継母の悪だくみ
●継母、奸計を思いつく
継母は、自室へ戻っても、ブチ切れマークが全身に広がるばかりで、眠れません。歯ぎしりします。
この悔しさ、憎らしさ、どうしてくれよう!
ありのままを殿(夫である中納言)に報告しようか……?
う~ん……それは、うまいやり方じゃないわね、たぶん。
落窪の間にいたあの男は、とんでもない美形だったわ。身に着けていた直衣だって、あれはきっとアルマーニかヴェルサーチ。
あの男がもし身分の高い貴族だったら、殿はむしろ喜んで、落窪の婿として迎えてしまうだろう。落窪が幸せになってしまう。
落窪は帯刀と理無い仲になった――そうだ、このシナリオで行こう。
落窪を落窪の間に放ったらかしにして、気ままにさせておいたから、こういうことになったじゃないの! と殿にはぶちかます。
ふっふっふっ。そんなふうに話をでっちあげて、落窪を部屋に閉じ込めてやろう。
閉じ込めて、あの男と逢わせないようにしたら、そのうちに男は落窪のことを忘れるだろう。
そうしておいて。
落窪に、あの好色な伯父をまとわりつかせてやる。
伯父は典薬助(医療医薬を司る典薬寮の次官)だけど、実のところ、ただの貧乏人。この邸の居候。目障りなだけの人だったけど、役に立ってくれる日が来ようとは!
継母は、邪悪な計略を思いめぐらしつつ、一夜を明かします。
そんなこととはつゆ知らず。
道頼は姫君と愛の語らいを重ね、夜が明けると、幸福感に満たされて、帰っていくのでした。
※継母が奸計を思いつくこの場面は、継母の内的独白のかたちで描かれています。千年前の物語とは思えませんね、やはり。
●姫君、装束をすべて縫い上げる
さて、蔵人の少将のための装束は仕上がったのでしょうか?
姫君は、ダーリン道頼が帰ったあと、朝七時のニュースも連続テレビ小説も見ることなく、ラストスパートをかけます。
継母は、装束が縫い上がっていなかったら、落窪をラップの芯で血が出るまでぶったたいてやる、と鬼の形相でほくそ笑むのでした。
ところが。
袴、下襲、袍。すべてきれいに仕上げ、きちんと畳んで重ねたものを、姫君は継母の使いの者に手渡したのでした。
超絶不機嫌になる継母。
「ちっ! 落窪のやつ、やり遂げおったわ」
当てが外れ、歯ぎしりしつつ、ラップの芯で自分の肩をとんとんと叩きます。中年期以降、肩凝りがひどいのです。
「ピップエレキバンⓇの買い置きはどこ! ピップは!」




