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幼馴染が悪役令嬢の為に王太子殿下になってくれました  作者: みずきあきら


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第40話 アルの過去⑤(アル視点)

 王都に戻ったアルベルトは、実直に公務に励んだ。次第に、任される仕事も増えた。


 陛下の信頼を手に入れることに成功したアルベルトは、次に、自分の派閥を増やすことに重きを置いた。

 あらゆるところで自分をアピールした。

 中立派の貴族を引き入れるのに、時には意に沿わぬこともやった。必要とあれば、汚い手を使うこともあった。


 自分の周りには、大勢の人間が群がっていたが、心から信頼できるのは、ほんの一握りだった。


 ルドルフォは人心掌握に長けていた。彼に任せればどんな難関不落な貴族も大抵引き入れることが出来た。

 クリスは裏工作が得意だった。

 いわゆる重鎮と呼ばれる貴族には、パステルダール侯爵に対応してもらうこともあった。侯爵は実に強力な支援者で、いろいろと助言を与えてくれた。

 彼らの協力なしにはここまで上手くはいかなかっただろう。


 そうしてじわじわと、だが確実に、自分の勢力を伸ばしていった。


 陛下から元老院の一員として選任された時、アルベルトは勝利を確信した。

 ここまでに実に2年の歳月を要した。


 しかし、ここで手を緩める訳にはいかない。


 アルベルトはジークフリートの監視だけは怠らなかった。ミルーシュの平民の娘に懸想しているジークフリートは、ミルーシュと王都とをフラフラと行き来してることが多かった。

 潰し甲斐がある、とアルベルトはほくそ笑んだ。


 ジークフリートが自分の置かれている状況に気がついた時には、何もかもがあまりにも遅かった。


 アルベルトが元老院へ参与している事実を知り、焦りを覚えたようだった。


「どういうことだ!」

と、直接詰め寄られたアルベルトはジッとジークフリートを見据えた。


「兄上」

 アルベルトがそう呼びかけた時、ジークフリートはわずかに後込みした。今までアルベルトはジークフリートのことを『王太子殿下』と呼んでいたからだ。


「兄上、貴方はもう少しこの国のことに目をやるべきでした。信頼を失うことは一瞬だ。貴方は良き対抗馬にもなり得なかった。本当に残念です」


 カッとして殴りかかるジークフリートの腕を捕らえ、逆に締め上げた。騎士団との鍛練を怠らないアルベルトには簡単なことだった。

 今まで反抗ひとつしたことのなかった弟を憎々しげに睨むジークフリートに、アルベルトは口角だけで笑った。




 次のユーイン王国会議で王太子の反故を議題に上げることが決まった時、アルベルトは最後の一押しとばかりに、自分の派閥の貴族たちを招いて晩餐会を行った。結束を固める為だった。勝利は確信していたが、油断は禁物だ。


 そこで事件は起きた。


 皆に謝辞の言葉を述べ、乾杯の合図と共に、グラスを傾けた時、アルベルトは違和感を覚えた。微かな苦味がして、咄嗟に吐き出した。


 グラスを力一杯放り投げ、

「飲むな!!」

と、叫んだ。グラスの割れる音が響き渡る。


「毒だ! 飲むんじゃない!!」


 だが、出席者の半数は口にしてしまっており、次々に呻き声を上げて倒れ込んだ。


 これほどの即効性の毒物、微かな苦味、口に残る渋味と痺れ。アルカロイド系の毒物。間違いない、これはルミタス草だ。


 アルベルトが即座に毒物を言い当て、解毒が行われたことにより、皆、大事には至らなかった。


 アルベルトはこの時ほど、パステルの地でおじいさんから薬学の知識を学んでいたことを感謝したことはない。王都に戻ってすぐ薬師の国家資格を取得していたことも大きかった。ルミタス草は猛毒だが、扱いによっては薬にもなり得る。


 命を救われた。そう感じた派閥の貴族連中はますますアルベルトに心酔するようになり、結束は更に強固になった。それは不幸中の幸いでもあった。




 この事件の犯人はジークフリートとその一派だとすぐに判明した。それはあまりにも杜撰すぎる手口だった。アルベルトが薬学に精通していたことは誤算だったのだろう。

 陛下はこれらの事態を非常に重く見た。被害に遭った者たちの中には、国の高位貴族も多く含まれていたのだ。

 現王太子のしでかした毒殺未遂は国家を揺るがす大事件だった。

 もし1人でも死者が出ていたら……そう考えると今でも背筋が凍る。国内は荒れ、近隣諸国に付け入る隙を与えたかもしれない。


 だが捜査の手が伸びる前に、ジークフリートは行方をくらませた。ミルーシュに逃げ込んだところまでは確認できたが、それ以降は追い詰められなかった。ミルーシュにこまめに出向いていたジークフリートはそこで人脈を築いていたようだった。


 ミルーシュ公国は、我がユーイン王国とは直接的な対立はないものの、同盟国であるシールニア王国とは長年冷戦状態にある国だ。当然、戦争となればユーインはシールニアに付く。


 ミルーシュに逃げ込まれては手も足も出ない。ジークフリートがそこまで考えて人脈作りをしていたのかは今となっては知る由もないが、この件はそこで幕を閉じた。


 ジークフリートの廃嫡が言い渡さたのはそれから三日後のことであった。元老院でアルベルトの立太子を反対する者は誰もいなかった。

 ジークフリートの自滅という、なんとも後味の悪い結末であるが、こうしてアルベルトの下剋上が相成った。

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