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なんちゃって落窪物語  作者: fukuneko
巻一
33/105

幼くも賢い三郎君

●姫君への手紙とおむすび


 姫君に召し上がるものを差し入れなくては。姫君の体調も心配だわ。

 あこぎはあれこれと心配して、強飯こわめし(蒸したもち米)のおむすびをこしらえます。姫君宛ての手紙も書きます。

 でも、どうやって、これを差し入れたらいいの?


 そのとき、庭で遊んでいる幼い三郎君さぶろうぎみが目に入ります。姫君からしょうの琴を習い、姫君にもあこぎにも懐いている中納言家の末子です。


「三郎君、ちょっとこちらへ」

「なあに?」

「姫君のことです。姫君は、今、北側の小部屋に閉じ込められておいでなのです」

「えっ?」

「大殿さまと北の方さまのお怒りに触れて、おとがめをお受けなさったようです」

「どうして?」

「どうしてか、あこぎも存じません。でも、姫君が臭い小部屋に閉じ込められておいでなのを、どうお思いになりますか? お気の毒にお思いには、なりませんか?」

「なるよ! なるに決まってるじゃない」


「それなら――」

 と、あこぎは幼い三郎君の耳元に、顔をぐっと寄せます。

「誰にも気づかれないように、この手紙と強飯のおむすびを姫君に差し入れてもらえますか」

「うん。いいよ」

 こくんとうなずき、三郎君は、あこぎから託されたものを懐にしまいます。落とさないように、お腹のあたりを手でしっかり押さえます。



●利発な三郎君の大活躍


 三郎君は姫君が閉じ込められている小部屋の前にいます。

「ここ、開けたいよぅ! ここ、開けたいんだってばぁ! どうしても開けるんだからぁ!」

 北の方がすっ飛んできます。

「何、騒いでるのっ! ここを開けたい、って、どうしてなの?」

くつが中にあるんだもん。それ、取りたいんだもん」

「おまえの沓なんか、まだ無いでしょ。二郎君が履いてたのなら、あるでしょうけど」

「それだもん。お兄ちゃまの沓、履きたいんだもん。履きたいの! 今すぐ!」

 三郎君は、鎖のさしてある枢戸をばんばん叩きます。演技派です。


 そこへ、中納言が顔を出します。

 中納言は末っ子の三郎君をかわいがっています。いつも甘いのです。

「沓を履いて得意顔で歩き回りたいんだろう。早く開けてやれ」

 北の方は、三郎君の腕を邪険に引っ張ります。

「あとで開けるから。沓を取るのも、あとになさい!」

「やだ! 今すぐでなきゃ。――いいよ。こんなちゃちい戸、僕がぶっ壊しちゃうから」

「おいおい」

 と中納言が笑いながら二人の間に割って入り、枢戸にさしてあった鎖を外します。


 三郎君は枢戸をさっと開けて、小部屋のなかへ入ります。

 一瞬も迷わず、滑るように動いて託されたものを姫君に手渡し、小鹿のように飛び出るのでした。

「おかしいな。沓、ここには無いや」

 北の方のこめかみに、またも、ブチ切れマークが刻まれます。

「何かごまかしたね。ごまかしてないなんて言わせないよ!」

「知らないも~ん」

 

 三郎君は逃げていってしまいますが、北の方は追いかけていって、首根っこを押さえます。

「お仕置きだよっ!」

 ばしっ!

 ばしっ!

 末子の尻を本気でしばく鬼ババです。


 臭くて薄暗い小部屋に、隙間から光が射しこんでいます。

 姫君は、あこぎからの文をその光にかざして読むのでした。

『姫君さま、どうかお心を強くお持ちになってくださいませ。きっときっと、お救い申しあげます』

 


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