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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻二
36/105

好色爺さん、はしゃぐ

●典薬助、あこぎに話しかける


 日が暮れます。

 典薬助はハイパー浮き浮き状態です。

 手足が勝手にひょこひょこ動いちゃって、一人でマンボなんか踊っちゃったりしています。途中で躓いたりこけたりしますが。

「ひょひょ~っ、ウッ!」

 マンボもどきを踊りながら、あこぎに話しかけます。

「あこぎ、おまえはこれから私のことを大切に思うじゃろうねぇ」

 典薬助はにやにや笑って、ところどころ欠けた痩せっ歯をむきだしにしています。


 きもっ! 

 思わず身震いしてしまうあこぎです。

「どういう意味でしょうか?」

「わしはの、落窪の君との結婚のおゆるしを賜ったのじゃよ。おまえは落窪の君に仕えるわらわじゃろう?」


 この爺さん、今、何て言った!?

 あこぎは耳を疑います。

 数秒後、あまりの忌まわしさに涙がじゅわっと溢れてきてしまいます――が、なんとか冷静さを保ちます。

 どういうことなのか、爺さんからしっかり聞きだしておかないと。


「典薬助殿が姫君とご結婚……さようですか。婿君がおいでにならないので、私も物足りなく寂しく感じておりましたので、これはこれは心強いこと」

「じゃろう? ひょひょ♪」

「ところで、姫君とのご結婚は、大殿さま(中納言)がお許しになられたのですか、それとも、北の方さまがそうおっしゃられたのですか?」

「中納言殿は私をごひいきくださっておいでだし、身内の北の方は当然のこと。どちらもご承知のことよ」


 典薬助の顔は、スタミナドリンクのせいか、はたまた、あやしげな錠剤がやたらに効いてきたのか、赤みをおびて、妙にてらてら光っているではありませんか。

 ぞぞぞ。あこぎのうなじの産毛が逆立ちます。

「で……姫君とのご結婚はいつなのでございましょう?」

「今宵よ」

「今日は姫君の忌日きにち※です。嘘じゃありません」

「ひょひょ? じゃがなぁ、姫君にはすでに通っている男がいるとか。ぼやぼやしてられんよ。早くウェディングベルたらをキンコラカ~ンと鳴らすべし、と思うんじゃよ」

 今宵じゃ、今宵じゃ、と浮かれて、典薬助は行ってしまいます。


※忌日――原典は「今日けふは御忌日(きにち)なるを」となっています。忌日には生理の意味もあるのですが、ここは、陰陽道の占いに従ってさまざまなことを慎む日(物忌み)、と解釈しておきます。



●姫君、絶望する


 とんでもない一大事! 

 姫君にお知らせしなくちゃ。

 あこぎは足音を忍ばせ、小部屋へ近づきます。


 地獄耳の北の方は、中納言のディナーのお世話をしているようです。中納言は歯が悪いので、雉肉などのおかずを細かく刻んでくれ、と言うのです。北の方は、めんどくさいから全部ミキサーにかけちゃおうかしら、などと思う今日このごろです。


 あこぎはそっと戸を叩きます。

「どなた?」

「あこぎです。悪いお知らせがあります。大殿さまと北の方さま……いえ、北の方さまだと思いますが、典薬助殿を姫君と結婚させようとなさっておいでです」


「典薬助殿って、あの典薬助殿!? いつだったか、四条あたりで、猥褻物陳列罪で逮捕されちゃったとかいう噂の!? 髪の毛なんてもうまばらでまげも結えない、あのご老人!?」


「噂は存じませんが、はげちょろ髪の典薬助殿です。あの爺さんがここへ来ます。お気をつけなさいませ。姫君の忌日だと言ってはおきましたが。とんでもないことになりました」

 ようやくそれだけを言って、あこぎは自室へ戻ります。北の方に見つかりはしないかと、いつもひやひやしているのです。


 姫君は胸部をグーパンチされたかのような衝撃を覚えます。

 本当に、胸がずきんずきん痛みはじめます。

 死んだほうがまし!

 死んだほうがまし!

 痛みのあまり、床に突っ伏してしまいます。


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