第47話 渦中の人
「ヴィ、ヴィ、ヴィアンカさん!」
教室に戻ると、ココルさんとレイナさんが慌てたように駆け寄ってきた。
「い、今、生徒会長のリオル様が訪ねてこられたの。殿下の婚約者のヴィアンカ嬢は居ますかって」
「それでね。席を外してますって答えたら、挨拶に来ただけだから大丈夫だって。何かあったらすぐに生徒会を頼ってくるよう伝えてくれって」
ふたりが興奮して教えてくれた。
「そう……」
「えっ? えっ? ヴィアンカさんってホントに王太子殿下の……?」
「……まぁ、そうね」
「「「 ええ───!!! 」」」
ふたりだけでなく、クラス中がどよめいた。まぁ、無理もないだろう。渦中の婚約者がこんなところにいたんだものね。
すごい! すごい! とはしゃぐココルさんとレイナさんを始めとして、クラスメイトに取り囲まれる事態となってしまった。
視界の端に、グレイシアさんが憎しみのこもった目でこちらを睨んでいるのに気が付き、居た堪れなくなる。ホントやめてほしい。
◇
「ねぇねぇ、王太子殿下ってどんな方なの?」
その日の昼休み、食堂でランチを取りながらココルさんが聞いてきた。
「う〜ん、そうねぇ……」
私はちぎったパンをモグモグしながら考え込んだ。
ちなみに本日の日替わりランチはビーフシチューだ。よく煮込まれた牛肉がホロホロになっていて口の中で解けるのが、最高に美味しい。
「とてもお優しい方よ。ちょっと頑固だけどね。割と気さくだから、気軽に話しかけてみるといいんじゃないかな」
「へぇぇ〜意外。クールな王子様って感じだから話しかけるなんて畏れ多いわ」
どうしてか、そんなふうに見られがちなんだよね。人前だと感情を出さないからかな。王族って大変だわ。
「本当は楽しい人なんだけどな」
そう言って、ビーフシチューを口に運んだ。うん、美味しい。
「この間もね、グリンデルバルド様にやきもち焼いちゃって大変だった。第七王子になんで俺が負けるんだって。よっくわかんないわよねぇ」
「グリンデルバルドって、あの物語の? うっそー! なんか可愛い!」
「可愛いんだけど、嫉妬深くてちょっと大変かな……」
ふぅと溜息を吐いた。
「めちゃくちゃ仲良いじゃない。なんだか政略結婚っぽくないけど、いつ婚約したの?」
「もともとは幼馴染だったんだ。小さい頃、将来は結婚しようねって話してて、彼が頑張ってくれたみたい。ホント彼には感謝しかないわ」
「キャー! 素敵素敵!」
「純愛ね〜」
ふたりは興味津々だ。
「あんな麗しいお方と一緒にいて、緊張しない?」
「緊張……緊張?……そういえばしたことないなぁ」
それはアルの私に対する態度が起因するだろう。いつもニコニコしてるし、ベタベタしてくるし、甘えてくるし、私の前では全然感情を隠さない。全身で私を好きだって言ってくる。
いつも疑問に思う。あんな麗しの王子様が、何故、私なんかをここまで好きでいてくれるのか全くわからなくて。私のために王太子になろうとするなんて、とても正気の沙汰とは思えない。
「噂なんて当てにならないのねぇ」
レイナさんがしみじみと呟いた。
「だからその噂聞いた時はビックリしたの。私が夜会嫌いなのが原因なんだけどさ。彼は毎回誘ってくれてたのに、悪いことしちゃった」
「これでドレスの女生徒、減るといいね」
「うん、そうね」
アルはそんなの全く気にしてないだろうけど。私にしか興味ないからな……
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