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幼馴染が悪役令嬢の為に王太子殿下になってくれました  作者: みずきあきら


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第34話 王太子vs第七王子

 ある日、私はアルの部屋で小説を読んでいた。


 いわゆる冒険活劇もので、今大人気のシリーズである。最近最新刊が発売されたばかりだ。

 物語も佳境に入ったところで私はハラハラしながらページを進める。

 物語の中では、国の英雄でもある第七王子のグリンデルバルド様が最後の敵と対面を果たし、今まさに邪龍を討ち取らんと剣を構えているところだ。


 そんな私を膝に乗せ、後ろから抱きついて、肩口やら首筋やらにおでこをグリグリ押し付けてくるアル。構って構ってとうるさい。正直鬱陶しいです。

 私は本から目を離さずに、アルの頭を撫でてあげる。よしよし、ちょっといい子にしてて。


「ヴィーは最近俺の扱いが雑じゃないかな」

「ん〜?」


 私が生返事すると、アルは盛大かつ大袈裟かつご機嫌斜めに溜息をついた。


「大体、一国の王子が護衛も付けずに魔物の討伐なんかに行くもんか。そういうのは騎士団や傭兵なんかの戦闘職の仕事だろ。職務怠慢だねぇ、言語道断だよぉ」

と、額を背中に押し付けグリグリしながら物語に文句を付けてくる。


 ……ごもっとも。アルが言うと説得力があるわ。でもねでもね、そう言うことじゃないんだよ。


 何となく面白くないので、

「アルに、グリンデルバルド様の何がわかるって言うの。私のグリンデルバルド様は最強なんだからね」

と、口答えしてみた。

 すると、アルは撫然とした表情で、あろうことか私の首筋に噛み付いてくるではないか。


「いったぁぁぁ!! 何すんのォ!」

「……ヴィーは俺のなのに……見ず知らずの第七王子なんかに取られるとは……」

「バカじゃないの」

 私は涙目でアルを睨みつけた。




「何で七番目なんかに俺が負けるんだ? 金か? 地位か? 七番目とは言え王子は王子だしな。ん? 俺だって一応は王子のはしくれだったよな? 違ったか? いや違わない。待てよ。ヴィーは権力なんかに興味なさそうだもんな。だとしたらどうすればいい。俺も邪龍の討伐に行くか? そうしよう。でも邪龍なんて何処にいるんだ。そんなもの見た事も聞いた事もないぞ。困った。どうする。どうする。土下座か。土下座して捨てないでって懇願するか。そうだ、それがいい、それが現実的……」


 アルが何やらぶつぶつ呟いている。なにそれ。面白いんだけど、この人。


「おーい、戻ってきてー」

 私はアルの身体を揺さぶった。


 しばらくして現世に戻ってきたアルが低い声を出して唸る。


「ヴィーはホント、昔から王子様が出てくる物語が好きだよな」

「そ、そうかな?」


「初めて会った時も絵本の王子様にうっとりしてたもんな」

「んん? そうだっけ??」


「ヴィーには俺がいるのに。何が不満なんだよ」

「不満なんてないよ」


「じゃあ、俺と第七王子どっちが好き?」


 うわぁ……面倒臭いこと聞いてきた……


「あのねえ。現実とフィクションを一緒にしないでよ。アルは現実だもん」

「俺だって一応 王子業 頑張ってるんだけどな……」


 メソメソしてくるアル。情緒不安定かよ。ああ、ホントに困った人だねぇ。


「ねぇ、聞いて」


 私はアルの顔を包み込んで、諭すように言い聞かせた。


「アルは地位も名誉もある。容姿はユーインで一番の美形だし、笑顔は爽やかでいつも見惚れちゃう。頭もいいし、知識も豊富だし、何をやっても優秀だし。剣の腕前だって、近衛騎士団長と張り合うくらい強い。国政を一手に担って忙しいはずなのに、周りへの配慮は忘れない。優しくて、気取ったところがなくて、民を思って尽くしてるのも知ってる。これだけ見たら理想の王子様だよ。物語の中の王子様そのもの。男性も女性もみんなアルに群がるの、わかる」


 一旦言葉を区切って、アルの額に唇を落とす。


「でもね、私にとってアルはやっぱり現実なんだ。完璧な偶像なんかじゃなく、私から見るとアルってすごく人間くさい。すぐ拗ねちゃうところとか、子供っぽいところとか、すごく嫉妬深くて、すごく甘えん坊で、すごくスケベなアルが、私の中の現実で、そんなアルが大好きなんだよ。私だけに見せてくれる素顔がたまらなく好き。言ってる意味わかる?」

「……うん」


「私はアルが完璧な王子様だから好きなんじゃない。一途に私を想ってくれるアルが好きなの」

「……うん、わかったよ」


 腰をキュッと抱きしめ、肩に顔を擦り寄せてくる。


「俺もヴィーが好きだ。この気持ちは一生何があっても変わらない」

「わかってくれて良かった。もう拗ねたりしない?」

「いや、拗ねる」


 ヲイ。


「あと、ひと言言っておくけど、俺はスケベなんかじゃない。自分の欲望に忠実なだけだ」

「……それをスケベって言うんじゃないの?」

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