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幼馴染が悪役令嬢の為に王太子殿下になってくれました  作者: みずきあきら


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第43話 アルの旅立ち

 アルの私室にて。


 はぁ、とアルは本日何度目になるかわからない溜息を吐いた。私を膝の上に抱き、背後からお腹のあたりで腕を組み、肩口に顔をグリグリと押しつけてくる。


「ひと月もヴィーと会えないなんてこの世の終わりだ……」

 はぁ、とまた溜息。


 アルは、隣国のシールニア王国の建国祭典にユーイン王国の代表として招かれており、明日、発つことになっている。

 こればかりは私もどうすることも出来ず、ひたすら嘆くアルの頭を撫で続ける。婚約してから毎日のように顔を合わせていたのだから、私だって寂しさもひとしおだ。

 隣国とは言え、往路だけで10日はかかる距離だし、滞在期間と、復路を合わせての、1ヶ月の長旅に、不安は常に渦巻くのは仕方がないよね。


「ヴィー……」

 また、溜息。

 アルの吐息が首筋にかかり、こそばゆい。


「アル、反対向いてもいい?」

 そう言うと、アルが腕を緩めたので、私は身体を反転させ、アルと向き合うかたちで見つめ合った。間近に顔を突き合わせると、揺れるアルの瞳がよく見える。私はアルの頬を両手で包み、額と額をコツンと合わせた。


「私もすごくすごく寂しい。気をつけて行ってきてね」

「うん……」


 腰に回された腕に力がかかる。私たちは軽く唇を合わせた。


「ヴィーも。何かあったら必ず誰かに相談すること。クリスもいるし、生徒会のみんな……にはあまり君と接触して欲しくなかったけど、仕方ないから、宜しく言っておいた。学園長にでも教師にでもいい。いいね。絶対に一人で抱え込まないこと」


 大袈裟だな、と思ったけど、口には出さず、頷いた。


 なんと私の学園への入学の時期とちょうど重なってしまい、あまりのタイミングの悪さに、アルは気も狂わんばかりに嘆き哀しんでいた。

 1ヶ月も、アルのいない学園に通うのは、正直不安が大きい。でもしょうがないよね……


「アル、浮気しないでね。シールニア国のお姫様は美人揃いって言うし……アルがほんのちょっと口角を上げるだけでみんなメロメロになっちゃうんだからね。誘惑されないか心配だよ」


 そう呟くと、アルは目を丸くした。


「全くあり得ない心配だな。俺が君をどれほど愛しているのか、君はまだわかってくれていないのか」


 そう言って、噛み付くようなキスをされた。




「ヴィー、今日は帰る?」

「何で? 帰るよ」

「泊まっていかない?」


 再度、「何で?」とキョトンとしたが、次の瞬間、アルの真意を悟り、思わず顔が真っ赤になった。

 ねぇ泊まっていってよ、と私をじっと見つめながら、仔犬のような瞳で甘えてくる。ドキドキと心臓が早鐘のように高鳴る。口から心臓が飛び出そう。


 うう……ダメだ。私はアルのこの瞳に弱い。それに、私だって……私だって……アルと離れ難いのは事実なのだから。




「…………す、る?」

「する」

 キッパリと告げるアルの蒼い瞳が情欲を孕んでいて、クラクラする。


「ほんき?」

「本気」

 はわわ。

 大きく深呼吸を繰り返す。落ち着け落ち着け私。


「わたし……ハ、ハジメテだから……お手柔らかに……?」

 恥ずかしくて恥ずかしくて、俯きながらそう呟くと、

「……わかってる」

 アルの両手が私の頬を包み込む。それはとても優しい手つきで。


「ヴィー、好きだよ。俺は初めて出逢った時、君のこのアメジストに惹かれた。それからずっと君に恋してる。君のことが、気がおかしくなりそうなくらい愛おしいよ……」


 そう言って、甘い甘い砂糖菓子みたいなキスをしてきて、身も心も完全に囚われていくのであった……




 一線を越えたその日。

 気が遠くなるくらい愛され続けた。

 彼はずっとずっと優しかった。

 「愛してる」と何度も囁かれ、涙が溢れた。


 そして。

 それをおくびにも出さないで、翌日、アルは旅立って行ってしまった。


 私は寂しくて寂しくて、涙が止まらなかった。

 鈍い痛みと気怠さが、より一層切なくさせた。

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