾を撥ね除けたりします。

「落窪の間かしら?」

 行ってみると――


 ここも、もぬけの殻です。

 つい先日目にした几帳も屏風も※ありません。


「あこぎ。盗人め。こちらの留守を見計らったんだね。すぐにも追いだすつもりだったのに、三の君が、使いいい童だから、とか言って。結局こんなふうにしてやられたよ!」

 継母は、人を見る目がないと言って、三の君まで叱りつけるのでした。


 中納言は、居残り組の男の一人を詰問します。

「な、何がなんだか存じませんので。下簾(絹)を垂らした、きれいな網代車が入ってきたんですが、すぐに出ていきました」

「それじゃ。女ではない。男の仕業よ。白昼堂々、我が屋敷へ押し入るとは……どんな奴なのか……?」

 忌々しい気分で中納言はあれこれ想像しますが――後の祭りです。


※几帳も屏風も――あこぎの叔母さんは、几帳だけでなく屏風も貸してくれたようです。また、脱出の際に、これらの借り物をあこぎがしっかり持ち出したことが、ここで明らかになります。さらに、あこぎを盗人呼ばわりする継母は、この邸にある物はすべて中納言家所有の物と考えているらしいことが、わかりますね。


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