第48話 スクールカースト
実際のところ、私はアルの人気に怖気づいていた。
婚約者の私とアルとの仲が悪いと認知されているならそのままでもいいかなと思っている。本当の事は本人たちがわかっていればいい。いやぁ、ホント怖いんだよ、ドレスのお姉様方。変に目を付けられでもしたらたまったものではない。目立たず当たり障りなく平穏に学園生活を送りたい。
……そんなふうに思っていた時期もありました。
その日のカフェテリアはそこそこ混んでいた。
空いた席はないかなとキョロキョロ探し、運良く窓際の陽当たりのいい場所が空いていたので、その席に腰掛けようとした。
その時、
「ちょっとそこの貴女!」
と、声を掛けられた。
なんだろう?と声のする方向を見ると、ドレスの先輩方が3人立っていて、少し怖い顔で睨んでいた。
「貴女、一年生?」
「はい、そうですが……」
「その席は制服の生徒が座っていい席じゃないの。覚えておきなさい」
「え……?」
言われている言葉が理解できず、キョトンとしてしまった。
「言っている意味がわからないの? 頭の悪い子ね! そこは貴女みたいな貧相な制服の、一年生が使っていい席じゃないのよ。そういう決まりなの」
なんだ? その謎ルール。
……とは思ったが、それがここのルールなら仕方がない。余計な揉め事を起こすのも面倒だ。
私は「ごめんなさい」と席を離れた。
ちょうどトレイを持ったココルさんとレイナさんが近づいてきて、
「どうしたの?」
と、話しかけてきたので、
「なんでもない。あ! あそこ空いてる! あっち行こう」
と、促した。2人は何か言いたげだったが、結局黙ってついてきた。
席に着いて、ひと心地ついた頃、ココルさんが口を開いた。
「ヴィアンカさんってさ、なんというか、お人好しよね」
ココルさんの手のひらの中で、アイスコーヒーの氷がカランと音を立てた。
「知ってる? この学園の令嬢の中でカーストトップなのって、ヴィアンカさんなんだよ。学園内は皆平等を謳ってるけど、そんなの建前よね。どうしても家柄って意識されちゃう。ヴィアンカさんは筆頭侯爵家のご令嬢で、その上、王太子殿下のご婚約者でもあるわけでしょ。本当ならヴィアンカさんに逆らえる人なんて誰もいないの。なんだか勿体ない」
スクールカースト……
考えてもいなかった。そこに確かに存在する上下関係をはっきりと指摘されて、私は戸惑いを隠せない。
「さっきみたいな横柄な先輩方なんてビシッとさ。ヴィアンカさんなら注意して然るべきだと思うわけ」
な、なるほど……
ココルさんの言わんとすることもわかる。
でもあまり出過ぎたことはしたくない。『悪役令嬢』みたいな真似は私には出来ない。なんて。
……嗚呼、ダメだな、私って。弱腰で自分でも嫌になる。
「わかったわ。頑張ってみる……」
そう、小さな声で呟く私はとても滑稽だと思う。
気を取り直して、話題を変える。
「レイナさん、騎士団の見学、いつ行ける?」
私はレイナさんに話しかけた。
「えっ、あの話、本気だったの?」
「あれ? 嫌だった?」
「ううん、嬉しい。ありがとう。よく許可が頂けたわね。さすが殿下のご婚約者様」
「ふふ。いつもだったら、殿下にお伺いを立てるんだけど、彼、今長期で不在だから。誰に許可を得ていいかわからなくて、この前王妃様とお茶してた時に伺ったら、私が許可してあげるっておっしゃってくれたの。よかったわね」
「………….」
「……レイナさん?」
王妃様には割となんでも相談に乗ってもらっている。だから今回、真っ先にお伺いを立てたのも王妃様だったのだが。
無言で白目を向いてしまったレイナさんに、私は慌てた。
あれ? 私、何かやっちゃいました?
「ヴィアンカさんの無自覚無双、怖い。さすがカーストトップのご令嬢はひと味違うわね」
「ホント。ヴィアンカさんは今のままでいいのかもね。心配しなくて良さそう」
ふたりがコソコソ囁き合っていた。うむむ。
◇
その後、騎士団の演習風景を見学に行って、レイナさんの婚約者を紹介されたり。
お茶会に招かれて知り合いも増えて。
毎日を楽しく、慌しく過ごすうちに、1ヶ月はあっという間に過ぎていった。
次回、彼が帰ってきます。
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